こうしたWindows 10への強い誘導策について、「まだWindows 7/8.1のままでいたいのに、なぜMicrosoftは嫌がらせのようなことをするのか」という声もネット上では見かける。確かにかなり強引な手段ではあるものの、MicrosoftにはMicrosoftの事情があり、その目標に向けて動いているのだ。
本連載の「Windows 10よりSurface Bookが気になった2015年」と「2016年のMicrosoftで注目したい5大トピック」という記事でも紹介しているが、Microsoftは過去に「Windows XPのサポート終了」にまつわる騒動でパートナーやユーザーを巻き込んで散々苦労した経験があり、その轍を踏まないように新環境へユーザーの移行を急いでいるとみられる。
2016年1月12日にはWindows 8とInternet Explorer旧バージョンのサポートが終了して話題となったが、その影響はまだ軽微で、企業ユーザーの一部がIEの互換性問題で苦労しているという状態にとどまっている。
恐らく、今後1〜2年以内に顕在化してくるのは、本連載でも度々触れている「Windows 7の延長サポート終了」だろう。サポート期限である2020年まではまだ余裕があるが、Windows XPのサポート期間が終了しても同OSのシェアが一定数以上を維持している現状を考えれば、今後1〜2年以内に移行のめどをつけたいと考えても不思議ではない。
旧OSからのユーザーの引き剥がしの取り組みは、このWindows Updateでの更新プログラム以外にもみられる。本連載の「次世代プロセッサはWindows 10のみ対応、SkylakeのWindows 7/8.1サポート終了は2017年7月という衝撃」という記事でも触れたが、Microsoftは今後登場する新しいアーキテクチャやプロセッサを採用したPC、タブレット、スマートフォンにおいて、Windows 10以外のOSをサポートしない予定だという。
また、現在市販されているIntelの第6世代Coreプロセッサ(Skylake)を搭載したPCは、Windows 7/8.1において2017年7月17日まではサポート(つまりアップデートや修正)が提供されるが、これ以降は致命的なセキュリティパッチなど、重要な更新を除いてアップデートの提供が終了するという。つまり、Windows 7やWindows 8.1本来の延長サポート終了を待たずに、新しいアーキテクチャのPC製品ではこれら旧OSのサポートが(事実上)終了するので注意が必要だ。
まとめると、Windows 7/8.1のような旧OSをユーザーに使い続けられることを防ぐのが狙いであり、これを防ぐためにWindows 10へのアップグレード更新プログラムを(ほぼ)全ユーザーに提供しているわけだ。
しかし前述のように「まだしばらくは旧マシンとその環境で使い続けたい」と考え、(サポートが終了して)お蔵入りになるその日が来るまで活用したいというユーザーニーズも存在する。これらを切り分けるのは難しいが、後にWindows 7の延長サポート終了で混乱を招き、その負担を強いられるのはMicrosoft自身であり、一連のWindows 10推進策は批判を受けつつも苦汁の判断なのだろう。
ユーザーとしては、こうしたWindows 10への誘導策を正しく理解したうえで、Windows Updateの設定を見直したり、購入すべきPCのスペックを選んだりする必要がある。Microsoftの思惑は別として、無料アップグレード期間やサポート期間が継続しているうちは、PCを自由に使いたいところだ。
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