続いて、ProArtシリーズのマザーボードでPCを組み立てて、そのパフォーマンスをチェックしていく。
今回は「CPUパワーを使って写真のRAW現像をそこそこサクッと行いたいけれど、機材を購入するまとまった予算を確保しづらい……」というシチュエーションを想定して、ProArt B660-CREATOR D4を主軸に据えて「まずマザボとCPUを強くして、グラボはゆくゆく強くする」感じで、手持ちの機材を交えて組み立ててみることにした。マザーボード以外の主なスペックは以下の通りだ。
比較対象のPCはどうしようか迷ったのだが、先述の想定シチュエーションにあるようなユーザー(筆者への相談者)は意外と“普通の”ノートPCを使っている人が多い。そのことを鑑みて、「ステップアップの一環としてデスクトップPCを組む」という想定で、第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)を搭載する自前のノートPCと比べてみることにした。具体的なスペックは以下の通りである。
まず、3Dレンダリングを通してCPUの性能を確認するベンチマークテストアプリ「CINEBENCH R23」を実行してみよう。
CINEBENCH R23では、CPUのマルチコア(全コア)を使った際のパフォーマンスと、シングルコア(1コア)を使った際のパフォーマンスの両方を計測できる。当然、ポイント(スコア)は高ければ高いほどCPUの演算能力は高いということになる。結果は以下の通りだ。
マルチコアでは約4倍、シングルコアでは2倍弱のスコア差となった。
第11世代以降のCoreプロセッサは、それ以前の世代と比べてCPUの処理パフォーマンスが大幅に向上した。特にパフォーマンス重視の「Pコア(パフォーマンスコア)」と処理効率(消費電力)重視の「Eコア(効率コア)」を併載するようになった第12世代Coreプロセッサ(※9)では、特にマルチコアの処理パフォーマンスの“上乗せ”効果が大きい。
もっというと、デスクトップPC向けCPUは、ノートPC向けCPUよりも最大クロックを高めやすいため、処理パフォーマンスも向上しやすい。その分だけ消費電力は高くなるが、処理も早く終わるため、場合によってはトータルの消費電力は抑えられる可能性もある。
最近のノートPC用CPUは十分に高速で、ある程度のクリエイティブな作業はこなせる。とはいえ、「Eコアの搭載効果」と「最大クロックの高めやすさ」が相まって、今回はCore i7-12700Kを搭載する自作PCが“圧勝”となったわけである。
(※9)デスクトップPC向け製品では、「Core i5」以下はEコアを省略している(Pコアのみ搭載)
「CPUはさておき、総合的な性能はどうなんだ?」と思う人もいるだろう。そこで、PCの性能を「日常」「仕事の生産性」「デジタルコンテンツ作成」などの観点からチェックできる総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」も合わせてテストしてみた。結果は以下の通りだ。
総合スコアにおいて、自作PCは約1.6倍の数値を記録した。今回の主題に絡むDigital Content Creationのスコアは2倍超だ。
“総合”ベンチマークテストだけあって、PCMark 10の各種スコアはCPUだけでなくメインメモリ、グラフィックスカード(GPU)やストレージ(HDD/SSD)の性能にも左右される。ノートPCの場合、できるパワーアップはせいぜいメインメモリやストレージの増設/換装ぐらいで、設計によってはメインメモリやストレージの増設/換装ができない。今回比較で利用しているノートPCも、メインメモリの増設/換装は不可能だ。
それに対して、自作PCであればCPUはもちろんグラフィックスカード、メインメモリ、ストレージなど必要なスペックに応じてパーツを増設/換装しやすい。今回テストで使っているProArt B660-CREATOR D4や、合わせて紹介しているProArt Z690-CREATOR WIFIはCPU直結のPCI Express 5.0スロットを備えているため、より高速なグラフィックスカードが出てきた場合も容易に対応できる。
しょっちゅう移動しながら作業する場合はノートPCが優位な場合もあるが、ある意味での「力作業」を腰を据えて行うのであれば、長い目で見ると自作したデスクトップPCを使った方が将来性の面でも有利になることもある。
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