最後に消費電力を確かめよう。CINEBCNCH R20のRyzen 7 3700Xのみ異様に低いが、これは何か問題が生じた可能性も考えられるので、その他で見ていきたい。アイドル時は依然Ryzenが高い値となるが、これはマザーボードがCore i9-9900Kのものと異なる点や、チップセットにファンが搭載され、LEDも派手に光るマザーボードというあたりを差し引く必要があるかもしれない。
比較的CPU依存の少ない3Dベンチマークに限れば、Ryzen 7 3700X(TDP 65W)はCore i9-9900K(95W)に近い値になる。Ryzen 9 3900Xはコア数も多くTDPが105Wなので高めの値だが、テストによってはRyzen 7 2700X(105W)+αといったところだ。CINEBNECH R20のようにCPUのみに負荷がかかるテストでは、同じTDP 105WのRyzen 9 3900Xと7 2700Xでも大きな差が付いている。50W近い差があるので、電源と冷却は一つ上を見積もった方がよいかもしれない。
PCMark 10のEssentialsテストは、珍しくRyzen 7 3700Xが2番めに大きな消費電力で、Ryzen 7 2700Xを上回った。Core i9-9900Kとの差も大きい。このように、第3世代Ryzenは消費電力値で見れば第2世代とそこまで違いがない。ワットパフォーマンスで見れば向上しているのでそこはよいとして、電源と冷却はダウングレードしない方がベターだ。Ryzen 9 3900Xを選ぶならばむしろ一つ上を狙うべきだろう。
第3世代Ryzenは、ライバルとの差を一気に詰めた。同じコア数の場合にコストメリット、その上のコア数のモデルなど、幅広いラインアップを用意し、魅力を増したことは確かだ。現時点では(主にRadeon側ではないかと思われる)安定性に不安のあるシーンもあった。しばらくはファームウェアやドライバの更新情報に敏感になっておく必要があるだろう。チューニングも次第に進んでいくものと思われる。
扱いやすいのはRyzen 7 3700Xだろうか。スコアもCore i9-9900Kと互角で、ゲームプレイには12コアはやや過剰と思えるフシもあるためだ。ただ、ゲーム実況などゲーム+αをするならRyzen 9 3900Xの余裕も魅力だ。これまでThreadripperを必要とした用途を、メインストリームプラットフォームで実現できるところはメリットがある。
ただし、コスト的には微妙なところで、まずRyzen 9 3900Xは決して安価ではないし、AMD X570マザーボードもまだ高価格帯だ。それでも、Threadripper環境を整えるよりはコストパフォーマンスがよいだろう。
Ryzen登場後、第2世代〜第3世代となり、直近ではDIY市場でのシェアがIntelと拮抗(きっこう)しているようだ。実際にベンチマークをしてみるとマルチスレッド性能では12コアを投入したRyzenがメインストリームプラットフォームではリードしている。ゲームに関してはまだ明確な性能差が見られなかったが、互角ということはAMD Ryzen、Intel Coreどちらを選んでも概ね同じパフォーマンスが得られるという点で選びやすい。その上で、将来性という点で、今見えている範囲ではRyzenの方に勢いがある。PCIe Gen4というリードもある。AMD Ryzenの本格的な攻勢がはじまったといえるだろう。
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