広がるモバイル市場を前に、揺らぐウィンテルの牙城書籍「モバイル・コンピューティング」第一章(5)

» 2010年04月01日 00時10分 公開
[ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

この記事について

 この記事は、PHP研究所が発行する書籍「モバイル・コンピューティング」(著者:小林雅一)の第1章を、出版社の許可を得て転載したものです。


 インテル同様、広大なモバイル・コンピューティング市場を前に、たじろいでいるのがマイクロソフトだ。両者はかつて「ウィンテル連合」と呼ばれ、パソコン産業の両輪である「チップ」と「基本ソフト(OS:Operating System)」の市場をほとんど独占した。ここで「ウィンテル(Wintel)」とは、マイクロソフト製OSの「ウィンドウズ(Windows)」と「インテル(Intel)」の2つの名称を組み合わせた、一種のニックネームである。両者の緊密な連携の下、パソコン産業の成長期から今日に至るまで、巷で販売されるパソコンの大多数には、ウィンドウズとインテル製チップが搭載されてきた。その圧倒的な市場占有力から、ウィンテルはIT業界において様々な批判や反感の対象となるほどだった。

 しかし、ここに来て、チップ同様、OS市場にも地殻変動が起きつつある。新たなモバイル・コンピューティング市場では、マイクロソフトの影が薄くなっているのだ。たとえばスマートフォン用OSでは、第1位の「Symbian」から第3位の「iPhone OS」までの合計で、市場全体の80%近くのシェアを占める。これに対しマイクロソフトの「Windows Mobile」のシェアは第4位の10%程度に過ぎず、しかも後発のグーグル「Android」に追い上げられている。

 スマートフォン市場でマイクロソフトOSが出遅れた最大の理由は、そのデザインにある。Windows MobileのUI(ユーザー・インタフェース)は、元々パソコン向けに開発されたWindowsを携帯端末向けに焼き直した感がある。つまり、キーボード、マウス、そしてパソコン用の大型ディスプレイを想定して開発されたGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を、それらの周辺装置を持たないスマートフォンへと強引に移植したので、使いにくいのだ。

 こうした批判を浴びたマイクロソフトは、「過去のソフトウェア資産を継承できるのは、Windows搭載製品のみ」と消費者に訴える。しかし、モバイル製品では、ソフト資産の継承はセールス・ポイントにならない。たとえばスマートフォン上で、マイクロソフトの「Excel」や「Word」を駆使するケースは想像しがたいからだ。むしろ、そうしたデスクトップ・コンピューティングとは異なる、全く新しい種類の情報処理が実行されるようになるだろう。

 つまり「デスクトップ(パソコン)」から「モバイル」へとコンピューティング・スタイルが断絶的な変化を遂げる過程で、過去からの継承性は意味を持たなくなる。インテルと同じくマイクロソフトも、過去の遺産にしがみつくよりは、これからのモバイル市場の成長に合わせて、自らを改革していく必要性に迫られているのだ。次の第2章では、そうしたモバイル向けの新しいコンピューティングを、「ユーザー・インタフェース(UI)」の観点から詳しく見ていこう(第一章 完)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月23日 更新
  1. キャリアショップや家電量販店よりも厳しい現実――街中の「併売店」の“今”を探る (2026年09月21日)
  2. 富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは? (2026年09月22日)
  3. 月40GBになった「ahamo」はどれだけお得? 他社中容量プランと比較、「大盛り」に意外な落とし穴も (2026年09月21日)
  4. 「iPhone 18 Pro」で“Face ID認証できない”問題、Appleが対処法を案内 やはり「画面フィルム」に言及 (2026年09月21日)
  5. BeRealの次は韓国発のVlogアプリ「setlog」がブームに? Z世代の7割超が使う理由と「タイムリミットに追われない」クローズドな魅力 (2026年09月22日)
  6. 「ウエルシア」でお得に買い物する方法 アプリ設定だけで「Vポイント」「WAON POINT」の二重取り【2026年9月版】 (2026年09月22日)
  7. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  8. 「マイナポータルアプリ」が「マイナアプリ」へ刷新されて何が変わった? メリットや利用方法を解説 (2026年09月20日)
  9. 出そろった「iPhone 18 Pro」の価格を4キャリアで比較 ソフトバンクが衝撃の安さ、楽天モバイルが異例の施策 (2026年09月13日)
  10. 「全プラン2000円未満」で攻めるHISモバイル 30GB最安級値下げと「年4GB海外無料eSIM」の狙い (2026年09月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー