前述したように、ノートPCが組み上がると、すぐさまWindows Vistaやシステムのセットアップ作業に移ったのだが、ご存じの通りその間は待ち時間が多く、イベントではその合間にスクラッチリペア塗装の仕組みや体験イベント、工場見学、科学実験といった催しが行われた。
まず最初は、LaVie G タイプJで採用されているスクラッチリペア塗装の解説がなされた。詳細はこちらの記事に譲るが、スクラッチリペア塗装とは通常のカラー塗装の上に施される特殊な透明のコーティングで、塗装表面に生じた浅いキズや擦過痕などが自然に回復するのが特徴だ。
今回は、参加者にスクラッチリペア塗装の効果を実体験できるよう、1枚のプレートと真ちゅうブラシが手渡された。このプレートは3分の2がスクラッチリペア塗装されたもので、全体を真ちゅうブラシでこすると、通常塗装の部分にだけキズが残り、スクラッチリペア塗装の部分はキズが回復していた。
21組がスクラッチリペア塗装の天板を選んでいるだけに、興味津々といったところ。自分のPCをキズつけるのは怖いけど、テスト用のプレートなら問題ないとばかりに派手に真ちゅうブラシをこすりつけているのが印象的だった。しかし、スクラッチリペア塗装の部分にはキズが付かず、その効果を目の当たりにした。


用意された真ちゅうブラシとプレート(写真=左)。日ごろのうっぷんを晴らすべく、おもむろにゴシゴシとこすりつける(写真=中央)。その結果、スクラッチリペア塗装された左側はまったくの無傷で、右側の通常塗装の部分だけにキズが残った(写真=右)

本イベントでのみ用意されたベリーブルーとシュガーピンクの天板(写真=左)。強力なスクラッチリペア塗装だが、もちろん弱点も存在する(写真=中央)。10月に発表された日産自動車とのコラボモデル。こちらにもスクラッチリペア塗装が施されている(写真=右)続いて2つの班に分かれて科学実験と工場見学が実施された。
「音のしくみ」と題された実験では、NEC中央研究所(システム実装研究所)に所属する“博士”こと佐々木康弘氏と“新人君”こと酒井浩氏が、音がどのようにして鳴るのかについて解説した。
「なぜ機械から音が出るのか」「スピーカーが動いているのか」などの素朴な疑問からスタートし、スライドや電極を埋め込んだセラミックなどを使って“音の見える化”で仕組みを順を追って分かりやすく説明した。体験コーナーでは参加者が糸電話を作り、音の実験を行った。


科学実験の風景(写真=左)。博士にふんした佐々木氏(写真=中央)と助手役に徹した酒井氏(写真=右)。酒井氏の写真は電極を埋め込んだセラミックを発泡スチロールに押しつけて、音を鳴らしているところ。子供受けを狙って“コスプレ”をしたお二人だが、実態は主任研究員だ。綿密に練られたシナリオは好印象だったが、子供たちは役に没頭していたハイテンションのご両人に少し置いてけぼりをくらった模様

音が鳴る仕組みを解説(写真=左)。スピーカーにレーザー光線を照射して動いている様子を見せるデモ(写真=中央)。目に見えない空気をグラフ化して、音が伝わる仕組みを説明した(写真=右)。そのさまは、まるでブルーバックスを読んでいるかのごとくであり、むしろ大人の方が聞き入っていた休日だったこともあって工場は稼働していなかったが、イベントに合わせて企業向けノートPCの製造が行われ、その目前で参加者が見学をした。そこでは、米沢事業場では1日あたり約1万台のPCが製造されること、資材を運ぶトラックが1日16便もやってきて、できる限り在庫を持たないでいること、RFIDを活用してパーツの発注や在庫管理を徹底していることなどがアピールされた。
普段は目にできない光景であることに加え、直前まで数時間かけて自分たちが作ってきたノートPCが、プロの手にかかるとアッという間にできあがっていくのに目を見張っている様子だった。また、解説員が「工場と聞くと機械化されているイメージを持つかもしれませんが、ここでは工員一人一人が創意工夫をこらして作業工程の改善はもちろん、使用する機械を自作して最適化を図っています」と説明。「単に効率化を推し進めるだけでなく、いかにミスをなくしていくか、人間の負担を減らすかということも常に考えています。そのため、1つとして同じセルはありませんね」と笑いながらも誇らしげに話しているのが印象的だった。


トレイに入れられたHDDや光学ドライブ(写真=左)。パーツを取り出しやすいよう、細かい部分でも工夫が施されている。こちらは付属品の梱包(こんぽう)作業(写真=中央)。必要なものにだけ緑色のランプが付く。出荷を待つノートPCたち(写真=右)体験コーナーが終わったのちに参加者にはPC事業本部開発生産事業部長の中土井一光氏から修了証書が手渡され、サポート内容の説明を受けてイベントが終了した。世界に2台とない“マイPC”を脇に抱えて参加者は帰路についた。
中土井氏は、「昨今、子供たちの間で理科系離れが起きていると言うが、今回のものづくり教室を通して、科学のおもしろさや“ものづくり”の楽しさを感じ取ってほしい。そして、山形にも元気な日本企業があるんだということをお伝えしたい」と、報道関係者に語った。
また、何人かの小学生に感想を聞いたところ、やはり「楽しかった」という声が大勢を占めたが、「ちょっと難しかった」「細かいケーブルをとめるのに手間取った」「プラモデルを作るよりも緊張した」と、はにかみながら振り返っていた。
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