10月30日、九十九電機が東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請した(事件番号:平成20年(再)第276号)。九十九電機は1947年に創業したアキバショップの老舗中の老舗だが、バブル期に取得した不動産の借入や業務拡大などが原因で資金繰りに困窮、10月末の買掛金および手形の決済資金が不足し「苦渋の選択として民事再生手続きにより再建を目指すことにした」と説明している。負債総額は110億円。
なお、中央通りに店をかまえるTSUKUMO eX.をはじめ、各ショップは今も通常営業をしている。現場のショップ店員は「ニュースを見て初めて知った」という状況のようだ。「これ以降も営業は続けると聞いてますが……今はなんとも申し上げられません」(TSUKUMO eX.)と不安を隠せない。
九十九電機の経営状態が悪化していることついては、前々から関係者のあいだでウワサにのぼっていたようだ。秋葉原の某パーツショップ店員は、「毎月末が近づくと、今月は大丈夫なの? という話はあったようですね。(TSUKUMO eX.は)大きいので違和感はありますけど、いろいろ手を出していたみたいなので、小回りがきく小さなショップのほうが今みたいな状況ではいいのかも。まあでも、同じ仕事をしている身としては、本当に“明日は我が身”ですよね……」と語る。
一方、九十九電機本社事務所のあるビルには、債権者がつめかけていた。その中には「電脳フィギュア ARis」を開発した芸者東京の代表取締役の姿も。10月19日に発売されたARisは、初回ロット3000本と次期ロット1000本以上が完売状態になっている注目ソフトウェアだが、芸者東京はこのうち550本を九十九電機に卸していたという。「債権額は400万くらいなので集まってきた人の中では“プチ債権者”だと思いますけど、それでもウチみたいなベンチャーにとっては致命的な金額になることだってありますよ」とため息をつく。「九十九電機といったら秋葉原で老舗中の老舗じゃないですか。ソフトウェアを作る人間としてリスペクトしていた部分もありますし、ARisでは発売記念イベントなども一緒にやらせていただきましたが、これはちょっと、痛いですね」(ちなみに、直近に納入した50本のARisはまだ納品書を交わしておらず、民事再生法適用の申請とともに弁済禁止の保全処分が裁判所から下されたため「50人のARisが迷子」になっているらしい)。九十九電機は11月5日に、債権者説明会を実施する予定。
なお、秋葉原では老舗と呼ばれるPCパーツショップの閉店が続いている(→関連記事:PC-Success、LAOXザ・コンピュータ館、高速電脳、USER'S SIDE)。
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