液晶ディスプレイは、1366×768ドット表示に対応する13.3型ワイドだ。光源にLEDバックライトを採用し、周囲の映り込みを低減するアンチグレア処理がなされている。
表示の傾向は上下の視野角がやや狭めで、評価機においては標準状態での発色がやや青みがかっている印象を受けたが、なにより蛍光灯や周囲(背後の人など)の映り込みが気にならず、目も疲れにくいのが喜ばしい。長時間画面を見続けるビジネス利用のPCにおいては、映像や写真表示といったエンターテインメント向け機能の利用にメリットがあるグレアパネルより、ノングレア仕様のディスプレイ(が選べるメーカーのPC)を選択することを勧めたい。
ディスプレイの明るさは16段階で調整できる。オフィスにおける蛍光灯下などの適度に明るい場所でも最低輝度で表示内容を十分認識でき、逆に最大輝度にしてしまうと屋内での利用ではまぶしすぎるほどである。3段階目ほどでほぼ実用レベルの明るさになるので、外出先や会議へ持ち出す場合におけるバッテリー動作時間の延長も期待できる。このほか、国内におけるビジネスニーズがどれだけあるかは不明だが、ディスプレイの上部へ200万画素のそこそこ高解像度なWebカメラも内蔵する。
19ミリの正方ピッチを実現するキーボードは、強固でしならないボディと相まって“ゆがみやたわみ”がほとんど生じない。キートップは平面で、サイズは約15×15ミリ。指紋の付着が目立たず、水をこぼしても内部の基板に影響を及ぼしにくい防水設計にもなっている。
一方、EnterキーやBackspaceキーの右に配置する「Home/Page Up/Page Donwn/End」キーと、右下に隙間なく収められたカーソルキーは、少し気になるユーザーも存在しそうだ。今回は英語配列のキーボードを搭載する試用機での評価だが、日本語配列もこれらは同様となる。右列のキーは約5ミリの間隔を空けることで誤操作を防ぐ工夫がなされているものの、カーソルキーについては、より操作性を上げるために半段ほど位置を下げてほしかったところだ。
タッチパッドは横83ミリ×縦45ミリのセンサー面を確保する、2ボタン型の標準的な仕様だ。サラサラの感触であるため操作性は良好で、スクロールやジェスチャー操作にも対応する。センサー面はパームレストより約0.5ミリほど下げられ、キー入力中に手のひらでタッチパッドに触れるなどで誤操作するシーンも少なかった。クリックボタンのストロークが深めで若干押しにくいと感じたが、こちらは慣れの範囲だろう。
今回の評価機はCPUにCore i3-330M(2.13GHz)、2Gバイト(PC3-10600対応の2GバイトDDR3 SDRAM×1、空きスロット×1)のメインメモリ、250GバイトのHDD(Serial ATA)、DVDスーパーマルチドライブを搭載し、グラフィックスコアはCPUに統合されたIntel HD Graphicsを用いる。なお、プリインストールOSは国内市場向けでない英語版のWindows Vista Home Premium(32ビット版)のため、値は参考として見てほしい。
ベンチマークテスト | Vostro 3300 (Core i3-330M+CPU内蔵グラフィックス) |
参考:Inspiron 13z (Core 2 Duo SU9400+GeForce G105M) |
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PCMark05 | PC Mark | 5130 | ─ |
CPU | 5638 | 3686 | |
Memory | 4966 | 3675 | |
Graphics | 3134 | 2986 | |
HDD | 3800 | 5307 | |
3DMark06 1024×768ドット |
3DMarks | 1626 | 2754 |
SM2.0 | 479 | 1085 | |
HDR/SM3.0 | 676 | 1064 | |
CPU Score | 2274 | 1284 | |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 |
Low | 3223 | 6336 |
High | 2124 | 4110 | |
PCMark Vantage 1024×768ドット |
PCMarks | 3492 | 3345 |
Memories Suite | 2292 | 2242 | |
TV and Movies Suites | 1055 | 2283 | |
Gaming Suites | 2635 | 2580 | |
Music Suites | 3505 | 3735 | |
Communication Suites | 3301 | 3133 | |
Productivity Suites | 2771 | 2960 | |
HDD Test Suites | 2567 | 3633 | |
CrystalDiskMark 2.2 (5/100MB/C: Mバイト/秒) |
連続リード | 35.07 | ─ |
連続ライト | 44.66 | ─ | |
512Kリード | 19.79 | ─ | |
512Kライト | 24.95 | ─ | |
4Kリード | 0.39 | ─ | |
4Kライト | 0.353 | ─ | |
ベンチマークテストの結果は同価格帯のCore 2 Duo搭載CULVノートPCよりおおむね上々で、体感値としても不満なく機敏だ。グラフィックス系スコアは外部GPUを搭載するモデルに多少劣るが、昨今のWebサイトやメール、オフィスアプリケーションなど、オフィス利用における標準的なPC利用シーンにおいて困ることはほぼないと思われる。なお、望むなら外部GPUオプション(GeForce GT 310M)やより高速な搭載CPU(Core i5-430M/520M)も選べる。より高いパフォーマンスを望む層に向けた「選択肢がある」のは喜ばしい。
13.3型ワイドのVostro 3300は、14.8ボルト/40ワットアワー(2.62Ah)仕様の4セルリチウムイオンバッテリー(単体重量は234グラム)が付属し、カタログ公称値で最大3時間30分動作する。電源プランを「Power Saver(省電力)」に設定し、「BBench 1.01」(海人氏作)を用いて、10秒ごとにキー入力、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるWebサイトを巡回する条件で計測したところ、約172分(約2時間52分)動作した。
バッテリー動作時間は、1日の業務をすべてバッテリー動作で行うほど外出機会の多いユーザーには物足りない値ではあるが、会議や社内打ち合わせに持ち出す程度となる“大多数のオフィス利用者”には3時間弱動作すれば十分と思われる。外出機会の多いユーザーは別途もう1本バッテリーをオーダーしておくとよいだろう。ちなみに4セルバッテリーの単体重量は約233グラムだ。
Vostro 3000シリーズは、個人向けモデルに対する“単なるプリインストールソフトなし”モデルでなく、“自社は法人向けモデルを買うほどではない”と気後れする大企業向けでもない。最新仕様でコストパフォーマンスを追求しつつ、サポートは“中小企業への導入に特化”して展開するシリーズだ。
PCとしてのパフォーマンス、デザイン性、サポート体制、そして価格。なによりVostro 3300は、個人ユーザーでも「おっ。意外にいいかも」と思える特徴がある。会社で導入した貸与PCといえども、使うのは個人。この項目はかなり重要だ。
なお、2010年7月13日にWindows 2000とWindows XP SP2のサポートが終了する。このことも機会の1つとして、新PC/Windows 7へのリプレースを計画するならVostro 3000シリーズは「ちょうどよい」購入候補の1つになるだろう。
Vostroシリーズと大企業向けの“Latitude”のどちらにするかは、導入台数(Vostroブランドは、従業員数500人以下の企業向けという位置付け)やPCの仕様以外に「自社にサポートを任せられるIT担当専任者が存在するか否か」で考慮するとよい。
Latitudeは社内にIT担当専任者が常駐することを想定した「IT部門向け」のサポートを行うのに対し、Vostroは「エンドユーザー向け」のサポートを提供する。社内にIT専任者がいない、あるいは存在してもPCのトラブルは原則としてエンドユーザーが解決しなければならない体制であれば、Vostroが向いている。
Vostro 3000シリーズは、24時間365日テクニカル電話/メールサポートや1年引き取り修理、1年間パーツ保証などを含めた「標準保守サービス」、故障原因を診断し、指定サービスエンジニアが来社して修理する“翌営業日対応オンサイト保守”や火災・破損による損害をカバーする保証を含めた「オプションサービス」、エンジニア派遣のもとで初期導入作業やネットワーク設定などを行う「設置サービス」といったサービスサポートメニューを用意する。
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