電子ペーパーの選択肢が広がる「SID 2010」リポート(1/2 ページ)

» 2010年05月28日 18時37分 公開
[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

ディスプレイが巻き取れる!

SID 2010で行われたソニーの4.1型ローラブル有機ELディスプレイのデモ。121ppiで解像度は432×240ドット。コントラスト比は1000:1だ

 SID 2010で発表された新技術において、最も注目を集めたものの1つが、ソニーが紹介した「ローラブルAMOLED」(AMOLED:アクティブマトリックス有機EL)だ。厚さわずか80マイクロメートルの有機ELディスプレイが、動画を再生しながら半径4ミリのローラーに巻かれていくビデオ映像に、会場から感嘆の声が上がった。同社は、セッション終了後の聴衆インタビューで、この試作品を公開した。

 フレキシブルなAMOLEDに採用されている技術として、これまで発表されたものに「a-Si TFT」(アモルファスシリコンTFT)、「酸化TFT」、そして「有機TFT」があるが、ソニーのローラブル有機ELでは特に柔軟性の高い有機TFTを採用する。また、有機半導体、Peri-Xanthenoxanthene(PXX)誘導体を用いたTFTを独自に開発し、従来のペンタセンを用いた有機半導体TFTよりも駆動力を向上させた。

 このペーパー状のディスプレイには、柔らかい有機TFTのゲートドライバ回路が形成され、画像信号のインプット回路はディスプレイの片側に配置されるため、容易に巻き取ることができる。搭載するデバイスとしては、インテリジェントペーパー、スクリーンディスプレイ、ステッカータイプの音楽プレイヤー、ウエアラブル携帯電話などを想定している。

SamsungはフレキシブルディスプレイもAMOLEDで

 Samsung Mobile Display(SMD)も同じセッションでフレキシブル有機ELを発表した。こちらはPoly-Si(ポリシリコン)のTFTを採用しており、曲げることはできるが巻き取ることはできない。最小曲率半径は10ミリと、ソニーの5ミリと比べて倍になる。しかし、Poly-Si TFTは有機TFTよりも性能面で優れており、信頼性も高い。また、a-Si TFTや酸化TFTと異なり低温での製造が可能で、さらに既存のLCDや有機ELで広く採用されているため、量産も容易という。

 SMDは、同社エグゼクティブ上級副社長 兼 フェローのサムホー・キム氏がSID 2010の基調講演で述べたように、AMOLEDをテレビに最適なデバイスと考えているが、それと同時にフレキシブルディスプレイにおいてもAMOLEDを積極的に用いて開発を進めていくとしている(基調講演の内容は「AMOLED」こそ次世代ディスプレイの大物を参照のこと)。

左はローラブル有機ELディスプレイの構造で、右のグラフは従来型ペンタセン有機TFTとPXX有機TFTのキャリア移動度を比較した。キャリア移動度が0.4平方センチ/ボルト秒とペンタセンの0.1平方センチ/ボルト秒を上回る(写真=左)。フレキシブルディスプレイとしての特性をLCD、電子ペーパー、AMOLEDで比較する。AMOLEDは、消費電力のみ電気泳動法の電子ペーパーに劣るが、柔軟性、画像品質、応答速度など、すべての項目においてほかのディスプレイを上回る(写真=右)

 SMDが有機ELの量産に注力する背景には、コンシューマー製品として致命的だった有機EL素子の短寿命問題が解決する目処がついたことが挙げられる。青色有機EL素子の寿命の短さが特に問題とされてきたが、SID 2010で、Universal Display Corp(UDC)は発光効率を従来比30%に向上しつつ、これまでの2倍に相当する9000時間の寿命を達成したライトブルーのリン光有機EL材料を発表した。

 これまで有機ELパネルでは、寿命の問題を回避するため青色だけ発光効率の低い蛍光材料を使用していたが、これがディスプレイ全体の消費電力を上昇させる要因となっていた。今回のライトブルー素子をブルーのサブピクセルとして採用することで、パネル全体の消費電力を最大33%下げることができるという。UDCはSMDとともに、この「RGB1B2」のピクセル構造を採用した有機ELディスプレイの開発を発表している。

UDCのリン光有機EL素子。上が新開発の長寿命なライトブルー素子だ

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