こうした状況はPC市場だけでない。スマートフォン市場でも脱落するメーカーが出る一方で、一部大手がさらにシェアを伸ばしている。スマートフォン市場がPC市場と異なるのは、新興国において需要が高い“安価”で高性能な製品を次々と投入できる中国系ベンダーが優勢なことだ。
先進国市場だけを見れば、AppleやSamsungがシェア上位を占めているが、新興国市場はその限りでない。逆に、中国系ベンダーは先進国では存在感が薄く、販売網やブランド力を持たない。IFA 2015では中国TCL傘下となった「Alcatel Onetouch」が、“中国テイスト”を抑えて、買収前の欧州企業的雰囲気を残しながらスマートフォンや関連製品の展示を行っているのが印象的だった。
LenovoによるMotorola Mobilityの買収でも、膨大な関連特許取得もさることながら、特に南北アメリカ地域に強く欧州やアジア地域でも力を持つMotorolaブランドを利用し、合わせて、スケールメリットによる効率化を実現しつつ、先進国と新興国の両方に強いLenovoとMotorolaのブランドや特徴を使い分けていくのが狙いだ。Lenovoによれば、今後販売部門など関連部署の統合を進めていくとのことで、Motorola従来のブランドや開発力を維持しつつ、スケールメリットによる効率化をうまく実現していくとしている。
こうした背景の中、Android搭載モバイルデバイスとしてLenovoブランドで提供するのが「Phab Plus」と「YOGA Tab 3 Pro」だ。Phab Plusは、いわゆる「ファブレット」と呼ぶ6.8型ディスプレイ搭載タブレットだ。ライフスタイルの変化により、通話機能よりもインターネットや大画面を利用したアプリの活用が進んでいることを受けて登場した。
YOGA Tab 3 Proは2014年秋に発表した13型ディスプレイ搭載モデルを小型化した。エンタテイメント利用に特化したAndroidタブレットだ。搭載サイズが最大70型スクリーン相当になるプロジェクタも内蔵しており、小規模グループで動画コンテンツを楽しむ上映会も簡単に実施できる。プロジェクタのレンズが、従来モデルの本体側面シリンダ横から、キックスタンド中央に移動したことで簡単に角度を調整できるようになって使いやすくなっている。
このほか、Lenovoが中国に展開している「Vibe」ブランドや、Motorolaから引き継いだ「Moto G」「Moto X」のスマートフォン新製品のほかに、スマートウォッチの「Moto 360」などを紹介していた。Vibe、Motoのブランドは今後も併存していくと明言しており、組織の効率化を実現しつつ、それぞれの特徴や地域での強みを生かして製品を展開していくことになる。
比較的ベーシックなMotorolaに比べ、Vibeシリーズはユニークで実験的な機能も搭載し、ラインアップもミドルレンジ以下が充実しているなど、PCと同じようにカバー範囲が広い。
Lenovoは、日本市場におけるスマートフォン投入についてキャリアとの交渉が進んでいることを認めたものの、実際の参入にはまだ時間がかかりそうだ。MVNO経由や自社でSIMロックフリーデバイスとして販売する可能性は否定しており、現状では大手キャリアとの連携を模索している。これもMotorola単体では成し遂げられなかった可能性が高く、Lenovo買収による副次効果の1つといえる。なお、日本で投入するモデルについては、Motorolaベースの製品になると予想する関係者が多い。ただ、それがMoto 360なのかスマートフォンかは現時点で不明だ。
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