目標出荷台数で全員不幸!牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2011年12月14日 16時30分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]
前のページへ 1|2       

年間はおろか、その月の出荷台数すら読めない小規模メーカーに目標を聞くな

 ところで、小規模メーカーでは、新製品の目標出荷台数を定めていない場合もある。上場企業でないため株主から目標値を詰問されないという事情もあるが、目標を定めない主な理由は「あまりにも出荷数が少ない」、または「変動要因がありすぎて出荷台数が読めない」ことにある。

 そういうメーカーは、それまでの経験則で「まあ極端には外さないだろう」という台数を調達した資金に見合う範囲で“なんとなく”仕入れて、販売台数が一定の基準を下回るまで細々と売っていく。こうした製品を大量に抱え、売れなくなった製品をトコロテン式に押し出して終息させることで全体の鮮度を保ち、単品ではなくグロスで利益を稼ぐ。小物が多いPCアクセサリメーカーによくある話だ。

 このようなメーカーが扱う製品では、単品ごとの出荷数のグラフが年間を通してゆるやかな曲線になることはない。「ある月の出荷数は客注(販売店の在庫としてではなく顧客からの直接注文)のみでたったの50個→その翌月は全国展開をしている量販チェーン店への一括導入が決まったので1500個の大口出荷→そのあおりで倉庫在庫が欠品したので翌月と翌々月は0個→その次の月になって発注していた1000個がようやく入庫してきたが、そのタイミングで量販チェーン店の定番から外れた売り残りが返品されてしまい、帳簿上はマイナス500個の出荷」などという場合もある。

 こうした感覚でビジネスを行っている小規模メーカーが、慣れない新製品発表会で出荷目標台数を質問されると極度の緊張状態に陥って“とんでもない数値”を発してしまうこともある。「シェア20パーセント」とか「年間100万台」など、数字として区切りがいい発言は、このような極限状態における後先を考えていない値である疑いが濃厚だ。決して情報を隠すわけでなく、具体的な目標台数を決めていない(もしくは、決められない)がために、こうした悲劇は起こる。

 さらに都合の悪いことに、こうした具体的な目標値は記事の見出しに使われることが多い。後日、実績が目標に達しない場合は、(社外的にも社内的にも)対抗勢力に攻撃材料を与えてしまうケースが多発する。意図的に操作して根拠もなく実現不可能な目標値を掲げるようないい加減すぎる経営者は攻撃されてしかるべきとして、慣れない晴れの舞台に極限状態で口走ってしまった数値には根拠も悪気もないことを理解したうえで、生暖かく見守ってあげるくらいの寛容をユーザーはもってあげようではないか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月31日 更新
  1. Corsairの縦長ディスプレイ「XENEON EDGE」に待望の白&紫が登場! ガンダムやエヴァコラボの高級デバイスも (2026年03月30日)
  2. 高騰続くPCパーツ市場に変化? DDR5メモリの一部値下がりと依然厳しいストレージ事情 (2026年03月28日)
  3. “パワードスーツ”はもうSFの道具じゃなかった 高尾山でコンシューマー向け外骨格「Hypershell X Pro」を試す (2026年03月27日)
  4. 間もなく始まる「Amazon 新生活セール Final」――買い忘れのないように今からチェック! (2026年03月28日)
  5. SNSの死後削除ニーズは5割! コロナ禍で変化した「おひとりさま信託」の実態 (2026年03月29日)
  6. MSがWindowsのAI統合戦略を転換、パフォーマンスと信頼性向上に注力/Armが自社設計のCPU「Arm AGI CPU」を発表 (2026年03月29日)
  7. 「録音+文字起こし」を耳元で完結 Nottaユーザー必携の“常時装着”AIレコーダー「Zenchord 1」を試す (2026年03月30日)
  8. ベンキュー、量子ドット有機ELパネルを採用した26.5型/31.5型ゲーミングディスプレイ (2026年03月30日)
  9. 「PS5 Pro」は13万7980円に値上げ SIEが4月2日からの価格改定を発表 「日本語専用モデル」は据え置き (2026年03月28日)
  10. ONYX、10.3型電子ペーパー「BOOX Go 10.3」の新モデルを発売 フロントライトモデルも用意 (2026年03月30日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年