「ものすごくよかった。最高の年」──日本マイクロソフト2015年度経営方針記者会見好調の理由は追い風でなく信頼

» 2014年07月02日 16時21分 公開
[長浜和也,ITmedia]

XPサポート終了だけでなくユーザー意識の変化も

 日本マイクロソフトが、日本コンシューマー向け市場にOffice 365を2014年に提供することを明らかにした経営方針記者会見は、2015年度の開始にあたって、これからの経営方針を紹介するとともに、2014年度の事業についても振り返って説明している。

 説明にあたった日本マイクロソフト代表取締役社長の樋口泰行氏は、2014年度の成果について「着実な成長を遂げられた年。ものすごくよかった。最高の年」と語っている。過去最高の売り上げを記録できた要因として、“アベノミクス”という言葉で表現することが多い政府の経済対策や、Windows XPサポート終了による代替えPC需要の影響を認めつつ、日本マイクロソフトがユーザーに信頼されている証だと樋口氏は主張している。

日本マイクロソフト代表取締役社長の樋口泰行氏は(写真=左)、2014年度の成果について「ものすごくよかった。最高の年」と表現した(写真=右)

 会社に対するユーザーの信頼感は、法人事業、特にミッションクリティカルな用途でユーザーが購入を判断する基準になるとしたうえで、日本マイクロソフトは、情報インフラやクラウドインフラなどのエンタープライズ業界で長年培ってきた信頼によって、法人ユーザーは、コンシューマークラウドを中心に展開している競合より日本マイクロソフトを選んでくれると説明している。

 また、日本で遅れているICTの活用による生産性の向上では、ユーザーの意識が生産性の向上で競争力を高めようと変化しており、ワークスタイルも働いた時間ではなく働いて得た成果を評価するようになってきたことから、情報機器に対する投資が高まっていると語った。

タブレットのシェアは50%を目指す

 タブレット事業については、2年前の店頭販売シェアでほぼ0%だったのが、1年前には10%、そして、現在は30.5%まで成長してきたことを取り上げ、2015年度ではSurface Pro 3やそのほかのメーカーが投入するWindowsタブレットで50%をとりたいという目標を掲げた。長く使うユーザーには、従来のタブレットではできることが限られていることに気が付いて、Windowsのフル機能が使えるタブレットが必要であるという考えが浸透してきたと樋口氏は分析する。

 また、教育分野におけるタブレットの利用状況についても言及し、管理面やセキュリティ、そして、これまで開発してきた教材や運営管理のソフトウェアが使えるなどから、多くの自治体や教育関連機関でWindowsタブレットの利用が増えていることを紹介した。そして、その典型的な例として、Google関連アプリを積極的に活用してきた日本大学でOffice 365に移行したケーススタディを取り上げた。

 2015年度のタブレット事業で主力となり、日本でも7月17日から出荷する予定の「Surface Pro 3」については、Surface 2と比べて予約数が25倍と大きな反響となっていて、法人ビジネス向けでも急速に予約台数が増えていることを紹介した。ユーザーからは、タブレットみたいなPCでWindowsのフル機能が使えることと、画面サイズが大きくなったことを評価する声が多いという。「やっと安心して導入できる本命が来た、という意見も聞いている」(樋口氏)

 樋口氏はMicrosoft本社CEOに就任したサティア・ナデラ氏による“変化”についても紹介している。「デバイス アンド サービス」「モバイルファースト、クラウドファースト」というキーワードに従って、モバイルとクラウドサービスを第一優先としてシフトしていくMicrosoftでは、現在「使ってもらってなんぼ」(樋口氏)という考えのもと、従来のように、WindowsやMicrosoft Office、サービスが一緒になってPCに導入していることを重視することから、ユーザーに使ってもらうことを第一に考えている。そして、使ってもらえるなら、競合相手のプラットフォームでもMicrosoft Officeやサービスを使ってもらえるように提供していくとしている。

Surface Pro 3と「バリエーション豊かなOEMタブレット」(樋口氏)で2015年中にタブレットシェアの50%を確保するという(写真=左)。新CEOのナデラ氏は、現実的合理的な考えの持ち主。「2〜3カ月を要する案件をわずか2日間でこなしてしまう」(樋口氏)スピードを備えている

 なお、4月28日に発覚して大きく報道されたInternet Explorerの脆弱性の問題について、「サポートセンターに対するコール数が北米より多かった」と報道の影響に言及しつつ、樋口氏は、実際問題としてマルウェアのブロック率を取り上げて、「Internet Explorerは99.9%、Chromeで70.7%、Firefox 4.2%」という数字を並べた上で、Internet Explorerの高い安全性を訴えた。「脆弱性の報道があったからFirefoxに乗り換えたユーザーがいるが、かえって脆弱になってしまっている」(樋口氏)

 また、Windows XPのサポート終了と新世代OSへの移行については、日本はWindows XPの利用率が高かったが、この6月時点のインストールベースで8%台と最も移行が進んだ国の1つだったことを挙げ、今後も社会的使命として進めていくと語っている。

日本マイクロソフトが掲げる理想の企業像(写真=左)と目指す立ち位置(写真=右)。日本マイクロソフトと名前を変えてから日本社会に貢献する役割を重要視している

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