台湾ASUSTeK Computer(ASUS)が2011年末商戦の目玉機種として準備してきた薄型軽量モバイルノートPC「ZENBOOK」がついに発売された。同社が注力する「Ultrabook」の第1弾となる製品だ。
簡単におさらいをしておくと、UltrabookとはIntelが2011年5月末に構想を発表し、今後数年をかけて推進していく薄型軽量ノートPCの新カテゴリーのこと。薄型軽量ボディに現在のノートPCが持つ性能と機能、タブレット端末の特徴まで兼ね備え、長時間のバッテリー駆動、高い応答性、高度なセキュリティ機能、普及価格帯での提供を目指す。
現時点(2011年11月現在)で各社が投入している第1世代のUltrabookは、CPUに超低電圧版の第2世代Coreプロセッサー・ファミリー(開発コード名:Sandy Bridge)を採用し、高い応答性や本体厚20ミリ(0.8インチ)以下の薄型ボディを実現しているのが特徴だ。当初は主要価格帯で1000ドル以下を目指すとしていたが、現状では1000ドルを超える製品が多い。
第2世代のUtrabookは2012年前半に登場する見込みで、次世代CPUの「Ivy Bridge」(開発コード名)によって、電力効率やグラフィックス性能、応答性能、セキュリティ機能が大幅に向上するという。
そして第3世代Ultrabookでは、2013年に製品化される予定の新アーキテクチャCPU「Haswell」(開発コード名)を用いることで、TDP(熱設計電力)が現在のCPUに比べて半減し、消費電力のさらなる削減をもたらす。
IntelはUltrabook推進のため、3億ドル規模の「Ultrabook基金」を設立しており、24時間駆動のバッテリー、革新的なデザイン、ストレージ容量の拡張といった技術開発を行う企業に対して今後3〜4年間にわたって投資していく。Intelは2012年末までにコンシューマー向けノートPCの40%がUltrabookにシフトすると予測していることからも、その力の入れようがうかがえる。
さて、ASUSのZENBOOKはIntelがCOMPUTEX TAIPEI 2011の基調講演でUltrabook構想を明らかにした際、その代表例として紹介された製品だ(当時はZENBOOKというブランド名は未発表で、UX21として11.6型モデルが取り上げられた)。ASUSのジョニー・シー(Jonney Shih)会長がIntelの基調講演に登壇し、自ら製品をアピールしたことは記憶に新しい。
シー会長は、開発中のプロトタイプをIntelのポール・オッテリーニCEOに見せたところ、「Ultrabookのコンセプトを最も体現した製品だ」との反応が返ってきたとも語っており、ZENBOOKはまさに第1世代Ultrabookの代表的なモデルといえるだろう。8万4800円からという高いコストパフォーマンスにも要注目だ。
ZENBOOKの製品ラインアップは、画面サイズとSSD容量の違いで4モデルが用意されているが、今回は128GバイトSSD搭載の11.6型モデル「UX21E-KX128」(2011年11月3日発売)と、256GバイトSSD搭載の13.3型モデル「UX31E-RY256」(2011年11月下旬以降に発売予定)を入手したので、2台まとめてチェックしていこう。ちなみにこの2台はそれぞれの画面サイズで上位モデルとなる。
ZENBOOKの大きな特徴は、Ultrabookが掲げる目標値である厚さ20ミリ以下を大きく下回る極薄のアルミボディだ。11.6型のUX21E-KX128も13.3型のUX31E-RY256も、本体厚は最薄部で3ミリ、最厚部で17ミリに抑えられている。いずれもデザインは共通で、前方に向かって薄くなるくさび形になっており、パームレスト手前の薄さが目を引く。
本体サイズと重量は、UX21E-KX128が299(幅)×196.8(奥行き)×3〜17(高さ)ミリで約1.1キロ。UX31E-RY256が325(幅)×223(奥行き)×3〜17(高さ)ミリで約1.3キロだ。画面サイズの違いにより、フットプリントの大きさと重さに差が出ている。いずれも携帯利用に適したサイズと重量だが、持ち運びやすさを重視するならば、UX21E-KX128が断然有利だ。ちなみに、実測値での重量はUX21E-KX128が1154グラムとほぼ公称値通り、UX31E-RY256が1398グラムと公称値より少々重かった。
興味深いのは、これらの薄型軽量ボディはアルミの削り出しで作られるユニボディであることだ。アルミユニボディの薄型軽量ノートPCといえば、Appleの「MacBook Air」が思い浮かぶが、ZENBOOKもこれと同様の特徴を持つ。
つまり、加工した板金で組み上げた通常のモバイルノートPCに比べて、精巧で継ぎ目のないデザイン、シャープなエッジのライン、ボディ全体のかたまりとしての一体感、たわみやゆがみを抑えた高い剛性感といったメリットが得られることで、見た目だけでなく、触れた場合にも上質感が伝わってくるのだ。手に持ってみると、見た目の薄さに反して、どっしりとした重さと金属の硬さが感じられ、なかなかの高級感がある。
より薄型軽量を目指す場合はプレスしたアルミやマグネシウム合金、あるいはカーボン、樹脂といった組み合わせも考えられるが、アルミユニボディは薄さ、軽さ、強さ、美しさのバランスにおいて非常に優れた作り方といえる。
外装については、天面に特徴的な円形のスピン加工、パームレスト面と底面に縦方向へ走るヘアライン加工を施しているのが目立つ。天面は濃いグレー寄りのシルバー、パームレスト面と底面はシャンパンゴールド寄りの明るいシルバー、液晶ディスプレイ周囲は赤みがかったグレー(この部分は樹脂製)となっており、シンプルながらもよく練られたデザインだ。ただし、表面に指紋が付着しやすい点は注意したい(クリーニングクロスも付属する)。
そのほか、ブラックを基調としたシックな化粧箱、天面と同じスピン加工で仕上げたACアダプタ、本体と付属の変換アダプタを収納できるシンプルな専用キャリングケースなど、パッケージ全体のデザインにはかなりのこだわりがうかがえる。
なお、2種類の画面サイズをはじめ、3〜17ミリ厚の曲線的なアルミユニボディ、本体のフットプリント、キーボードやタッチパッド、ACアダプタのデザインについては、先に掲載した比較記事の通り、MacBook Airからの強い影響が見受けられる。
実際に並べてみると、外装がかなり違うため、両機を見間違えることはなさそうだが、とことんMacBook Airに対抗したともいえるこのデザインは、好みが分かれるところだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.