中国の3G市場を「オール ジャパン体制」でサポート――「日中モバイルブロードバンド合作推進会」発足

» 2009年05月12日 12時52分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo YRP研究開発推進協会事務局長の仲川史彦氏

 この1月、中国の通信事業者3社に3Gの免許が付与され、世界最大の携帯電話市場が本格的なモバイルブロードバンド時代に向かって動き始めた。

 これは、2001年にスタートした3Gインフラが普及し、すでにモバイルブロードバンドサービスが定着している日本市場にとっても大きなチャンスとなる。すでに日中の政府間では5月5日、鳩山邦夫総務相と李毅中工業情報化相が日中ICT協力の合意文書に調印。今後、中国で本格化する3Gと、ポスト3Gの技術開発で協力することで合意している。

 こうした協力を日中の企業間で行うことを目的に、中国移動通信聯合会(CMCA)とYRP研究開発推進協会(YRP)、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の3団体が設立したのが「日中モバイルブロードバンド合作推進会」だ。

 5月11日、都内で同団体の設立記念式典が開催され、YRP研究開発推進協会事務局長の仲川史彦氏が設立の経緯や目的について説明した。

モバイル関連企業の交流を促し、ビジネス連携を促進

 同団体の礎となった交流関係の始まりは、2001年にさかのぼる。YRP研究開発推進協会は、日本で3Gサービスがスタートした2001年、日中移動体通信流通フォーラムを設け、中国との連携と交流を進めてきた。2002年には、日中モバイルブロードバンド合作推進会の、中国側の母体となる中国移動通信聯合会との間で、研究や交流に関する覚書を締結し、以降、交流を続けてきた。

 1月7日、中国移動(China Mobile)にTD-SCDMA方式、中国電信(China Telecom)にCDMA2000方式、中国聯通(China Unicom)にW-CDMA方式の3G免許が付与されたことを受け、2月にYRP研究開発推進協会の会長を務める甕昭男氏が訪中。中国移動通信聯合会を訪問し、3G分野における日中間のビジネス連携支援を強化することで合意したという。

 そして5月5日、CMCAとYRP、MCFの3団体が中国で開催された官民ラウンドテーブルの席で日中モバイルブロードバンド合作推進会の設立同意書に署名し、団体が設立された。

 同団体は、日中両国の通信キャリアやコンテンツプロバイダ、サービス事業者の交流を促進し、両国の移動通信産業の継続的発展を図ることを目的に設立され、目的に賛同し、入会申し込みを行った法人や個人が会員になれる。

 2009年の活動目標については(1)総合カンファレンスの開催(2)テーマ別ワークショップの開催(3)ビジネスデスクの開設(4)調査・情報発信活動(5)中国で開催される大型カンファレンスへの出展、参加 を検討しているとし、活動を通じて日中間のビジネス連携や人材の育成、Win-Winのモバイルブロードバンドビジネス交流プラットフォームの構築を目指す。

 日中モバイルブロードバンド合作推進会で日本側の会長を務める、YRP研究開発推進協会 会長の甕昭男氏は、日本が先行する3Gのノウハウを生かして、中国の3Gサービスをサポートできるとし、「このタイミングで、このような協力体制ができたことはうれしい限り。中国のコアネットワークと直結したテスト環境を整備して、コンテンツやアプリケーションの開発をサポートしていきたいと考えており、中国関係機関の協力を得て日本にないTD-SCDMAのテスト環境の整備を図っていきたい」と、連携に関するビジョンを示した。

 中国側の代表を務める、中国移動通信聯合会 副会長兼秘書長の倪健中氏は、「(団体の設立は)歴史的に重要な事件。これまでの両国の協力で生まれた成果を礎に、新たなステップを踏み出したといえる」とコメント。来賓としてあいさつに立った総務省 総務審議官の寺粼明氏は「3Gの普及はブロードバンドコンテンツの普及がカギになる。推進会の活動には、できる限りの支援をしたいと考えている」と協力姿勢を明らかにするとともに、「日中間の協力がアジアを引っ張り、その結果としてグローバルマーケットを引っ張る形になるよう願っている」と、同団体の活動に期待を寄せた。

Photo 日中モバイルブロードバンド合作推進会で日本側の会長を務める、YRP研究開発推進協会 会長の甕昭男氏(左)。中国側の会長を務める中国移動通信聯合会 副会長兼秘書長の倪健中氏(中)。総務省 総務審議官の寺粼明氏(右)

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