Microsoftは、同社が推進するMR(Mixed Reality:複合現実)、AR(拡張現実)およびVR(仮想現実)の戦略を実現できるデバイスとして、「Microsoft HoloLens」と「Windows Mixed Reality」対応HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の2種類を用意している。
ここで「Windows Mixed Realityとは何?」と思われたかもしれないが、HoloLensを支えるプラットフォームの「Windows Holographic」を改名したものだ。Windows Holographicは、2016年6月に台湾の台北市で開催されたCMPUTEX TAIPEI 2016で同社が発表したMR対応プラットフォームで、3月1日(現地時間)に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたゲーム開発者向けイベント「Game Developers Conference(GDC)」に合わせて改名された。
HoloLensはシースルー型のヘッドセットを装着すると周囲の風景に3Dグラフィックスが重ねて表示され、「スタンドアロン」で動作可能な点が特徴だ。つまり、Windows PCの機能をヘッドセットに内蔵している。いわゆるオールインワン型の製品で専用のカスタムチップなども搭載しているため、現状では30万円を超える価格で、完全に開発者向けのデバイスとなっている。
一方のWindows Mixed Reality対応HMDとは、各種センサーとディスプレイ(現状でシースルー型ではなく密閉型)を組み合わせたVR HMDに近い装置であり、Windows PCと接続して使用する。PCのパワーを利用し、単体で動作しない代わりに、300ドル程度から一般ユーザーが購入できる手軽さが特徴だ。こちらはまだ市場に出ておらず、2017年内の発売を予定している。
MicrosoftはWindows Mixed Realityの仕組みをOEMメーカーに提供して、サードパーティーによるエコシステムの構築を目指している。Microsoft自身がファーストパーティーとして投入しているHoloLensとは、その点が大きく違う。
いずれはHoloLensと同様の高機能なWindows Mixed Reality対応製品もサードパーティーから提供される日が来るかもしれないが、今のところは、主に一般コンシューマーを対象にMRの世界を広く体験してもらうのがWindows Mixed Reality対応HMDの狙いだ。
MicrosoftはGDCの開催に合わせて、Acer製のHMDを含むWindows Mixed Realityのアプリ開発者向けキットを発表している。HoloLensの開発者として知られるアレックス・キップマン氏名義で投稿された公式ブログエントリによれば、2017年3月中にも同キットの提供を開始するという。
対応アプリの開発においては、HoloLensと同様に開発ツールのエミュレーション上で動作を確認することも可能だが、実際にHMDのハードウェアを用いることで、より現実的なテストが行える。このAcer製HMDは、90Hzのリフレッシュレートに対応した1440×1440ピクセル解像度のディスプレイ2面(片目に1面ずつ)に、3.5mmのイヤフォンジャックによる音声の入出力、HDMI 2.0とUSB 3.0のPC接続インタフェースを持つ。
アプリ開発そのものは、Windows 10 Insider PreviewとSDKを組み合わせることで行える。MicrosoftはこうしたWindows Mixed Reality対応HMDが市場投入される2017年後半に向けて、Windows 10のアップデートで機能を強化し、Windows Holographicの仕組みを利用可能にする計画だ。2017年後半に登場するであろうMR対応のアプリや新サービスに期待したい。
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