8月23〜25日に米カリフォルニア州パロアルトで開催されたIEEE主催のカンファレンス「Hot Chips 21」において、米IBM、米Sun Microsystems、米AMDなどのメーカーが今後投入予定のプロセッサの概要を説明した。
米Intelは新プロセッサ「Nehalem EX」を披露した。同プロセッサは4個以上のソケットを備えたサーバ向けとなっている。
Hot Chips 21で特に注目を集めたのが、IBMの新しい「POWER7」プロセッサだ。IBMによると、2010年に登場予定の同チップでは4コア、6コア、8コアの各バージョンが用意されており、1コア当たり4つの命令を同時に実行できる。
現行のPOWER6プロセッサと比べ、POWER7はパフォーマンスで2〜3倍、スループットで2〜5倍という性能を実現しながらも、同じパワーエンベロープ(消費電力枠)に収まる。45nm(ナノメートル)製造プロセスを採用するPOWER7チップは、POWER6プロセッサとバイナリ互換となるため、ユーザーは新プラットフォームに容易に移行できるという。
米調査会社Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏によると、POWER7で採用された新しいオンチップメモリ技術が特に興味深いという。「eDRAMと呼ばれるこの技術は、32Mバイトのオンチップ3次キャッシュを備え、従来の外部3次キャッシュ技術と比べると、遅延と帯域幅の両面で大幅な改善を実現する」とキング氏は8月26日発表のリポートで述べている。eDRAMはSRAMほど高速ではないが、サイズは3分の1で消費電力は5分の1となっている。
「その結果、POWER6のコアよりも低い周波数で高いパフォーマンスを実現できる。これはIBMと同社の顧客にとって朗報だ」とキング氏は記している。
「ありきたりの技術とまったく新しい技術を組み合わせたPOWER7は、POWER6以来最も興味深いエンタープライズクラスのプロセッサの1つになりそうだ」(同氏)
キング氏を含むアナリストらによると、8月にテキサス州オースティンでIBMが開催したアナリストデーでもPOWER7の紹介が中心だったという。IBMはこの新プロセッサプラットフォームを宣伝しただけでなく、ライバルのHewlett-Packard(HP)とSun MicrosystemsのRISCプロセッサユーザーを多数獲得したことを強調した。競合両社はいずれも、ハイエンドシステム分野で困難に直面している。
キング氏によると、IBMは移行支援プログラム「Migration Factory」を発表して以来、この3年間で1750社以上の企業をPOWERプラットフォームに移行させた。これらの企業の89%はHPとSunからの乗り換えだという。この傾向はここ数カ月でさらに加速しているもようで、今後も続く可能性がある。SunはOracleによる買収プロセスの最中にあり、この状況が同社のハードウェアビジネスの将来をめぐる不安を呼び起こしている。この74億ドルの買収は、今夏に手続きが完了する見込みだ。
さらにSunは「Rock」プロジェクトを中止したと報じられている。これはマルチコアUltraSPARCプロセッサで、同社ではIBMとIntelのハイエンドチップに対抗する製品だと説明していた。
HPの場合、「Tukwila」のコードネームで呼ばれるIntelの次世代のItaniumチップのリリースが遅れているのが障害となっている。Tukwilaは当初、2007年にリリースの予定だったが、現時点では2010年に登場する見込みだとされている。「このプロセッサではクアッドコア構成と65nm製造プロセスが採用されると伝えられており、POWER7と比べるとやや時代遅れの感がある」とキング氏は記している。
一方、SunはHot Chipsにおいて、開発中の「Rainbow Falls」プロセッサについて説明した。これは同社のマルチコアチップ「Niagara」の後継プロセッサとなるもの。Rainbow Fallsは16コアを搭載し、128スレッドを実行することができると伝えられており、Niagaraの最新バージョン「T2+」よりも30%多くの電力を消費する。
AMDも、サーバ向けのOpteronプロセッサシリーズでコアの数を増やそうとしている。「Magny-Cours」のコードネームで呼ばれる開発中の12コアチップは2010年に投入される予定だ。同プロセッサは2個の6コアチップを1つのパッケージに組み込んだもので、現行の6コアプロセッサ「Istanbul」と同じパワーエンベロープ内で動作するという。
Intelは8コアのNehalem EXについて説明した。同社はこれまでにも何度か同プロセッサを紹介した。2010年に投入予定のNehalem EXは、IntelのHyper-Threading技術と24Mバイトの共有キャッシュを利用することにより、1チップ当たり最大16スレッドを実行できる。同プロセッサは6コアのXeon 7400番台「Dunnington」の後継となる。
Intel幹部は5月、「Nehalem EXはIBMやSunなどのRISCプロセッサに代わるx86ベースの企業向けハイエンドチップだ」と語っていた。
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