発売に先駆けて、Radeon PRO W7700を試す機会を得た。幾つかのベンチマークテストを実行してみたので、その結果を見ていこう。
今回のテストは、Intel製のPCキット「Intel NUC 13 Extreme Kit」(開発コード名:Raptor Canyon)の上位モデル(NUC13RNGi9)を使って行った。主なスペックは以下の通りで、PCI Expressスロットにおける「Resizable BAR」(AMDでいう「Smart Access Memory」)は有効化している。
グラフィックスドライバーは「AMD Software: PRO Edition」のβ版(バージョン23.30.01.04)を利用している。
ワークステーション向け製品ということで、まずはプロフェッショナルユースを想定したテストをいくつかやってみよう。
まず、オープンソースの2D/3Dアニメーション作成ツール「Blender」をベースとするベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」を試した。今回はこのアプリを使ってテスト機のCPU(Core i9-13900K)と本GPUにおける1分間あたりのサンプル(オブジェクト)生成数を比べてみる。結果は以下の通りだ。
スコア換算した場合の性能は、先代のハイエンド製品であるRadeon PRO W6800を少し上回っている。ピーク時の消費電力が50W削減できていることを考えると、いわゆる「ワッパ」は確実に良くなっている。
昨今は、機械学習データを用いた推論AI(人工知能)が広く普及している。Radeon PRO W7700のCUには「AIアクセラレーター」が搭載されており、推論処理を高速化可能だ。
そこで、ULのベンチマークスイート「Procyon(プロキオン)」から、推論AIのパフォーマンスをテストする「AI Inference Benchmark for Windows」を試してみる。このテストでも、GPU処理とCPU処理の“差”を見比べる。Windowsに備わるAPI(DirectML)を使った場合の総合スコアは以下の通りとなった。
整数演算はもちろんのこと、浮動小数点演算では大きな差が付いている。特にFP16演算における差は約18倍と大きい。推論ベースのAIを高速化する上では、一定の効果がありそうだ。
PCを使って動画の書き出しをする場合、GPUにハードウェアベースのデコーダー/エンコーダーが搭載されていると書き出し時にシステム全体へとかかる負荷を軽減できる他、所要時間も短縮できる。
スペックの紹介でも触れた通り、Radeon PRO W7700にはH.264/H.265/VP9/AV1のデコード/エンコードに対応するメディアエンジンが2基搭載されている。その実力をProcyonに収録されている「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。結果は以下の通りだ。
軽量テストでは、3つの動画を約20秒ずつに切り出し、約1分間の動画として書き出す。作業としては比較的単純なせいか、Radeon PRO W7700ではフルHDで実再生時間の3分の1程度、4Kで実再生時間程度で書き出しが完了した。
一方で、重量テストも、3つの動画を約1分間の動画として書き出すのは同様だが、エフェクトやフェード処理など、負荷の重い処理が加わっているため、エンコーダー(あるいはCPU/GPU)の処理能力が大きく問われる。2基のメディアアクセラレーターを搭載するRadeon PRO W7700であっても、フルHDで7分17秒9、4Kで43分52秒4かかってしまう。
しかし、相当に高速なエンコーダーがないと、4つのテストを合計して1時間(60分)以内で終えるのは難しい。商用動画の書き出しを“時短”したいなら、Radeon PRO W7700は良い選択肢の1つとなりそうだ。
本製品でゲームをプレイすることは開発目的でもない限りあまりなさそうだが、ゲームにおける3Dグラフィックスのパフォーマンスも気になる。そこで、ULの「3DMark」の主要なテストを実行した。結果は以下の通りだ。
単純な3Dグラフィックス性能は「Radeon RX 7800 XT」よりも少し低い程度だ。「ハイエンドの入り口」という位置付けであることを考えれば、十分だろう。
Radeon PRO W7700の強みは、ワッパの良さと、ECCメモリを搭載して999ドルの価格を実現したことにある。「ECCメモリ付きのグラフィックスカードを、できるだけ手頃に買いたい」あるいは「ワッパのいい、そこそこ強い業務用GPUが欲しい」という人は、Radeon PRO W7700をチェックしてみるといいだろう。
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