SIMなし、マルチデバイス対応の「土管」に勝算――UQ WiMAX 渡辺CTO

» 2010年05月14日 11時30分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 「我々は、俗に言う“土管屋”をやっている。土管屋は商売にならないというのが常識だが、あえてそれをやる」――5月13日にパシフィコ横浜で開幕した無線技術の展示会

「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2010」で、UQコミュニケーションズの渡辺文夫CTOが同社のモバイル通信サービス「UQ WiMAX」の特徴や展望を説明した。

電話もブロードバンドも「固定」から「無線」へ

photo 渡辺文夫CTO

 UQ WiMAXは2009年7月に商用サービスを開始。他の通信キャリアと同じくUSB接続型データ端末の提供も行っているが、同社がより注力しているのはWiMAX内蔵型PCの普及だという。現在、30機種以上のWiMAX内蔵PCが市場に投入されており、従来の固定ブロードバンド利用者層をターゲットに事業展開を図る。

 こうした戦略の背景には、ブロードバンドサービスが将来的に固定から無線に集約されるという見通しがある。携帯電話の登場により固定電話の利用頻度が下がったように、サービス品質や価格が一定の許容値を超えれば、どこでも利用できる利便性が勝り、ブロードバンドサービスも無線が主戦場になると渡辺氏はみる。


photophoto あらかじめWiMAXモジュールが内蔵されたPCで、PC購入者にサービスを訴求する(写真=左)。電話と同じように、ブロードバンドも将来的には無線が主流になるとみる(写真=右)

 また、WiMAXの利用を後押しする要素として、渡辺氏は契約の手軽さにも触れた。WiMAX内蔵PCでは、通信経由での回線契約(Over The Air)が可能で、キャリアのショップや量販店などにおもむく必要がない。購入したPCから契約用のサイトにアクセスし、UQ WiMAXやそのほかのMVNOから事業者を選択すれば、オンラインで契約の手続きが行え、インターネットを始められるという手軽さだ。渡辺氏によれば、「若い女性は家に工事業者がくるのがいやで無線を好む人もいる」という。

 さらに、WiMAXの業界団体であるWiMAX Forumでは、Over The Airによるアクティベートの標準化を含めた新しいデバイス認証プログラムを準備中で、2010年の第2四半期ごろに準備が完了する見込み。標準化が実現すれば、「Wi-Fiのような感覚でWiMAXが世界中で利用できるようになる」と渡辺氏は話す。

「LTEとの本質的な違いは、ユーザー管理の方式」

photo LTEとWiMAXとの重要な違いはネットワーク管理の方法にあると渡辺氏は説明する

 LTEなど次世代通信規格によって携帯電話のデータ通信も高速化が見込まれているが、携帯キャリアの提供するネットワークは「データ部分が速くなっても、ベースには音声ネットワークを抱えており、重いネットワークになる」と渡辺氏は主張する。また、デバイスやサービスを自社ブランドで囲い込む携帯キャリアの垂直モデルのビジネスが、Appleなど通信キャリアではないプレーヤーの勃興(ぼっこう)により「崩壊しつつある」とも話す。

 その中でUQ WiMAXは、「ピュアにインターネットに向けたネットワーク」としてオープンなサービスを目指すという。「我々は、俗に言う“土管屋”をやっている。土管屋では商売にならないというのが常識だが、あえてそれをやる。なぜならばネットの世界がそうなると信じているから。ネットの世界は1人が独占的にやることはできない世界。我々の価値は圧倒的な通信パフォーマンスをきっちりともたらすことにある」(渡辺氏)。具体的な取り組みとして同氏は、ネットワークの透過性(データの内容がそのままの形でやりとりされること)の確保やオペレーターブランドでない一般の流通機器への対応、1回線契約におけるマルチデバイスの対応などを挙げる。

 マルチデバイス対応に関しては現状、1台の機器追加につき月額200円の追加料金が発生し、追加は2台までに制限されている。また、複数台の同時接続もできない。しかし、将来的には料金体系を整理して追加機器や同時接続の制限を緩めていく考えだ。「ネットの世界では、プロバイダーと契約すればパソコンでも何でも接続できるのは当たり前」と渡辺氏は話す。

 また、SIMカードによる管理ではなく、MACアドレスをベースに端末を管理することで、WiMAXはシームレスなマルチデバイス対応を実現するという。「LTEとWiMAXの本質的な違いは、ネットワークの管理でありユーザーの管理。LTEを含めたセルラーは電話番号をベースにSIMカードでネットワークを管理する。SIMカードを差し替えて使えばよいという話もあるが、ユーザーはそういったことをなかなかしない」(渡辺氏)。ユビキタスなネットワーク社会を迎える上で、SIMカードによる通信の管理手法に同氏は疑問を投げかけた。

今後のUQ WiMAX

 現在、UQ WiMAXの基地局は7000局を突破し、今後1年で基地局は約2倍に増える見通し。PC向けサービスに留まらず、MID(モバイルインターネットデバイス)やカーナビゲーション、ホームセキュリティー関連など、PC以外の分野にサービスを拡大させていきたい考えだ。

 下り16Mbps程度の実行速度でスタートしたPC向けサービスは現在、ファームウェアの更新によりほとんどの端末が下り20Mbpsにバージョンアップしたという。下り30Mbpsのサービスも提供する準備は整っており、対応デバイスが順次市場に登場する。

 WiMAXの次期通信規格としては、IEEE 802.16mが2011年の3月ごろに認証される見込み。通信速度の理論値は下り最大40Mbpsから最大350Mbpsに引き上げられる。「理論値なので、(350Mbpsという数値には)大きな意味はない。現在のIEEE 802.16eベースのものから、大きなジャンプをせずにアップグレードしていこうと考えている」(渡辺氏)

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