ハイビジョンモバイルを実現した新型「VAIO type T」に肉薄エレガントな進化(3/3 ページ)

» 2008年10月02日 11時02分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]
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最新プラットフォームの導入でパフォーマンスは全体的に向上

 新しくなったVAIO type TTの実力はどのようなものだろうか。ベンチマークテストの結果から見てみよう。評価機(バーガンディーレッドモデル)のスペックは、超低電圧版Core 2 Duo SU9300(1.2GHz)、メモリが2Gバイト(シングルチャネル)、HDDは容量120Gバイトの1.8インチモデル(5400rpm)、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ、OSはWindows Vista Home Premium(SP1)である。また、256Gバイト(128Gバイト×2)SSD RAIDモデルも入手できたためそちらの結果も合わせて掲載する。SSD RAIDモデルのスペックは、超低電圧版Core 2 Duo SU9400(1.4GHz)、メモリが4Gバイト(デュアルチャネル)、SSD RAID 256Gバイト、Blu-ray Discドライブ(パナソニック BD-MLT UJ232AS)、Windows Vista Ultimate(SP1)だ。PC USERでは以前にtype TZ(VGN-Z72B)の性能評価を行っているので、そちらとの比較が参考になるだろう。

 Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは画面の通りで、グラフィックス系が少し弱いが、これでも従来のtype TZよりはずいぶん改善されている。また、プライマリハードディスクではSSD RAIDモデルが5.9をマークしたのは当然として、1.8インチHDDのバーガンディーレッドモデルも4.6と比較的良好なスコアをマークし、5400rpm化の恩恵を感じさせる。

今回入手した「VAIO type T」の評価機
製品名 バーガンディーレッドモデル デュアルSSDモデル
CPU Core 2 Duo SU9300(1.2GHz) Core 2 Duo SU9400(1.4GHz)
メインメモリ 2Gバイト×1(PC3-6400) 2Gバイト×2(PC3-6400)
チップセット Intel GS45 Express
GPU チップセット内蔵(Inte GMA 4500HMD)
液晶ディスプレイ 11.1型ワイド(1366×768ドット)
データストレージ 120GバイトHDD(1.8インチ/5400rpm) 128GバイトSSD×2(RAID 0)
光学ドライブ DVDスーパーマルチ Blu-ray Discドライブ
OS Windows Vista Home Premium(SP1) Windows Vista Ultimate(SP1)
Windowsエクスペリエンスインデックスの画面で、左が評価機のバーガンディーレッドモデル、右が256GバイトのSSD搭載モデルだ

PCMark05 HDD関連テストの結果

 PCMark05 1.2.0のスコアもかなり向上した。やはりグラフィックス性能が少しふるわないが、type TZと比べれば全般的にスコアがアップしている。特に全体の足を大きく引っ張っていたGraphicsとHDDの向上が顕著だ。SSD RAIDモデルはやはりHDDのスコアが飛び抜けているが、CPUの動作クロックが200MHz高いことと、メモリがデュアルチャネルとなっていることもあり、そのほかの値もバーガンディーレッドモデルよりよくなっている。DirectX 9.0cベースの3D描画性能を計測する3DMark06 1.1.0のスコアは両機とも低調で、この世代以降のゲームをプレイするのは苦しい。DirectX 8.1以前の技術が使われているFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアは、まずまずプレイできるが、快適とはいえないといったレベルだろう。

左からPCMark05、3DMark06(1366×768ドット)、FF XIベンチの結果

 参考までに両機のHDD(SSD RAID)のベンチマークテストも実施してみた。テストプログラムはひよひよ氏作のCrystalDiskMark 2.2.0である。バーガンディーレッドモデルの1.8インチHDDは東芝のMK1216GSCを採用しているが、シーケンシャルリードで30.44Mバイト/秒、シーケンシャルライトで28.78Mバイト/秒とまずまずのスコア。SSD RAIDモデルでは、SAMSUNGのMMCQE28GFMUP-MVAという型番のSSDを2枚使ってRAID 0が構成されていた。16GビットのMLCであるということ以外に公式な情報はないが、テストの結果を見る限りパフォーマンスは実に優秀である。MLC SSDはライト性能がいまひとつな製品もあるがそういうこともなく、1.8インチHDDと比べるとランダムリード4Kバイトで32.7倍、ランダムリード512Kバイトは9.3倍、最も差が少ないシーケンシャルライトでも4.7倍も高速な結果となっている。

こちらはCrystalDiskMark 2.2.0のテスト結果で、左がデュアルSSDモデル、中央が1.8インチHDDモデル(バーガンディーレッド)。SSDモデルのスコアが圧倒的だ。右はSSDモデルのIntel Matrix Storage Console画面

バッテリー駆動時間やボディの発熱、騒音はどうなのか?

ACアダプタのサイズは45.7(幅)×106(奥行き)×28(高さ)ミリ、重量はケーブル込みで約270グラムある。本機から急速充電をサポートしたため、形状が大きくなっている

 バーガンディーレッドモデルの評価機で、一連のベンチマークテスト終了直後の温度を放射温度計で計測してみたところ、室温26度の環境で、本体左側面の排気口付近が50度前後、その近くの底面左側が45〜47度と、手が触れられないほどではないがそれなりに発熱があった。ただ、表面にはそれほど伝わっておらず、手が触れる部分では最も熱いキーボード左上が42度前後、それ以外の部分は33〜36度に収まっていた。手に触れる面積が広いパームレストと違い、キーボード左上というのはキー入力中には小指が触れる程度で常に手を置かないため、あまり不快な感じはなかった。

 騒音は、ノートPCを机の上に置いた通常の利用姿勢(排気口から耳までは40〜50センチ)で使う限り、アイドル時はほぼ無音という感覚で、PCMark05の実行中は意識すれば分かるレベルでほとんど気にならない。ただ、3DMark06では明らかにファンの回転が上昇し、はっきりと騒音として認識できるようになった。参考までに環境騒音32dBの室内でファンから10センチの距離に騒音計を置いて計測した数値は、アイドル時が35dB、PCMark05動作時で39dB、3DMark06実行中で43dBだった。なお、本機は「VAIOの設定」にある放熱制御の設定で「バランス」「静音優先」「静かさ優先」といった設定が選べるが、今回は「バランス」でテストした。

 バーガンディーレッドモデルの評価機ではバッテリー駆動時間のテストも行った。評価機の搭載バッテリーはバッテリーパックS(標準)で、容量は10.8ボルト 5400mAhだ。公称の駆動時間は約10時間となっている。オプションでは10.8ボルト 8100mAhのバッテリーパックL(大容量)も選ぶことができ、こちらの公称駆動時間は約15時間になる。

 バッテリーのテストは海人氏作の「BBench 1.01」を利用したが、「バランス」の電源設定(輝度40%)の状態で、10秒おきにキーボード押下、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるインターネット巡回(10サイト)を行う設定で、駆動時間は315分だった。公称値には及ばないものの、これだけ無駄の多い使い方でも5時間以上もつのだから安心感はかなり高いといえる。

省電力機能、放熱制御もまた、本体前面右にある「S1ボタン」を押すと起動する「VAIOの設定」から行える。バッテリーの寿命を伸ばす「バッテリいたわり充電モード」という機能も備える。

唯一無二のハイビジョンモバイルとして注目の1台

 今回のフルモデルチェンジに対するユーザーの反応は両極端だろう。小型、軽量、長時間駆動といった部分では従来モデルからあまり変わっておらず、デザインも先代機の延長線上にある。Montevina-SFFの採用によって、こちらの部分がもっと進化することを期待していたユーザーにとっては少々期待外れなのかもしれない。それでもtype TZが妥協していた性能面を大幅に改善できているのは歓迎すべき点だろう。

 一方、エンターテインメント、特にMontevinaの大きなテーマであるハイビジョン対応という面では実にすばらしい進歩を遂げている。液晶ディスプレイのクオリティが大幅にアップしたことに加えて、サウンド面も抜かりなく強化された。そしてBlu-ray Discドライブの搭載が可能になり、HDMIポートも標準で装備し、動画再生支援機能を搭載したIntel GS45 Expressチップセットの内蔵グラフィックス(Intel GMA 4500MHD)の機能をフルに活用している。これだけの小さなボディにこれだけのハイビジョン性能を詰め込んだ製品はこれまでに存在しておらず、そういう意味では、Montevina-SFFの魅力を体現した存在だといえる。

 VAIOオーナーメードモデルは光学ドライブなしの最小構成で17万4800円からだ。Blu-ray Discドライブを搭載するだけで25万円近くになってしまうが、現状では仕方がないだろう。一方、ビジネス向けと割り切れば、64GバイトSSD+DVDスーパーマルチドライブの構成が22万9800円から買えるなど意外にコストパフォーマンスも悪くない。ホビーユースとしてはもちろん、構成次第でビジネス向けとしても魅力の大きな製品であるといえる。

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