既報の通り、富士通が2011年PC夏モデルとして、個人向け製品全7シリーズを発表した。ノートPCの「FMV LIFEBOOK」シリーズが4機種、デスクトップPCの「FMV ESPRIMO」が3機種という構成で、新たに10.1型ワイド液晶を搭載するタブレットPC「FMV LIFEBOOK TH」も登場している。
同日の製品発表会に登壇した富士通執行役員常務の大谷信雄氏は、福島県にあるデスクトップPCの生産拠点が、東日本大震災の影響からラインがストップしたことに触れて、「(デスクトップPCの製造を)島根にあるノートPCの製造ラインへ一時的に移すなどの措置を採っていたが、3月28日には復旧が完了して生産を始めることができた。夏モデルはユーザーに迷惑をかけることなく積極的に発売していきたい。復旧から復興へ向けて、もっともっとビジネスを活性化させていく」と決意を述べた。
また、PC市場の動向を振り返り、「2010年の出荷台数は542万台と、震災の影響もあって前年比96%となったが、一方で4月は前年比107%でスタートを切った。市場に明るい兆しも見えてきている」と分析。さらに、「スマートフォンとタブレットが台頭しつつある市場において、今PCに求められる役割は何か、その解の1つを夏モデルで示せれば」と続け、スマートフォンとの連携機能や、キーボードを備えたタブレット型製品などを紹介した。
夏モデル全体の概要説明は、同社パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏が担当した。同氏は「快適、便利」「地デジ」「節電」の3点から夏モデルの特徴を解説。まず「快適、便利」では、大谷氏も触れたスマートフォンとの連携機能として「F-LINK」を紹介した。
F-LINKはAndroid端末内のデータをワイヤレスでPC側に取り込む仕組みで、端末同士をケーブルで接続したり、メモリーカードを着脱する必要なく利用できるのがメリットだ。また、液晶ディスプレイ上部にWebカメラを搭載する一部の機種では、手のひらの動きを読み取ってソフトウェアを起動したり、動画の再生/停止や音量調節など、リモコンと同等の操作が行えるジェスチャーコントロール機能を備えた。
夏モデルの目玉として注目されるFMV LIFEBOOK THも、「快適、便利」をコンセプトに開発されている。通常のタブレットは、指先で直感的に操作することができ、メディアブラウザとして非常に使いやすい半面、ソフトウェアキーボードによる文字入力になるため、長文を書く必要があるようなビジネス用途には向いていない。そこでFMV LIFEBOOK THでは、タブレットの背面側にキーボードを収納するユニークな機構を採用し、ピュアタブレット型によるタッチ操作と、快適なキーボード入力を両立している。
2つ目のポイントとして挙げられた「地デジ」は、2011年7月に予定されているアナログ停波を見据えたもので、PC/テレビ/レコーダーの3役を1台でこなせるPCならではのメリットを訴求する。
具体的には、長時間10倍ダブル録画で最長1780時間の長時間録画が可能な2TバイトHDD搭載モデルや、BDXLに対応したBlu-ray Discドライブ搭載モデルを拡充。また、フルモデルチェンジを行った「FMV ESPRIMO FH」の20型ワイドモデルは、オンキヨー製6ワット+6ワットスピーカーを備え、より高音質なサウンドとともに映像を楽しめるようになった。
また、A4ノートPC「AH52/DA」に付属する“ワイヤレスTV”ユニットにより、部屋のどこにいても地上/BS/110度CS放送を手軽に視聴できるほか、PCに保存した録画映像は外出先からの視聴にも対応した。なお、ワイヤレスTVユニットと同じ機能を持つ製品は他社メーカーにもあるが、同社独自のトランスコードチップ(H.264)は帯域の圧迫が少なく、コマ落ちのない高画質な映像を転送できるとしている。このほか、テレビ視聴中にPCの前から人が離れると再生が停止し、席に戻ると再生が始まる人感センサーと連動したタイムシフト機能も目を引く。


地デジチューナーを2基搭載する液晶一体型PC「FMV ESPRIMO FH」は、20型ワイドのモデルがフルモデルチェンジし、薄型の新デザインを採用した。白、黒、赤のカラーバリエーションを用意する(写真=左)。テレビ機能では、ワイヤレスで地デジを視聴できる“ワイヤレスTV”ユニットを付属するノートPCも登場(写真=中央)。FMV LIFEBOOK SHは、ベイ内蔵型のモバイルプロジェクターユニットをオプションで追加できる(写真=右)最後の「節電」は、電力供給不足が予想される夏に向けて、これまで企業向け製品で導入していた省電力機能をコンシューマー製品にも適用したものだ。電力消費の高まる午後から夜間のピークタイムはバッテリーで駆動し、ピークを過ぎた深夜にバッテリー充電を行うピークシフト機能(5月下旬提供予定)をはじめ、非使用時の電力供給を抑えるゼロワットACアダプタや、使用していない機能への電力供給をカットする省電力ユーティリティ、ワンタッチで簡単に省電力設定へ移行できるECOボタンなどを備えた。
齋藤氏は「これから節電が大きなキーワードになると考えており、この部分にも注力していく。(FMVは)豊富な節電機能を搭載し、6年前のモデルと比べると消費電力は約81%も削減されているので、これを機に買い替えを検討してほしい。ユーザーはECOボタンを押すだけで節電に貢献できる」とアピールした。


スマートフォンからPCに画像/動画を無線LANで転送する「F-LINK」のデモ。PC側がアクセスポイントとして動作し、最大15台までのクライアントが接続できる(ただし転送は1ファイルずつ。またPC側からスマートフォンへダウンロードする機能はない)。連携アプリ「F-LINK for Android」は6月中旬にAndroid Marketで配布される予定だ。なお、現状では対応機種が「REGZA Phone T-01C」と「REGZA Phone IS04」に限られ、対応OSはAndroid 2.2/2.3だが、将来的には検証機種を増やし、Android 3.0などにも対応していくという(写真=左)。ピークシフト機能のスケジューリングなど、節電用のユーティリティを提供する(写真=中央)。電源オフ時の電力供給を抑えるゼロワットACアダプタを採用した(写真=右)なお、各モデルの内容については、富士通PC夏モデルのまとめ記事と個別のニュース記事を参照してほしい。

富士通、「FMV」夏モデル――新型タブレットやワイヤレスTV対応ノート、スリムな液晶一体型を投入
2つのスタイルで利用できる薄型軽量タブレットPC――「FMV LIFEBOOK TH」
第2世代Core i+新ボディで下位機をフルモデルチェンジ――「FMV LIFEBOOK SH」
“省電力+ワイヤレスTV”でラインアップ強化、15.6型サイズの定番A4ノート──「FMV LIFEBOOK AH」
クアッドコアCPU+17.3型フルHD液晶搭載の豪華AVノートPC──「FMV LIFEBOOK NH」
主力の液晶一体型PCはテレビ機能をさらに使いやすく――「FMV ESPRIMO FH」
手軽にテレビ視聴/録画が楽しめる地デジモデルの廉価版――「FMV ESPRIMO EH」
下位機も“Sandy Bridge”世代となったスリムデスクトップ――「FMV ESPRIMO DH」
2011年PC春モデル:富士通が「FMV」春モデルを発表――グラスレス3D、Sandy Bridge、AMD Fusion APUなど大幅強化
2011年PC春モデル:テーマは「匠」「疾風」、Made in Japanを徹底して追求──富士通2011年PC春モデル発表会
2011年PC春モデル:踏んで解説する「FMV LIFEBOOK SH」
もちろん“Made in Japan”:「FMV LIFEBOOK SH76/C」実力診断――第2世代Core i+着脱式ベイ搭載の13.3型モバイルノート
逆襲のPC春モデル:FMVの第2世代Core搭載モバイルノート「SH76/C」と「PH74/C」を見比べる
もうメガネには頼らない:“グラスレス”で3D立体視が手軽に楽しめる――「FMV ESPRIMO FH99/CM」を試す
2011年PC春モデル:40秒高速起動のモバイルノート、“Sandy”と“Fusion”モデルを用意――「FMV LIFEBOOK PH」
2011年PC春モデル:シャープなラインのデザインに一新、10.5時間動作のミニノートPC――「FMV LIFEBOOK MH」
2011年PC春モデル:Athlon II搭載の14型ベーシックノートPC――「FMV LIFEBOOK LH」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.