「Eee PC 901-16G」で電脳航海に挑む勝手に連載「海で使うIT」(1/3 ページ)

» 2009年01月05日 10時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

航海に使える?使えない? Netbook

 5万円程度の価格で販売されているNetbook(または、低価格ミニノートPC)は、安いだけあって、なにかとリスクの高いセーリングクルーザーに持ち込んで、GPSとPC用航法ソフトを組み合わせた「電脳航法システム」を構築するのに最適な「ノートPC」に見えてくる。

 しかし、PCベンダーの多くは「これはノートPCとは違うものなのです」とことあるごとに説明する。インターネットで提供されるサービスを利用するためだけに開発されたと一部のメーカーが公言するNetbookでは、電脳航海は無理なのだろうか。

 「量販店で売っている100円ノートPCと10万円もするノートPCとは、何が違うのか」と疑問に思う「海のことは何でも知っているけど、PCのことはよく知らんなー」というベテラン船長も少なからずいると思うので、まず、そのあたりから整理して見よう。

「Netbookで電脳航法システムはまともに動くのか?」の実験航海にむけて構築した構成。ASUSの「Eee PC 901-16G」にBluetooth接続のGPSを組み合わせ、PC用航法ソフトには「Software On Board」と「SailCruiser」を導入。電子海図はC-MAPとENC S-57を用いた(写真=左)。SailCruiserでENC S-57を表示させる。画面サイズが小さくなって、解像度も縦方向が少ないが表示される海図データそのものに違いはない(写真=右)

 PC USERでは、これまでにもNetbookを紹介する記事を数多く掲載しているが、通常のノートPCとNetbook、低価格ミニノートPCと呼ばれる製品とでは、大まかに整理して次のような違いがある。

  • 多くのNetbookは通常のノートPCより処理能力が低い
  • 多くのNetbookは通常のノートPCよりデータを記録できる容量が少ない
  • 多くのNetbookは通常のノートPCより画面サイズが小さくて解像度も低い
  • 多くのNetbookは通常のノートPCよりボディサイズが小さい
  • 多くのNetbookは通常のノートPCより安い

 こうして改めて並べてみると、あまりいいことがなさそうなNetbookだが、最後の「価格が安い」がすべてを許してしまうだけでなく、低いと思える性能も、イマドキのPCで主な用途となっている「Webブラウジングや動画共有サイトの閲覧、メール、テキストの入力や簡単な画像加工」なら十分にこなせるだけのパフォーマンスがある。

 ただし、Netbookを扱っている多くのPCメーカーは、「メインのノートPCとして使おうとするとパフォーマンスが足りなくてできないことがある」と説明している。Netbookとして数多くの製品が登場しているが、基本構成は、1.6GHzで動作するAtom N270にIntel 945GSE Expressチップセットを組み合わせて、16Gバイト程度のSSD、もしくは160Gバイトの1.8インチHDDを搭載する。SSDは円盤を回してデータを記録するHDDの代わりにフラッシュメモリを実装してその中にデータを記録するデバイスで、駆動部分がないおかげで消費電力を抑えることができ、かつ、衝撃などにも耐えられるといった長所をもつが、その一方で容量がHDDより少なくなってしまうという欠点もある。

 また、多くのNetbookはボディサイズがB5サイズのモバイルノートPC並みに小さいが、それに伴なって画面サイズが通常のノートPCよりもひと回り小さい8.9型もしくは10型ワイドが主流となっている。そのため、画面解像度も通常のモバイルノートPCが1280×800ドットや、1024×768ドット(ただし、4:3の画面比率を持つノートPCも少なくなってきたが)よりも狭い1024×600ドットになっている。

PC USERで掲載した主なNetbookのレビュー記事

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意外とコンパクトな電子海図とPC用航法ソフト

 このように、カタログスペックやベンチマークテストの結果では明らかに通常のノートPCを下回るNetbookだが、果たしてパワーボートやセーリングクルーザーに持ち込んで、GPSとPC用航法ソフトと組み合わせて安心して使えるだけのスペックとパフォーマンスは持っているのだろうか。

 Netbookを電脳航海で使おうとした場合、気になるのが以下のポイントになる。

  • 16Gバイトという容量が少ないSSDにPC用航法ソフトと電子海図のデータが収納できるのか
  • 1024×600ドットの解像度でPC用航法ソフトが問題なく表示できるのか
  • 狭い画面でPC用航法ソフトの使い勝手が損なわれないのか
  • 通常タイプのノートPCより低いパフォーマンスで、GPSのデータを海図にプロットしたり、電子海図の表示がリアルタイムでスムーズに行えるのか

 このうち、データストレージ容量の少なさは心配しなくていい。高度なデータベースである電子海図もその容量は意外なほどに少ない。例えば、ENCは、日本近海をカバーするそのすべてのデータを収録してもわずが100Mバイトにしか過ぎない。CーMAPにしてもSoftware On Boardに収録されている全世界広域、日本近海の広域、関東海域のHarbor Navigateなどで44Mバイトと、イマドキのソフトウェアからすれば、とてもコンパクトに収まっている。

 PC用航法ソフトも、その低価格で多くのユーザーから支持されている「Software On Board」で100Mバイト、柔軟な画面カスタマイズと帆走向けの機能が充実している「SailCruiser」で80Mバイト程度だ。ログデータもSoftware On Boardから2秒間隔で記録した5時間分データが約4Mバイトで済んでいる(仮に1日10時間航海して1年間巡航したとしても3Gバイト程度)。このように、データストレージの容量が電脳航法システムで問題になることはまずありえない。

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