KDDIの小野寺氏、最後の決算会見――スマートフォン時代の差別化戦略に言及

» 2010年10月22日 23時47分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 最後の決算会見に臨んだKDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏

 10月22日、KDDIの代表取締役社長兼会長を務める小野寺正氏が、第2四半期の決算を発表した。移動通信事業が減収減益となったものの、固定通信事業が大幅に改善されたことから、連結ベースでは売上高、営業利益ともにほぼ前年同期なみの水準で推移した。

 上期の連結ベースの売上高は前年同期比0.3%減の1兆7184億円、営業利益は同1.2%減の2479億円。移動体通信事業の売上高は前年同期比2.4%減の1兆3052億円、営業利益は同9%減の2477億円となった。

 移動体通信事業が伸び悩んでいる要因の1つが、利用者のシンプルコース移行に伴う音声ARPUの減少だ。auは、端末を割引販売しない代わりに月額利用料金を安くするタイプの料金プラン(シンプルコース)の導入が他キャリアに比べて遅れたため、今もなお、その影響が続いている。それが音声ARPUの下落につながり、業績に影響していると小野寺氏は説明した。「音声ARPUはシンプルコースの普及がピークのところに来るまでの間は減収にならざるを得ない」(小野寺氏)

 データARPUは前年同期の2260円から2320円へと上がっているが、最近では他キャリアに抜かれており、「スマートフォンの影響であることは間違いない」と小野寺氏。秋冬以降は4機種のスマートフォンを投入するほか、データARPUの向上が期待できる電子ブックリーダーやタブレット型端末、WiFiルータといった新端末を投入して巻き返しを図るとした。

Photo 秋冬モデルとして2機種、春モデルとして2機種のAndroid端末を投入。フィーチャーフォン向けサービスもアプリで提供する
Photo データ利用の促進に向けたサービスをさまざまなセグメントに向けて提供することで、データARPUの向上を目指す

“1台目のスマートフォン”を目指したことが、投入の遅れに

 移動体通信事業の業績がふるわないもう1つの要因は、スマートフォンの投入が遅れた点だ。小野寺氏は「純増シェアが悪い状況なのは、スマートフォンがないことが影響している。第2四半期はMNPでマイナスが出ているが、これはスマートフォンがなかったことの影響が大きい。戦略ミスであるのは間違いない」と、改めて認めた。

 投入が遅れた理由については、“最初から1台目として使えるスマートフォンの投入を目指していたため”と説明する。「最初から(フィーチャーフォンから)乗り換えられる形をとるべきだろうと思っていた。FeliCaやワンセグ、赤外線通信など、必要な機能を持ったものを出そうとしたのが遅れた理由」(小野寺氏)。グローバルモデルの投入にこだわれば、もう少し速い投入も可能だったというが「それがよかったかどうかは別の問題」という見方だ。

 KDDIが投入した最初のAndroid端末「IS01」には、日本の多くの端末に搭載されているワンセグと赤外線通信機能が装備され、2台目となる「IS03」にはおサイフケータイも搭載されている。フィーチャーフォンから乗り換えても“1台目”として十分使えることを強くアピールするIS03については、「(auからの)流出をとめるだけではなく、他社から奪い取るのも大きなターゲット」(小野寺氏)と自信を見せた。

 グローバル展開しているスマートフォンの投入については「その端末が、日本のユーザーに使ってもらえるかどうかがポイントになる」と小野寺氏。例えば今後はフィーチャーフォンより安いグローバルフォンが出てくる可能性もあり、こうした端末のニーズをくんで「ある程度は出していこうという考えもある」と話す。

 なおKDDIでは、au携帯向けに提供している音楽配信サービスやナビサービス、ニュース配信サービスをアプリとして提供しており、グローバル端末に対しても同じようにアプリで提供することが可能であることから、「どれがグローバルフォンでどれが日本向けなのかということは、今後、あいまいになる可能性もある」という見方も示した。

 グローバル端末が増加すると、キャリア間での差別化が難しくなることが予想されるが、「魅力のあるアプリを探し出し、他社に先行して出せる環境をどうつくるか」(小野寺氏)といった点や、セキュリティ面で安心なアプリの提供、マーケットの使い勝手のよさが競争の要素になると見る。「アプリケーション開発者にしてみれば、できるだけ多くの人に使ってほしいというのが本音だろうと思う。そのときに、例えば通信キャリアと組んで、半年から1年先行して(独占で)リリースし、その後はすべてのグローバルフォンに入っていく――という形を、一部では採れるのではないかと思っている」(小野寺氏)

 さらに、同社が推進するFMBC(Fixed Mobile and Broadcasting Convergence)などのプラットフォームへの取り組みで、どれだけ先行できるかもカギになるとした。KDDIは、Androidを採用したセットトップボックスを開発しており、自宅で見ていた録画番組の続きをスマートフォンから閲覧可能にするような仕組みも開発している。ほかにも、スマートフォンと固定系のサービスをさまざまな形で結びつける研究を進めているとし、この分野での優位性を確保したい考えだ。

Photo 秋冬から春にかけては、スマートフォンのほか、電子書籍端末やタブレット、WiFiルータなど新たなデバイスを投入する

モバイルブロードバンド時代、KDDIの強みは

 小野寺氏はさらに、モバイルブロードバンド時代のKDDIの戦略にも言及。NTTドコモが12月から下り最大37.5MbpsのLTEの商用サービスを開始し、イー・モバイルが、DC-HSDPA方式による下り最大42Mbpsのデータ通信サービスを10月に開始するなどモバイルのブロードバンド化が加速する中、KDDIはEVDOマルチキャリア技術を採用した下り最大9.2MbpsのWIN HIGH SPEEDと、グループ会社のUQコミュニケーションズが提供する最大40MbpsのWiMAXで対抗する。

 さらに、自前でFTTHやCATVといった固定系ネットワークを持つ強みを生かし、“どこでも使えて、速い”ネットワークを構築することで、優位性を出していく計画だ。「今後は、利用者から見たらバックボーンにどのネットワークが使われているかは関係なしに、どこでも高速に使える仕組みを作ることが、大きなアドバンテージになってくると思う」(小野寺氏)

 2012年の導入を予定しているLTEについては、周波数帯を有効利用できる点に期待すると話す。データ利用が右肩上がりで増加しているにもかかわらず、料金に定額制を導入している中では、いかにビット単価を下げたインフラを構築できるかが競争の要因になるからだ。「LTEはキャパシティが大きく、単価が安い点が魅力。EVDOに比べてLTEのビット単価は5分の1といってきたが、最新の数字ではさらに下げられると見ている」(小野寺氏)

Photo 自前で固定網を持つ強みを生かし、“いつ、どこにいても速い”ネットワークの構築を目指す

10年でこれほど変わるとは思わなかった

 小野寺氏は12月1日をもって社長職を退くことから、今回が最後の決算会見となった。社長を務めた10年については「いい意味でも悪い意味でも、この10年間でこれほどまでに変わると思っていなかった」と振り返った。

 社長就任時は、DDIとKDD、IDOの3社合併の効果をどのような形で出していくかが課題であったとし、「合併そのものについては比較的うまくいったのではないかと思っている。それなりのKDDIの形ができたのではないか」と評価した。

 通信業界はビジネスモデルの転換期を迎えており、トラフィックの増加が収益の増加につながるような、従来型のビジネスモデルが成立しなくなっている。KDDIはコンテンツメディア事業と海外事業で利益を上げていくことを目指しており、この分野に強い新社長の田中孝司氏の手腕に期待すると小野寺氏。「経営環境がいろいろと変わっていく中で、田中新社長が新しい視点でやってくれると思っている」(小野寺氏)

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