さて、新MacBook Airの最大の目玉は、内部システムの刷新による処理能力の向上だ。まずはその強化の内容をざっとおさらいしておこう。まずCPU回りでは、クロックこそ旧モデルからほんの少し上がっただけだが、2次キャッシュ容量は4Mバイトから6Mバイトに増量した。この部分は新しいMacBook(3Mバイト)をも上回っている。また、FSBは800MHzから1066MHzへ、これに合わせてメモリの仕様もDDR2からDDR3へと進んでおり、メモリアクセスの高速化も期待できる。
そして最大のポイントは、チップセットがNVIDIA製になり、強力なグラフィックスコアが統合された「GeForce 9400M」を採用した点だ。アップルは「従来のMacBook Airの4倍のパフォーマンス」としている。
このほか、地味なところでは、内蔵ドライブ(HDDもしくはSSD)の接続インタフェースがParallel ATAからSerial ATAに変更された。ディスクアクセスの高速化もあるかもしれない。それでは検証していこう。
比較対象として旧MacBook Airがあればいいのだが、残念ながら筆者の手元にはない。そこで今回は、先日の記事で計測した新旧MacBookとの比較に加える形で並べることにした。
まずはiTunesによるファイル変換の所要時間から比較した。CPU回りの性能差が分かりやすいテストだ。iTunesのライブラリは全機種ともにUSB外付けHDDに置いた状態なので、MacBook AirのみSSD搭載という点は大きくは影響しないと思う。
ここはCPUクロックの差がそのまま現れた結果になり、1.86GHzのMacBook Airが処理に最も時間がかかっている。妥当な結果ではあるが、ちょっと残念。
続いてベンチマークソフト「CINEBENCH」でCPUとGPUのスコアを計測した。
CPUスコアについては、iTunesでの計測と同様に、クロックの速さどおりの順序だ。一方、GPUスコアは、同じくGeForce 9400Mを搭載する新型MacBookに及ばない結果となった。MacBook Airではバッテリーへの負荷などを考慮して、GPUのクロックをあえて少し抑えているのかもしれない(確かにアップルのうたい文句でも、同じチップセットを採用する新型MacBookは「5倍高速」、MacBook Airでは「4倍高速」と表現を変えている)。とはいえ、初代MacBookには大差をつけた。納得できる性能と言っていいだろう。
ちなみに、公式にはアナウンスされていないが、パフォーマンス面ではQuickTimeでのH.264ビデオの再生がGPUで支援されているらしい点もポイントだ。新型MacBookのレビューと同じく、米Appleのサイトで公開されているH.264コーデックのHDトレーラーを再生し、QuickTime PlayerのCPU使用率を確認したところ、1080p版を再生してもCPU使用率は40%前後に止まった(初代MacBookだと60%前後〜100%になる)。
ここまでひととおりテストを実施してみたが、正直なところ「ベンチマーク的には微妙かも」という印象を抱いた方もいるだろう。確かにCPUスコアは伸び悩み気味だ。しかしもちろん、ベンチマークがすべてではない。この新しいMacBook Airは、日常的な作業をしているときの感触が軽快そのものなのだ。
例えばアプリケーションの起動が速い。アプリケーションの切り替えもサクサク。コンテクストメニューの表示にもたつきがない、などなど。これらは2次キャッシュ容量が増加した効果もあるだろうし、SSDを採用した効果も大きいのだろう。実際に使っていて動作にひっかかりを感じる場面がとにかく少ない。てきぱき動いてくれるので細かなストレスを感じないのだ。というわけで筆者としては、性能にも満足している、というのが結論。それにしても、実際に手元に置くと改めて、MacBook Airという“モノ”の存在感というか、所有欲を満たしまくりのオーラには、なんともデレデレしてしまうのだった。
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