2万円以下で購入できるAISレシーバーと1500円のハンディVHFアンテナの組み合わせで、12海里離れた本船の動静を知ることができ、4万円を切るNetbookと3万円を切る航海ソフトでも、お互いの位置関係と衝突の危険性を直感的にすぐ把握できる。
だが、レーダーを上回る使いやすさをユーザーに提供するAISも完全ではない。AISの搭載が義務付けられている国際航海に従事するすべての旅客船と300総トン以上の本船、500総トン以上の内航船は表示されるものの、500総トン未満の内航船や遊漁船、漁船、そして、パワーボートやヨットなど、普段沿岸で接近する機会の多い船の多くがAISを使っていない。また、官主導で普及が進むAISに対して、反感を持つヨット乗りやパワーボード乗りも多い。
AISは、データを送信する船が多くなればなるほど全体としての安全性が向上する。そのため、本船で搭載が義務化されたわけだが、それ以外の船でもAISデータを発信することによって得られるメリットはデメリットを上回るはずだ。問題は、官主導で義務化されることによって、認定を受けた「高額製品」の搭載を強いられる可能性があることだろう。しかし、認定で縛りをかけたせいで高額な製品しか流通せず、制度そのものが形骸化した「マリンVHF」という前例を繰り返してほしくはない。
GPSは、その利便性と価格の安さから、誰に強いられることなくほとんどの船で使われれている。AISも、その利便性と価格の安さでほとんどの船で使われるようになるのが「健全な」普及の姿だ。そのためには、現在700ドル程度のClass B対応AISトランスポンダーが、もう少し安くなる必要もあるだろう。
最後に、このAISの検証にあたって製品のアドバイスをいただいた帆船「新高丸」の岩田船長と、情報交換の場として掲示板を利用させていただいた、帆船「ラピタ丸」船長にこの場を借りて感謝したい。
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