2008年春のIDFは、2007年の北京に引き続いて中国の上海で行われる。プレセッションで行われたスピーチも、主に中国Intelの実績をアピールすることと、米国Intelと良好な協力関係にあること、インターネットユーザーの急増など急成長を見せる中国市場の紹介に多くの時間が費やされた。
そのなかで、Intelの技術をアピールするテーマとしてフォーカスをあてられたのが「ワイヤレス接続技術」だ。このところ、IEEE 802.11nなどのWiFiや、Bluetooth、Wireless USBといったワイヤレス接続、WiMAX、3Gネットワークといった広域ワイヤレスネットワークインフラなどをメインテーマとして取り上げてきたIDFだが、IDF上海2008のプレセッションでは、これら多岐に渡るワイヤレスインフラを携帯デバイスでいかにして活用するかというテーマでIntelが開発を進めている「マルチチャネル対応のワイヤレスネットワーク技術」が紹介された。
プレセッションのスピーカーとして登場した米Intelのケビン・カーン氏(シニアフェロー コミュニケーションズテクノロジーラボ コーポレートテクノロジーグループディレクター)は携帯デバイスの現状(ローカル依存のアプリケーション、タッチパネルによる操作、制限のあるインターネットアクセス環境、ケーブルによる同期処理)とそれらを解決した将来あるべき携帯デバイスのフィーチャー(Webベースのアプリケーション、動作と声を利用した操作、制約のないインターネット利用環境、ワイヤレス接続による同期処理)を示した上で、理想的な携帯デバイスによってユーザーの生活は向上するという意味を込めた「Carry Small、Live Large」というコンセプトを提示した。
IDF上海2008のプレセッションで紹介をされたコンセプト「Carry Small、Live Large」は、まもなく正式に発表されるとみられている「Centrino Atom」を意識したような意味が込められている“Carry Small”の具体的な姿として紹介されたのは、「CPUとGPUのパワーを強化」し、「いつでもどこでもどれにでも接続」でき、「長時間バッテリーで駆動」が可能なデバイス。そして、“Live Large”の具体的な姿として紹介されたのは、携帯デバイスを多種多様な周辺機器やサービスと接続することで、ユーザーの可能性を広げる世界だった。
“Live Large”で広がるユーザーの可能性として紹介されている利用場面は、パーソナライズショッピングや会議、トラベルアドバイザーなどが挙がっていた。トラベルアドバイザーの利用場面は2008 International CESのIntelキーノートスピーチでもデモンストレーションが行われているこのように、Intelが掲げるコンセプト「Carry Small、Live Large」では、多種多様なデバイスやネットワークサービスとワイヤレスで接続することになる。プレセッションでは、ワイヤレス接続を利用する最新の技術として「リモートグラフィックスレンダリング」や、センサーを用いたモーションオペレーションのコンセプトとして「Context Awareness in Action」などが紹介され、実機を使ったデモがIDF上海2008の製品展示ブースとなる「Showcase」エリアの事前公開で行われていた。
プレセッションで示されたリモートグラフィックスレンダリングのフローでは、GPUの前段階でフレームワークを圧縮して送信する方法とGPUのアド段階でフレームバッファの内容を圧縮して送信する方法が紹介されていたプレセッションの内容に合わせた「ワイヤレス接続」を活用した展示の1つ、ピアツーピアのワイヤレス接続でHDムービーを大画面ディスプレイに表示させるデモでは、HD画質の画像を無線で飛ばすとともに、セキュリティーキーを入力するのが面倒な携帯デバイスでも簡単に接続が確立できる側面も熱心にアピールしていた。
また、携帯デバイス(なぜか、“携帯デバイス”として用意されていたのがすべてVAIO type U(UXモデル)だったのも興味深い)に、CFカードタイプのモーションセンサーを取り付けて、iPhoneのように筐体を傾けて画面をスクロールさせたり、電子コンパスとGPSを組み合わせて、ユーザー(が手にした携帯デバイス)の向きと連動してマップが回転し、画像解析で識別した建物の解説をデータベースから引き出して表示したりするデモ(“コンセプトのデモ”ということで電子コンパスとGPSの機能はダミーデータを使用していた)などが注目を集めていた。
トラベルアドバイザーのデモに使われていた“携帯デバイス”のコンセプトモデル。CFカードスロットに組み込まれているのはGPSカードと思いきや、筐体の傾きを感知してモーションオペレーションを可能にするセンサーユニットだった。
リモートグラフィックスレンダリングの分かりやすい例として示されていたのが、“携帯デバイス”でプレイしている3D FPSをワイヤレスで接続したMacBookに表示していたデモ。わずかにタイムラグが発生するので、実際のプレイには適さないが、大勢の観客にみせるシステムの構築には十分耐えるだろう
ワイヤレスで接続すれば、携帯デバイスでも大画面高解像度の操作環境を簡単に利用できる。これが「Carry Small、Live Large」が目指す世界だ。なお、デモでは後ろに隠されていたノートPCとネットワークを確立し、そのノートPCに接続された大画面ディスプレイに画像が表示されていた
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