最新のOfficeにおけるもう1つのトレンドが、インタフェースの多様化だ。従来までのOfficeは専用アプリケーションが必要であったり、あるいはOWA(Office Web Access)のようなWebインタフェースや専用ポータルを経由したりと、サービスに応じて窓口が決まっていた印象がある。
ただ、Office 365の時代になり、ユーザーが利用するデバイスもデスクトップPCやノートPCを中心としたものから、タブレットやスマートフォンにまで広がっていくと、必ずしも「窓口」としては最適ではないという意見が増えつつある。
リュー氏によれば、モバイルアプリという形態はプラットフォーム依存という問題があり、Webブラウザは小さい画面での操作に不向きでモバイルに最適化されていないという。そこで選択肢の1つとして考えられるのが「Conversation as a Platform」(会話プラットフォーム)のキーワードで示されるような対話型インタフェースとなる。
対話型インタフェースはSkypeのような音声や動画のほか、SMSのようにテキストベースのものまでさまざまだ。ただ、自然言語を使って必要な情報を適時引き出したり、逐次確認していくスタイルは、モバイル端末の利用が今後さらに広がっていく中で、Office活用の新しいスタイルとなるかもしれない。
こうしたチャットのような仕組みは、チームの作業においても重要となる。Build 2016で紹介されたのは「Office 365 Group」と「Office Connector」の仕組みだ。Office 365 Groupは、チームメンバーの間で気になるトピックや問題を適時アップロードしていく連絡掲示板のような仕組みだが、このグループごとに整理されたInboxには各個人の投稿が表示されていく。
ここにOffice Connectorの仕組みを使うことで、テキストや画像だけでなく、さまざまな外部アプリケーションのデータを埋め込める。例えば壇上のデモでは、顧客のクレーム処理を行うクラウドサービス「Zendesk」のConnectorが紹介され、Groupの投稿画面からやりとりされているデータをプレビューしつつ、必要に応じてZendeskの該当データへと直接アクセスできる仕組みが披露された。
Connectorはサードパーティーが自由に開発できるようになっており、使い方によってはOffice 365ユーザーに自社のサービスをさらに活用してもらうことにつながるかもしれない。
今回はOfficeに新しく追加された機能の一部を紹介しただけだが、Office 365の時代になってクラウド対応が行われたことによって、Officeは外部開発者にとっての新しいアプリケーション開発プラットフォームとなり、自社サービスのプロモーションの場へと変ぼうしつつある。
またプラットフォームをWindows 10に限定していないのも特徴だ。Microsoftがクラウドを中心としたクロスプラットフォーム戦略を推進するうえで、Officeは最前線基地になっているとも言える。ある意味で、今のMicrosoftを最も象徴しているのが「Office」ではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.