この連載で中央アジアのキルギスとウズベキスタンのIT事情を紹介すべく、両国の“大都市”に潜入し、街をつぶさに視察した。そのときの話は月収1万円でハイエンド携帯電話を選ぶキルギスのIT事情とウズベキスタンで日本の中古PCを売る男を参照していただきたいが、今回は、中央アジアで出会ったPCユーザーたちがどのように暮らしているのかを紹介したい。
キルギスもウズベキスタンも、個人住宅におけるIT環境は非常に似ている。ちなみに個人の住宅は、旧ソ連統治時代に建築された物件が多いため、外観だけでなく内部の間取りまで共通だ。中央アジアに限らず、旧ソ連に統治されていた多くの国で、このあたりの事情は共通する。アパートやマンションといった集合住宅にいたっては、社会主義国の中国に建つ古い物件にも驚くほどそっくりであったりする。
キルギスでもウズベキスタンでも、多くのPCユーザーに会って、その自宅を訪問することができた。両国とも若い世代が同居する世帯でノートPCを所有する割合が高いのは興味深い傾向だ。この連載でも数多くのユーザーを紹介してきた中国では収入の差が激しく、それぞれの世帯は自分たちの所得に応じた製品を買うのが普通だった。都市部における個人所有のPCを例に挙げれば、収入が限られる世帯では月収2カ月分前後のショップブランドPCを購入し、高収入の世帯は同じ月収2カ月分前後でもThinkPadシリーズやVAIOノートを購入する。
旧ソ連の影響を依然として色濃く残しているキルギスとウズベキスタンでも同じと思っていたら、低所得層が多くすむ住宅街では、低価格でそろえられる自作PCを所有する世帯もあれば、同じ低所得でも価格の安いデスクトップPCではなく、VAIOノートや東芝のdynabookを所有する家庭もある。よくよく聞いてみれば、持っているノートPCはキルギスやウズベキスタンで販売されているものではないという。確かに、両国のPCショップでVAIOノートやdynabookを見た記憶がない。これはどういうことなのか。
平均所得が低い両国では、オイルマネーで発達する隣国のカザフスタンや、ロシアの大都市であるモスクワやサンクトペテルブルグに出稼ぎに行くことが普通となっている。そうやって異国で働いている両国民が、キルギスやウズベキスタン国内で買うよりも安く購入でき、かつ、自国メーカーの製品より信頼できるノートPCを家に帰るときのお土産として購入する。こういう事情もあってか、人口550万弱のキルギスはもとより、人口2800万弱のウズベキスタンもPC市場の規模が小さく、サポートセンターを構えるPCメーカーは国外国内メーカーを含めて少ない。それゆえ、国内製品を購入して充実したサポートを求めようという気持ちは両国民になく、不具合が発生してもメーカーには頼らず、街のどこにでもある「PEMONT」(修理屋)で解決するのが基本だ。
同じ理由で、デジタルカメラもまた両国の市場でめったに見かけない。とはいえ、デジカメユーザーは、ごく少数だがいる。筆者は知り合いの親族が一堂に集まって行われたパーティーに参加することがあったが、そこではロシアに出稼ぎに行ったおじさんが購入したオリンパスのデジカメで、パーティー風景を撮影していたのが印象的だった。
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