こだわりのないVAIOユーザーが、MacBook AirとEee PCを買ってしまった!(前編)プロフェッサーJOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/3 ページ)

» 2008年03月10日 11時22分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 「丈夫が取り柄」のThinkPadは、もしも誰かがACアダプタのケーブルにつまずいたらケーブルに引っ張られて本体は床に落下するが、本体の強度ゆえに故障は免れるかもしれない。MacBook Airはケーブルだけが外れ、本体は何もなかったようにそこにあるだろう。もとは同じ米国メーカー同士なのにこの考え方の違いは面白い。

 MacBook Airの登場が日本でも伝えられた時、多くの賞賛の声に混じってブーイングも多く聞かれた。その昔、PowerBook 2400cが企画されたとき、そのベースとなったモデルと最終的なPowerBook 2400cとの重量差やサイズ比較を行うと日米のメーカーやユーザーがモバイルPCというモノに抱いている気持ちや期待の違いがよく分かる。

 MacBook Airの発表前に、日本国内では1キロを切って登場する……という期待の声も聞かれたが、実際に発表されたMacBook Airは約1.36キロだった。これは米国のPC事情を少しでも知っていれば十分予想された重量だった。京都議定書もそうだが、米国は21世紀の今も、世界の標準的度量衡の世界から逸脱し、いまだにあらゆる場所でポンドやフィート、インチを堂々と使っていて改善のめどもない国だ。

 PowerBook 2400cの時代から、米国のモバイルPCのスペックはキログラムではなくポンドなのだ(1ポンドは約453グラム)。ジャスト1キロというのは米国民にとっては何の意味のない数字で、米国民のウルトラモバイルの要件は、その昔から「アンダー3ポンド」(約1.36キロ)なのだった。あれだけ思わせぶりをやったのなら、2.5ポンド(約1.13キロ)はありえるかも……と考えたユーザーもいたかもしれないが、実際の強度と手に持った時の堅牢感覚を要求される米国のウルトラモバイルPCの要件を満たすには2ポンドではほぼ不可能、2.5ポンドもあきらめざるを得なかった要件だったのだろう。

 さて、発表と同時に日本のユーザーの一部から起こったブーイングの意味だが、MacBook Airのスペックはどこが日本のモバイルユーザーの求める要件と離れていたのだろうか? まず、一番先にその床面積(フットプリント)だろうという予測ができる。某社にPowerBook 2400cのベースとなったThinkPad 535とほぼ同時に、より大きな液晶画面を採用し、より薄いThinkPad 560という兄弟モデルが存在した。当然、フットプリントは535より大きい。当時を思い出してみると、多くの個人ユーザーは535を好み、企業ユーザーは実質的に明らかに使い勝手の良い560を選択した。概して、日本の個人ユーザーは大きくて薄いものより、多少ぶ厚くても小さいモノを好むようだ。

 MacBook Airは拡張性に乏しいといわれるが、それは本当だろうか? 筆者はマンション入居前に、各個室やリビングルームへ数カ所のイーサネットポートを取り付けた。実際にMacBook Airが来るまでは家族全員が有線LANを利用しており、無線LANを利用する機器はiPod Touchとリビングで一番大きな顔をしている任天堂のWiiだけだ。

 筆者はMacBook Air購入時にUSBイーサネットアダプターも一緒に購入したが、これを機会に自宅では、MacBook Airはワイヤレス環境だけで使うことにした。自宅はUSENの「GyaO 光」で、ワイヤレス機器にはIEEE 802.11b/g規格のAPを導入しているが、この環境下で、VAIO Type G、EeePC、そしてMacBook Airを同時に無線で使用してみた。

 速度測定サイトを利用したベンチマークで最も速かったのはMacBook Airで安定して20Mbps近辺だった。次点はEeePC。今までメインのモバイルPCであったVAIO Type G(OSはWindows XP)は最も低速だった。結局、自宅ではUSBイーサネットアダプターの出番はなく、国内外の出張先のホテルや大学キャンパスでの利用になりそうだ。

 USBポートが3個や4個のモバイルPCの多い中、SDカードスロットもなく、たった1個しかUSBポートのないMacBook Airはいったい何を考えているんだろうか? と思う人は多いだろう。筆者もほとんど衝動買いでMacBook Airを購入したひとりだが、最後まで気になっていたのはこの点だった。では、筆者は今までUSBポートをいったいどんなことに使っていたのだろうか?

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 長年ThinkPad使いだった筆者は、どうもタッチパッドがうまく使えない。VAIO Type Gも自宅や会社では外付けマウスを使い、MacBook Airでもできる限りタッチパッドは使わず、外付けマウスを使用したいと考えた。VAIO Type Gでも2つのUSBポートの内、1つは外付けワイヤレスマウスの受信機専用になっており、実際に使用できるUSBポートは1つしかなかった。

 MacBook Airは、標準でBluetoothを搭載しており、純正のBluetooth対応マウス「Mighty Mouse」の存在はありがたかった。 これで、MacBook AirでもVAIO Type Gの時と「使えるUSBポートは1個」と同じ条件になった。携帯電話のデータ同期もiPodの同期も、このたった1つのUSBポートを使用することになる。

(後編に続く)

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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