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集え! HHKBユーザー! PFUが6回目の「HHKBユーザーミートアップ」を開催(4/5 ページ)

» 2022年12月13日 15時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

実物に触れられないことでキーボード選びに変化が?

 2つ目のトークセッションは「キーボード界の今とこれから」。登壇者は、自作キーボードショップ「TALPKEYBOARD」を運営する池田洋介さん、VTuberによるニュース動画チャンネル「ほぼ週刊キーボードニュース」を運営するびあっこさん、自作キーボードエンスージアストのぺかそさんの3人。モデレーターは「ほげ技研」の小山哲志氏が務めた。

キーボード界の今とこれから 左から小山哲志氏(モデレーター)、池田洋介さん、びあっこさん、ぺかそさん

 

 「この1年のキーボードライフ」について聞かれた3人は、「円安や社会情勢のため、『販売したい』『紹介したい』ものを販売したり紹介したりできないジレンマに襲われる一方で、キーボード自体は進化を見せていると感じた」(池田さん)、「コロナ禍で滞っていたリリース済みキーボードが届き始めたので、組み立てを楽しんでいる」(びあっこさん)、「他の人の作品を見て感心することが多かった。また安くても品質の良いキースイッチが登場するなど、キーボード界の進歩を感じていた」(ぺかそさん)と語った。

 コロナ禍で自作キーボード界にどのような影響があったかを問われると、池田さんは「スピードは緩むどころか、把握できないほどのスピードで新製品が出てきている。しかし、それが手元に届かないのがコロナの影響だなと感じた」と語った。

 それに対して、ぺかそさんは「物が届かなければ、人は工夫するものだ」という。「コロナ禍になってから、私とびあっこさんが出演した『マツコの知らない世界』を見て、キーボードの世界に入ってきた人は、(キーボードに関する)リアルな交流の場を知らず、SNSでしか交流できない。だからこそ、私たちの思いもしなかったような“映える”キーボードを作る。見た目の良さに影響されて、新しい自作キーボードユーザーが生まれている。コロナの作用で新しいものが生まれてきたと感じた」と解説した。

3人 それぞれの立場から「キーボード界」の現状を語る3人

 びあっこさんは、コロナ禍によって実物に触れられないことが、自作キーボードの“作り”そのものに影響を与えたと考えているという。「打鍵感(打ち心地)や触り心地は、実際に触らないと分からない。(それを受けて)先鋭的だと感じるのは、打鍵音(キーを打つ音)にフォーカスする動きが出てきたところ。音のチューニングが施されているキーボードが出てきている。これは、動画でも伝わる所で、コロナの影響の1つと考えている」(びあっこさん)

 実際に触れない状況において、池田さんはキースイッチの“感触”をレビューした上で定量化している米国のブログを参考にしているという。「(そのブログは)自分なりに項目を立てて、それぞれを数値化している。単一の人が継続してレビューしているので、読者は自分の持っているスイッチの数値と、そのブロガーのレビューしている(読者にとって)未知のスイッチの数値から、相関的にイメージしやすいというメリットがある」と解説する。

「HHKBのポジションは?」と小山氏から尋ねられたぺがそさんは、「(以前は)『東プレ(Realforce)やHHKBに近い打鍵感のやつはどれですか?』と聞かれるのが定番だった」とした上で、「最近はこのような聞かれなくなった。音や感触なく押し下げられるリニアタイプ(のスイッチ)が全盛ということが関係しているのかもしれない」と見解を示し、次のように続けた。

 「HHKBはスコーンと押し下げられるタクタイル(スイッチ)。でも今は、新しく出てくるキースイッチの8〜9割がリニアタイプのスイッチになっている。リニアスイッチは、キーキャップやキーボードケースの作り“そのもの”がダイレクトに打鍵音に影響することが特徴。びあっこさんが先ほど話していたように、打鍵音に重きが置かれていることからも、リニア全盛時代に入っていると感じている」

ぺがそさん 昨今のキーボードの情勢を語るぺがそさん

 「欲しいキーボード」について聞かれると、ぺがそさんは「7色に光る、ディスプレイが付いているといった“出力”装置は求めていない。あくまでも、(キーボードは)“入力”装置であることを徹底してほしい」と語る一方で、「休憩時にキーボードを見てニヤッとしたいので、見た目の良さも追求してほしい」ともつけ加えた。

 同じ質問に対してびあっこさんは「餅は餅屋だと考えているので、キーボードにポインティングデバイスを搭載することは求めていない。ただ、一緒にすることで互いの良さを引き出せるのなら別。ちなみに、キーボード自体に何かを求めているというわけではなくて、私にとってキーボードはプレイグラウンド(遊び場)であって、不満があるところを直して、改良して、それを実感するという体験を得たいがゆえに自作をしている。風呂に入っていても『あー、あのスイッチを今度は使ってみるか!』などと考えるくらい、自分にとっては面白いものなんです」と答えた。

びあっこさん 「キーボードはプレイグラウンド」と語るびあっこさんは、終始楽しそうだった

 池田さんは「(キーボードには)仕事用、携帯用、家でまったりした時間を過ごす用の3パターンがある。年齢的に指が痛くなりやすいので、素早くスムーズに打てるだけでなく、柔らかめのものを仕事用に欲しいと考えている。携帯用には荷物を減らすためにポインティングデバイス搭載のものがいい。家用にはインテリアにもなりそうなものがいい。万年筆だと軸の素材で遊び心を満たすというのがあるが、ああいう異素材を使うことでインテリアのように愛でられると思うので、白いものや木材といった素材を使ったものがあったらうれしい」と述べた。

池田さん キーボードの「使い分け」を説明する池田さん(右)

 最後に「来年のキーボードはどうなるか?」という質問が投げられた。

 ぺがそさんは、「今までは、メーカー側がトレンドを決めていた」と感想を述べつつ、「2022年は個性の強いキーボードが生まれてきているので、来年(2023年)は各自の“内なるもの”がもっと爆発して、さまざまなカラーリングの個性の強いものが出てくるのではないか。最近ではハンダ付けが不要な自作キーボードキットやカスタマイズキットもあるが、その流れを加速してほしい」と要望も語っていた。

 びあっこさんは「働き方の多様化により、ポインティングデバイス一体型が増えてくるのではないかと思う」と、まず“一般論”としての未来を予測する。「個人的には、カスタマイズが簡単になってきているので、スニーカーコレクションや万年筆カスタマイズのように、キーボード遊びが文化として広まってくれたら面白いと考えてる」と願望を交えて語った。

 「自作キーボード界は、これまで『オープンソース』と『ファブラボ』的な作り方という文脈できていたが、ここ最近変化が見られる」と語るのは池田さんだ。「(最近は)中国の工場の手を借りつつ、クラウドファンディングも使って、個人発の自作キーボードコミュニティからメーカー製に近いキーボードが生まれてきている。性能の良い3Dプリンターも増えてきて、ものづくりのハードルが下がってきているのだと思う。いろいろなキーボードが作られるようになると思うし、コロナが収まってオフラインでのミーティングも行われ、面白いことになるのではないかと考えている」と予測していた。

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