しかし、Insider Hubを通じて返されるフィードバックはユーザー層が偏っているのもまた現状だ。特に日本のユーザーからのフィードバックが少ないことを日本マイクロソフトでは気にしており、何とか国内でもWindows Insider Programを盛り上げていきたいと考えている。そこで開催されるのが、冒頭でも紹介した「Windows Insider Meetup in Japan」というわけだ。
内容的には担当者によるWindows Insider Programの解説や同社エバンジェリストによるBuild 2016のレポートなど、若干堅めの印象もあるが、Windows Insider Program参加者によるLightning Talkでの「自分の考えるWindows」「Microsoftにこれだけは言いたい」といったアピール大会や、日本マイクロソフトのオフィスツアー(東京本社のみ)、そして懇親会など、ユーザー間やMicrosoftとのネットワーキングを重視した構成になっている。
この手の製品でユーザー主体のイベントが開催されることはよくあるが、実際に開発側が環境を用意して主催するという例はありそうであまりなく、面白い試みと言える。さらに好評ならば、2回目以降が開催される可能性もあるので、やはりフィードバックとして日本マイクロソフトに意見を届けてほしい。
ただ先ほども説明したように、日本ではWindows Insider Programの参加者数に比べてフィードバックが少ないというのは、「あまり意見を積極的に言ってこない」というユーザーの性質だけでなく、「どうせフィードバックを返してもWindows開発チームにはあまり重視されない」という諦め、あるいは思い込みの部分が大きいのかもしれない。
しかし実際には、ユーザーから送られてきたフィードバックには全て目を通しており、実際に最新ビルドで修正として反映されたものも少なくない。以下はWindows Insider Programからのフィードバックを通じて、実際に修正が行われたサンプルの一部だ。
(1)Build 10576で最初の日本語入力操作において、3〜5文字ほど入力すると30秒ほど操作を受け付けなくなる
→ 修正済み
(2)「Get Started」というアプリケーション名は日本人にはなじまないし、何をしてくれるのか分からない
→ 「はじめに」に変更
(3)Cortanaで「やぁ」などのあいさつ語にも答えてほしい
→ 答えられるように修正
筆者の印象として、Windows 8の世代でソフトウェアならびにハードウェアの仕様をガチガチに決めてユーザーやOEMに一方的に強制する印象の強かったMicrosoftだが、Windows 8.1の世代では態度が軟化して、ユーザー側のニーズの積極的なくみ取りや、より幅広いベンダーと協調しての市場拡大策を打ち出すようになった。
Windows 10の世代ではこれがより顕著となり、Windows Insider Programを通じて一般ユーザーをもWindowsの開発そのものに参加させようと考えている。
旧世代ハードウェアのWindows 10への移行に関する諸問題では、まだいろいろとMicrosoftにネガティブな印象を持つユーザーも少なくないと思われるが、市場の変化や時間の経過とともに、両者の溝は徐々に埋まっていくものと考える。Windows Insider Programはその一助となるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.