QWERTY配列の日本語キーボードは、全部で61キー(最上段のワンタッチボタンを除く)とキー数を削っていることもあり、少々個性的な配列だ。
F1〜F12のファンクションキーがない5段配列で、左端にPgUp/PgDnを配置し、「1」の下にはEsc、Tab、半角/全角が縦に並び、最下段は左からShift、Ctrl、無変換、Fn、スペース、Alt、Ctrl+Alt+Del、カタカナ ひらがな/ローマ字、変換のキーで構成されている。キーは碁盤の目のようにそろって並んでおり、各段をずらすような処理はしていない。
一部のキーはFnとの同時押しで入力する仕組みで、以下のような制限がある。
句点をはじめ、これらのキー入力は使用頻度が高いことに加えて、キーボード上に該当する刻印がない(かな入力の文字は刻印あり)ため、あらかじめ覚えておく必要があることは注意したい。キー数が少なくなることで、Fnキーを活用する仕様になることは分かるのだが、せめてキー刻印をきちんと付けてほしかった。最下段にあるCtrl+Alt+Delキーの代わりに、こうしたキーを割り当てたほうがよかっただろう。
キーボードの上には、8つのワンタッチボタンを備えている。音量の上げ下げと消音、Windows Media Centerなどで使える再生/一時停止、停止、戻る、進むのAVコントロール用ワンタッチボタンのほか、オレンジ色のボタンを押すと、「コンピューター」(Windows 7でいうところのスタート → コンピューター)が開く。AVコントロール用のワンタッチボタンはFnとの同時押しで、「+」や「¥」などを入力するのにも使う。オレンジ色のボタンは素直にWindowsキーのほうが使いやすかったのではないだろうか。
さて、各キーのサイズをデジタルノギスで実測してみた。主要キーは横8.1×縦7.6ミリのほぼ正方形で、Enterキーは横14.5〜15.9ミリ、スペースバーは横33.6ミリだ。主要キーのキーピッチは約8.3ミリ、キーストロークはごく短い(携帯電話のボタンのよう)。キーの数を削ったぶん、ボディサイズの割にキーが大きめなのがポイントだ。
文字入力時は本体を両手で抱え、左右の親指で入力するわけだが、ホームポジションがボディの左右中央になるよう設計してあるので、違和感がない。また、正方形に近い形状のキーはゆとりのあるサイズに加えて、キートップの中央が少し盛り上がっているため、見た目よりかなり押しやすく、少し指を立てるように心がけて打てば、隣接するキーごと押してしまうようなミスも発生しにくかった。
キーストロークは浅いが、適度なクリック感があり、ぐたつきやたわみがないため、キー配列に慣れれば、プチプチと気持ちよく入力できるはずだ。入力時はカチカチと音が鳴るが、耳障りなほど大きくはなく、こうしたミニキーボードの場合はかえって打っている感覚がして悪くない。
トラックボールは幅12ミリ程度と十分なサイズがあり、片手で本体を持つと、ちょうど親指の腹が当たるくらいの位置にボールが来るため、操作しやすい。トラックボール自体にクリックの機能はないが、ボールは軽い力でスルスルと転がり、マウスポインタの反応も上々だ。反応が過敏と感じた場合は、マウスのプロパティで移動速度を調整すればよいだろう。
トラックボールのすぐ上には、左右のクリックボタンがあり、こちらも片手で本体を持ったまま、親指で押しやすい位置だ。ボタンは本体カバーと一体成形で、ストロークは浅く、押した際にパチパチと少々チープな音が鳴るが、操作性に問題はない。
ドラッグ&ドロップや範囲選択のような操作では、片手でボタンを押したまま、トラックボールを動かす必要があるが、慣れれば軽快に扱えるだろう。
主要キーのキートップは幅が8ミリ程度と小さく見えるが、実際にキーを押下してみると確かなクリック感があり、中央部がわずかに盛り上がっているため、押し間違いもほとんどない。トラックボールと左右ボタンも片手で扱うことができ、マウス操作しか使わない映像コンテンツの視聴などは楽に行える。
ただ、キーボード最上段のAVコントロールボタンや音量調節などは片手でホールドした状態では親指が届きにくく、そちらのボタンを使いたい場合は結局のところ両手で本体を握る必要がある。
携帯用途も考慮した重量だが、本体の形状がフラットではないため、カバンに入れると思ったよりかさばるかもしれない。また、トラックボール回りが光沢仕上げで、指紋などが目立ちやすい点も気になった。背面と同じラバー風の塗装にしたほうがよかったのではないか。
重量は実測値で122グラム(乾電池込み)と軽量なので、片手で長時間持っても負担には感じない。電源スイッチがあるので、未使用時は電源をオフにできるのも好ましい。各ボタンもプチプチとしたクリック感があり、両手を使ってのキー入力も意外と快適に行える。背面に5つの突起があり、それを目安にして指を配置することができる点も気が利いている。
ただ、片手持ちではすべてのキーを押すことができず、F1やF2といったファンクションキーがないのも悩ましいところ。トラックボールを押下できたり、手首や首などにぶら下げられるようなストラップ用ホイールがあると、なおよかった気がする。
表面加工の異なるブラックを組み合わせたボディはなかなかサマになっており、この手のミニキーボードにありがちな武骨さがないのは、さすが大手メーカー製。片手でしっかり握れるフォルムに、プチプチと軽快に押せるQWERTYキーボードを並べ、転がして操作するのが楽しいトラックボールも盛り込んでおり、使ってみると愛着が沸いてくる。
キー配列やワンタッチボタンの割り当てなど、細部の詰めが少々甘い気もするが、リラックスした姿勢でリモコン代わりにポインタを操作しつつ、キーボードで短文を打つ程度ならば、これで十分使える。価格もそれほど高くないので、テレビにつないだリビングPCなどでカジュアルに利用するならアリだろう。
なお、今後もレノボがこうした路線のミニワイヤレスキーボードをリリースし続けるのなら、一度は大和研究所が本気で使いやすさと小型軽量のバランスを追求したようなモデルも見てみたいものだ。
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