「日本で前年比4倍成長」のNothing、次の一手は? au販路拡大と楽天の“すみ分け”に見るキャリア戦略(3/3 ページ)

» 2026年05月26日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]
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ウィジェットの自動作成機能で生活をより便利に

―― もう1つ面白いなと思ったのが、AIの使い方です。ここも、他メーカーとはアプローチが違いますよね。端末にひも付いているわけではありませんが、今回は、ウィジェットを作れる機能をフィーチャーしていました。

黒住氏 実はあれが面白いと実感したのは、皆さんに最初にお見せしたときだったんです。あのときに、メディアの人たちが一番食いついたのがAIでした。それを受けて、発表会もAIをメインストーリーにしています。僕自身、あまり自信がなかったのかもしれません。まだ機能としてはβ版に近いですし、できるものはミニウィジェットですから。

 ですが、あれを見せたときにAIが何をやってくれるかがすぐに伝わりました。仕事だと文章の要約などで使っているかもしれませんが、似たように、アプリを作れるというのは分かりやすい形の1つではないでしょうか。発表会でお見せしたデモも、自分で作ったアプリです。ああいうふうに見せると、AIならこういうプロセスでアプリが作れると分かるので、非常によかったと思っています。

 自分たちが利益を得るためではなく、ユーザーの生活がテクノロジーでどれだけ便利に、心地よくなるか。それをすてきな形でやりたいと思っているのがNothingです。AIは、それに一番合ったテーマです。アプリは、こういうものが欲しいと探していると時間がかかりますし、ようやく見つかったと思っても有料だったということもある。その時間で、欲しいと思っているアプリを自分で作ってしまうことができますし、気に入らなければ修正にも対応しています。

 僕が作ったのは、ゴールデンウイークの天気だけを表示するウィジェットです。うちの妻が何回も「ゴールデンウイークの天気はどう?」って聞いてくるので(笑)。それだけをウィジェットにしました。こういったものは、ストアに行っても絶対にありませんが、自分で作ってしまえるというのは目からうろこでした。小さな喜びや小さな利便性かもしれませんが、結構大きなことだと思っています。

Phone (4a) (4a) Pro メッセージでリクエストを出すだけで、目的に合ったウィジェットを自動で作成してくれる

―― もう1つ、Essential SpaceもWeb対応することが明かされました。こちらも端末ではありませんが、PCからも使えると利便性が大きく高まるような気がします。

黒住氏 Essential Spaceは便利な反面、マルチデバイスでのアクセスがなかったので使い方が制限されています。Web対応で、そこが解決されていきます。他にもAIだとデバイス内とネットのサーチを融合したEssential Searchは便利に使えます。アルバムのフォルダに入れっぱなしにした写真も、キーワードだけでパッと出てきます。

―― 発表会では、アバンギャルディがパフォーマンスを披露しました。継続的に起用されていくのでしょうか。

テクノロジーに有機的な触感を加えていくのがNothing流

黒住氏 テクノロジーはややもすると無機的になりがちですが、そこに有機的な触感を加えていくというのがNothingのフィロソフィーの根幹にあります。そういうことを伝えられるクリエイターやアーティストはなかなかいない。チームのメンバーと話していた中で出てきたのが、アバンギャルディさんでした。表情も変えずに絶妙なシンクロを取りますが、中の人たちはすごく有機的なことをしている。そこがNothingのデザインやフィロソフィーに合っていると思いました。ソーシャルメディアも含めて、訴求力はすごく強いと思っています。

 イベント後には動画も出しましたが、Nothing Japanが1万フォロワーぐらいなのに対し、3000件以上のコメントがきました。彼女たちのマネジメントチームも、Nothingをブランドとして評価してくださっているので、いいコラボができたと思っています。これからも、近いアーティストの仲間とはいろいろな局面でコラボしていきたいですね。


―― あまり注目されていないポイントかもしれませんが、Nothingのミッドレンジモデルはコストパフォーマンスもかなりいいと思っています。ただ、昨今、値上げしている端末も多くなってきました。今の価格は維持できるのでしょうか。

黒住氏 外部的な環境は、今も毎日のように変わっています。ですから、そこは読めないところです。ただ、ユーザーさんにとって不利益になるような便乗値上げは絶対にやりたくない。逆に、成長のために逆ザヤになっても売り続けることもやりません。ずっと据え置きとは言い切れませんが、変わるとも言い切れない状況です。

取材を終えて:直営店がブランドイメージを確立する鍵に

 日本市場で急拡大しているNothingだが、その背景には、パートナーリングのうまさがある。4キャリアと同時に付き合うリソースが足りない中、まず楽天モバイルと手を組むことで実際に収益を4倍まで拡大できた。伸びている新興キャリアとのタッグであれば、コアなファンが多いブランドも維持しやすい。

 Phone (4a)ではKDDIでの取り扱いが始まったが、いわゆるキャリアモデルではなく、オープンマーケットモデルを扱うau Flex Styleというのも絶妙なポジション取りといえる。同時に、2025年は投入を見送っていたaシリーズのProモデルを販売して、少しずつラインアップを拡大している。

 Phone (4a)をKDDIで販売しつつ、楽天モバイルには空白地帯になっていたミッドハイの分野に上位モデルのPhone (4a) Proを導入している。販路の開拓とラインアップ拡大のミックスが、うまくハマっているように感じた。

 こうした柔軟な戦略を取り続けられるのは、同社が日本市場を重視しているからこそ。一方で、キャリア販売だけだと、Nothingというブランドを伝えるにはやや力不足な側面もある。その意味では、年内に東京に開設される直営店が、認知度を上げつつも、ブランドイメージをしっかり維持するための鍵になりそうだ。

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