Atom搭載TOUGHBOOKで濃霧の伊豆諸島から生還せよ 勝手に連載!「海で使うIT」(2/2 ページ)

» 2008年07月08日 20時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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軽量小型で実用度が大幅にアップしたCF-U1の電脳ナビ

 PC USERで頑丈で水に強いTOUGHBOOKとくれば、「洋上でギチギチ使ってやろうかい」となる。そういうわけで、出荷までまだまだ時間があるというのに、洋上検証航海で「小型船舶」におけるTOUGHBOOKの使い勝手を検証してみた(な、なんという自分勝手な企画……)。

 これまでも、A4サイズクラムシェルタイプノートのCF-29、B5サイズコンパーチブルのCF-19で検証航海を行ってきたが、小さな船でPCを使う場合、その設置場所にまず苦労する。液晶ディスプレイが見やすく、かつ、操船行動を阻害しないところにTOUGHBOOKを設置する必要があるが、CF-U1は、その小さなボディのおかげで、設置場所はだいぶ自由に設定できる。バルクヘッドに立てかけてもよし、空いているクリートに固定してもよし、そして、オートバイロットを使って両手が空いているなら、片手に持って常時身近で使っていても問題ない。いざ、オートバイロットを解除してティラー(もしくはラット)を操作しなければならなくなったら、近くの甲板に「無造作に」おいても大丈夫だ。CF-U1の狭い甲板における取り回しは、CF-30、CF-19を大きく上回っていた。

小型軽量ゆえ、バルクヘッド(写真左)、手持ち(写真中)、クリート(写真右)と、使う場所を選ばないCF-U1

 CF-19で大幅に改善された白昼における液晶ディスプレイの視認性は、CF-U1にも受け継がれている。CF-U1には、CF-19と同じ方式の偏光板を組み合わせたパネルを導入されているため、液晶ディスプレイの輝度が通常のノートPC相当でも、外光反射率を抑えることで晴天下の野外における視認性を確保している。今回の検証航海でも夏至を過ぎたばかりの太陽が直射する洋上において、最高輝度、中間輝度(20レベル用意された設定段階の10レベル)のそれぞれで電子海図を表示させたが、5.6インチワイドの1024×768ドットという小サイズ高精細表示の液晶ディスプレイでも、海図の細かい文字情報がはっきりと確認できた。

 ただ、「航海計器」としての実用性を考えた場合、Windows Vistaの標準フォントサイズやアイコンサイズは小さすぎる。航海データを素早く把握するためには、表示フォントや表示データのカスタマイズができるナビゲーションソフトの導入が望ましい。併せて、動揺する船上では、指によるタッチオペレーションはかなり難しく、スタイラスペンを使わなければならなかったことを報告しておきたい(ただし、使い終わったスタイラスペンをボディに用意されたホルダーにしまうのも、素早くできなかった)。

直射日光を受けた状態で最高輝度(写真左)と中レベル輝度(写真中)における電子海図の表示。細かい文字情報まで識別できるのが分かる。ただ、表示されるフォントのサイズが小さいため、視認性を上げるには、画面構成をカスタマイズできるナビゲーションソフトが必要だ。ここでは「Sail Cruiser 2.0」を使用している。また、5.6インチワイドのサイズで1024×768ドットという高精細表示であるため、揺れる小型船舶における指の操作は困難を極めた(写真右)

ちなみに、室内で露出=F3.3、シャッタースピード=1/40にそろえて撮影した、最高輝度(写真左)、中レベル輝度(写真中)、最低輝度から1レベル上の輝度(写真右)のそれぞれにおける画面表示

CF-U1「安い」TOUGHBOOKも実現する?

 CF-U1は、従来のTOUGHBOOKと同様に、多彩なインタフェースを搭載できるように設計されている。法人向けの個別案件対応ながら、GPS、FOMA HIGH-SPEEDモジュール、バーコードリーダー、カメラなどが用意されているが、このなかで、フィールドワークユーザーとして注目したいのがGPSとFOMA HIGH-SPEEDモジュールだ。とくに、GPSは「ITmediaなのにこの記事をクリックしてしまった」読者なら見逃せないはずだ。

 以前、検証したCF-19もGPS搭載オプションが用意されていた。その実装形態は、GPSアンテナを収容したボックスをボディの外側に「後付け」していたが、CF-U1はアンテナ部分も含めてすべてボティ内に収まっている。耐衝撃性能はこれらデバイスを内蔵した状態で検証しているため、カスタマイズ構成によって堅牢性能は変わらないと、パナソニックの開発スタッフは説明している。

 検証航海で使用したCF-U1の開発サンプルには、これらのオプションがすべて搭載されたフルスペック仕様であったため、内蔵のGPSモジュールとこちらで用意した電子海図による「電脳ナビゲーション」を行ったが、白昼におけるディスプレイの視認性、内蔵されたGPSもさることながら、小型軽量のボディのおかげで、身近に置いておけてすぐに利用できる利便性など、小型船舶における実用度は、いっそう高くなったと思われた。

 今回の検証では、運の悪いことに濃霧で視界がほとんど利かない海域を航海することになってしまったが、CF-U1のおかげで、GPSで表示される自船の位置を常時「手元で」(ヨット乗りには、ここが重要)詳しく把握できたことは、航海の安全性に大きく貢献してくれた。

(注意:ただし、濃霧や夜間といった狭視界条件の航海において、GPSの位置情報だけに依存するのが危険であるのはいうまでもない。魚網や漂流物などの海図情報にない障害物や、衝突コースにある他船を回避するためには、目視や聴覚で得られる情報も重要だ。これは、レーダーやAIS、もしくはAPRSを使っていたとしても同様である)。

海で何が危ないって、大波より暴風より、「濃霧」ほど怖いものはない。今回の検証航海は地元の人も「こんなひどいのは初めてだぁ」と驚くほどの濃い霧に阻まれた(写真左、中)。GPSでは海岸線ギリギリまで寄っているのに島影すら見えない(写真右)

 実をいうと、アマチュアセーラーにとって、CF-U1で見逃せないことがもう1つある。防水性能に優れたTOUGHBOOKを購入したいけれど価格があまりにも高すぎて、と悩んでいるユーザーがけっこういると聞いていた。確かに、これまでのTOUGHBOOKは30万円から40万円を超えようとする価格であったが、CF-U1は、それが20万円台半ばと、Let'snote LIGHTよりやや高い程度に設定される予定だ(GPSなどオプションを搭載すれば、当然価格は上乗せされるが)。

 もっとも、パナソニックではCF-U1を法人向けモデルと位置付けているため、個人ユーザーが入手するのは困難であると思われるが、「要望が多ければ検討しなくもない」ということなので、興味あるセーラーは、パナソニックにリクエストしてみてはいかがだろうか。まだまだ時間はある。

いやー、なにはともあれ、生きて帰ってこれてよかったよかった。と、デッキに出た瞬間、「ガスッ!ドコッ!ボコッ」「のあぁぁぁぁぁっ!」 なんと、固定していたクリート(写真左)からコックピットの床までCF-U1が落ちてしまった(ほ、本当にごめんなさいっ)! しかも「ごつい金具」の上に……(写真中)、大丈夫か、CF-U1。ああ、動いているぅぅ(写真右)

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