XGP最大の特徴は“マイクロセル”と“上りの速さ”――ウィルコムの上村氏ワイヤレスジャパン2009 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2009年07月10日 15時58分 公開
[日高彰,ITmedia]
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XGP内蔵PCは時期尚早

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ITmedia 組み込み用途については、標準の内蔵型XGP通信モジュールのようなものを用意する予定はあるのでしょうか。また、例えばW-SIMのサイズの中に搭載することは可能なのでしょうか。

上村 現在はまだ、機器メーカー各社にXGPの性能を確かめていただいているという段階ですので、“こういう形状、このインタフェースでモジュールを作ろう”というところには至っていません。W-SIMに関しては、もともと電話機のモジュール化というところから始まったもので、電話ではないXGPでは、サイズの問題よりも商品としての基本的な考え方が少し変わってくるという点があります。SIMカードを採用したなら、それでW-SIMと同じような使い方もできるじゃないか、という考え方もあり、今はコンセプトを整理し直している段階です。

ITmedia 最近は3GやモバイルWiMAXの通信モジュールを内蔵したPCが流行り始めていますが、かつて「H"IN」(PHSモジュール内蔵PC)を手がけたウィルコムとして、XGP内蔵PCを推進する考えはないのでしょうか。

上村 PC内蔵型モジュールが必ずヒットするかというと、いまのところ当社ではそうは見ていません。例えば、Wi-Fiは登場からかなり時間が経っていますし、公衆無線LANサービスのエリアを除けばサービスは無料なので、搭載されていればそれなりにみんなが使いますし、入っていて困ることはない機能です。

 それに対して、H"INを発売した当時、そのPCを購入した人が全員サービスを契約したかというとそうではなく、何%かの人が使い、それ以外の人は一度も使うことはないといった状態でした。すると、何%かの需要のために多くのユーザーが通信モジュールのコストを負担するという問題が出てきます。また、少し後には、より高速なデータ通信カードが登場し、内蔵モジュールよりもカードのほうが速いという状況も生まれました。同じことが今回も起こらないとは限りませんので、我々は内蔵型を検討するのはそれを見極めたあとにしたいと考えています。

ITmedia 例えば、ドライバレベルでの切り替えでXGPとモバイルWiMAXのデュアルモードを実現するといったことは可能でしょうか。

上村 XGPとモバイルWiMAXは基礎技術が同じで周波数帯も近いですし、実際に我々もWiMAXの部品の流用は行っています。このように、ハードウェアのかなりの部分を共通化することは可能です。上のほうのレイヤーをソフトウェアで実現してしまえば、SDRに近いような仕組みで両方を使えるようになる。技術的にはそういった可能性がないわけではないと思っています。

ITmedia 現状、グローバル展開ではWiMAXに比べて限定されるXGPですが、先日、中国のTD産業協会、そしてYRP研究開発推進協会、XGPフォーラムの間で技術交流に関して覚書が締結されました。これはどんな意味を持つのでしょうか。中国には国策としてのTD-SCDMA方式があり、ようやく他方式の3Gも解禁されたばかりで、普通に考えると、そこにXGPが食い込んでいくのはかなり難しいのではないでしょうか。

上村 ウィルコムとして中国の状況をすべて理解しているわけではありませんし、いろいろな可能性があるので、“一概にこうなる”とはいえませんが、確かなことは、中国側は現在展開しているTD-SCDMAだけではなく、CDMAに代わりOFDMAを使った次世代のTDD通信技術を視野に入れています。そこでは、同じTDDとOFDMAを使う技術として、XGPと共通化していける部分があり、ある程度共通化が進めば、SDRによる切り替えもより簡単になります。少なくとも中国では、地域型の固定WiMAXを別にすれば、モバイル用にはWiMAXに周波数は割り当てられていませんし、その予定もない。それがなぜかまでは我々には分かりませんが、日本の国産技術であるXGPが貢献できる余地はあると考えています。

現行PHSのサービスは継続

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ITmedia 国内の現行PHSの今後についてはどのように考えているのでしょうか。

上村 データ通信については、XGPがある程度広がればそちらにシフトするので、PHSの仕組みの中で高速化に向けた技術開発に全力を傾けることはなくなるでしょう。基地局エントランス回線の光化といった強化も、XGPの展開を見据えて進めていくことになります。

ITmedia スペックアップ以外の部分で、現行PHSが今後進化していく可能性はあるのでしょうか。

上村 もちろん、利便性の向上やコスト削減といった面での取り組みは続けていくことになります。例えば、現時点でもPHSは携帯電話などに比べてラウンドトリップタイム(RTT)が短く、レスポンスが良いという特徴があり、そのような部分での安定性を高め、シンクライアントなどでの使いやすさを向上させる方向での開発は継続します。

 また、セル半径の大きなマクロセル基地局を開発し、郊外では複数の基地局を集約することでコストを下げていくという取り組みも行っています。これは、アダプティブアレイのような、開業当時にはなかった新技術で可能になったことです。PHSも以前に比べて性能が上がっており、現在では半径4〜5キロメートルのセルを作ることも技術的には可能になってきました。

ITmedia そもそも、現行PHSはいつまで続けていくことになるのでしょうか。

上村 現時点では、「あくまでPHSサービスは継続していく」というのが我々の方針です。世界を見渡すと、どこの国も音声はGSMで十分間に合っています。音声が問題なくサービスできているGSMをやめるという判断をする事業者がいないように、PHSについてもいまのところやめる理由が見つかりません。もちろんトータルで考えて、“すべてXGPにしたほうがいい”ということになれば、そうなる可能性はありますし、いつかは移行のタイミングが来るかもしれません。

 しかし、かつて携帯電話がPDCから3Gに切り替わったときのように、例えば「何年後の廃止を見越して移行を進めていく」といったことについては、いまのところはそうする理由はないと考えています。

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