ディスプレイのスペックは圧巻だが、画素密度が高いほどいいかと問われると、必ずしもそうとはいえない。Windows 8のスタート画面はタイルと文字が適切な大きさで美しく表示されるが、デスクトップは等倍表示だとアイコンや文字が小さすぎて見づらくなり、細かなポインタ操作なども難しくなってしまう。
そこでWU1/Lでは、初期状態の文字サイズ(dpiスケーリング)を150%拡大に設定している。これでも標準的なノートPCに比べてアイコンや文字のサイズはかなり小さいほうだが、情報量の多い表示を好むユーザーにとっては満足度が高いだろう。
ただし、利用するソフトウェアによってはこうしたdpiスケーリングにうまく対応できず、メニュー内にビットマップで埋め込まれた文字が非常に小さく表示されたり、レイアウトが崩れるなどの問題も生じる。この辺りはWindowsの高画素密度サポートの限界で、Retinaディスプレイ上でのMac OS Xほど最適化が進んでいない部分だ。
しかし、Windows上で高画素密度ディスプレイを扱いやすくする富士通独自の工夫もみられる。それが6月下旬以降にダウンロード提供する予定の専用アプリケーション「DPI変更ユーティリティ」だ。
高画素密度ディスプレイでは、ユーザーの視力や好み、あるいは利用するソフトウェアの対応状況などから、dpiスケーリングの設定を変更したほうが使いやすい場合も多いため、拡大率の違う3つのモードを手軽に選べるようになっている(設定変更を反映するにはWindowsのログオンをやり直す必要がある)。
初期状態の「データ表示モード」はExcelなどで情報量の多い表示が行える小さめの150%表示、タッチ操作向きの「タッチ最適モード」は大きめの200%表示、そして液晶本来の文字サイズとなる「オリジナルモード」は非常に小さく細かい100%表示だ。
ちなみに200%のタッチ最適モードは、1600×900ドット表示の14型ワイド液晶と同じようなアイコン/文字サイズになり、それを高精細な表示で利用できる。100%表示はさすがにアイコンや文字が小さすぎて使い続けるのが困難に感じたが、目を近づけると、非常に小さな文字も確かに描画されており、その気になれば読めてしまうことに感心する。
つまり、3200×1800ドットという超高解像度であっても、画面サイズは14型ワイドなので、通常はアイコンや文字を拡大表示して使うことになり、フルHD以上の高解像度ディスプレイを備えた競合機種に比べて、実用上の作業領域が飛躍的に向上するわけではない(有利なことは確かだが)。近くで凝視してもドットを感じないほど高精細な表示が、14型ワイド画面で堪能できるというのが大きなメリットになる。
富士通はこのほかにも、高解像度を生かし、複数のウィンドウを整列表示できるソフトウェアもダウンロード提供する予定だ。
この液晶パネルはIGZO技術を採用しており、消費電力が低いという特徴も持つ。IGZOとはIn(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)で構成される透明な酸化物半導体だ。詳しい説明は割愛するが、従来型のアモルファスシリコンによる薄膜トランジスタ(TFT)と比較して、IGZOによるTFTは小型化が可能で、バックライト光の透過率を上げられるうえ、静止画表示で液晶の駆動電力を抑える特性もあり、同じサイズと解像度の液晶パネルより省電力化が図れる。
一般に高画素密度の液晶パネルは消費電力が高いため、モバイルノートPCのバッテリー駆動時間を短くする原因になるが、WU1/Lの場合はIGZO液晶パネルの採用によって、3200×1800ドット表示の14型ワイド液晶を搭載していながら、公称で約11〜11.1時間(JEITA測定法1.0による)のバッテリー駆動時間を確保している。約1時間で80%の充電が可能な急速充電をサポートしているのもありがたい(約2時間でフル充電)。バッテリーは着脱できない構造で、容量45ワットアワーのリチウムポリマーバッテリーを内蔵している。
なお、付属のACアダプタはスティック形状で軽量のものが新たに付属するというが、今回入手した試作機のACアダプタは従来機と同じものだったため、評価できなかった。
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