ティム・クックCEOは、Apple TVを「テレビの未来」と呼んで紹介した。実際、Siriと対話しながら見たい番組を探し出していく様子は未来を感じさせるものだった。
数年前にも韓国メーカーを中心にテレビに音声認識機能を搭載するブームがあったが、使われているという話をあまり聞かない。実際に発表会のデモでも失敗が多いし、テレビに向かって単語単位で命令をするというスタイルは見ていて果たして本当に便利なのか疑問に思う側面もあった。
だが、手元のリモコンに、まるで人間のアシスタントに語りかけるような自然な言葉で話かけられるSiriとの対話型は実際に試してみても便利そうに感じた。
スペシャルイベント後の体験コーナーでは英語で「ドキュメンタリー映画の一覧を見せて」と語りかけると、まずはドキュメンタリー映画の一覧が表示され、ここで出演者の名前などをあげれば絞り込めるのは分かっていたが、ちょっと意地悪をして「食べ物関係のものだけに絞り込み」と言ってみたが、ちゃんと「スーパーサイズミー」や「FOOD Inc.」、「二郎は鮨の夢を見る」といった映画が絞り込まれて表示された。
登場人物による絞り込みでは、ドラマのワンシーンにカメオ出演しただけの俳優などでも検索ができた。ただ、これはSiriが賢いというよりは、iTunes Storeの映画情報、テレビ番組情報がしっかりしているからだろう(忘れてしまいがちだが、アップルは米国ではテレビ番組も売っている。日本ではiPhoneの人気がこれだけ高いにも関わらず、iTunes Storeはテレビ番組を扱っていないのが残念)。
日本で同様の検索ができるかは、Siriの能力以上に、販売しているコンテンツの付随情報がどれだけ充実していくかにも左右されるだろう。
Apple TVのアプリとしては、すでに紹介したゲーム、Crossy Roadのほか、リズムにあわせてボールを打つBEAT SPORTSというゲームが紹介された。どちらも、アップルは専用ゲーム機のようなリアルな3Dグラフィックス路線ではなく、もう少しカジュアルな路線を狙っていくようだ。
このため、実際にどの程度のグラフィックスを扱えるかは未知数の部分があるが、搭載プロセッサがiPhone 6と同じA8であることや、METALという技術を使ったiPhone用ゲームのデモを見る限り、実は性能的にはかなりリアルな3Dグラフィックスも扱えるはずだ。
もっとも、アップル自身が企業ブランドとして、過激なコンテンツや暴力的なコンテンツを積極的に推していないこともあり、こうした表現を控えているとも考えられるし、リアルグラフィックスのコンテンツを見せると、ハードコアゲーマー向けの製品というイメージがついてしまいがちなので、それを避けようという狙いもあるのかもしれない。
そもそもアップルはApple TVをゲーム機として売り出そうとしているわけではないようで、ゲームだけではなくまさに「テレビの未来」を感じさせるアプリも紹介された。
MLB.comが出す予定のメジャーリーグ野球を楽しむアプリは、野球中継中にボールのコースなどの詳細情報や選手の詳細情報を表示するだけでなく、ほかのチームの対戦のスコアをリアルタイムで表示したり、気になる試合が2つあれば、2画面並べて見るといったことも可能になっている。同社ではまもなくホッケー版のアプリもリリースするようで、スポーツ観戦の未来を垣間見たような感じだ。
一方、まったく別の形で未来のリビングルームの姿を提示してくれたのが一流ブランドのファッションアイテムをタイムセールで手ごろに購入できるショッピングサービス、GILTのアプリだ。Siri Remoteの上についた滑らかなタッチコントローラーの上で指を滑らせて、好みの商品の詳細を見るというスタイルには未来のテレビショッピングのあるべき姿を感じさせる。
もちろん、同様のことは、機能的には他社のゲーム機でもできるだろう。しかし、ゲーム機という商品のキャラクター付けであったり、ゲームプレイに最適化されたコントローラーが前提では、なかなかこうしたアプリは誕生しにくい。
特定の用途向けにキャラ付けせず、コントローラーもニュートラルというアップルらしいデザインのおかげで、Apple TVは、リビングルームでのテレビの役割により大きな可能性の広がりをもたらしてくれそうだ。
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