「お金が集まらないと言っている人は現実を見ていない」 グリー青柳CFOらがベンチャーにエール(2/2 ページ)

» 2011年06月23日 00時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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ベンチャー経営層が語る、アイデア、人、世界との出会い

photo 頓智ドットの井口CEO

 パネルディスカッションは、KDDIの高橋専務がモデレーターとなり、「出会い」をテーマに進められた。最初のお題は「アイデアとの出会い」。ベンチャーを支えるアイデアへのアプローチは、企業によりさまざまなようだ。

 例えばARアプリ「セカイカメラ」を開発した頓智ドットの井口CEOの場合、「光でなくあらゆる情報が映り込むカメラがあれば、世界が変わるのではないか」というアイデアが「散歩中に天から啓示」されたそうだ。一方、ブラウザのLunascapeを作った近藤CEOは、当時のInternet Explorer 6の使い勝手に不満を感じ、それが“タブ”を取り入れたLunascapeの開発につながったという。


photo コロプラの千葉副社長

 位置ゲー「コロニーな生活☆PLUS」を運営するコロプラの千葉副社長に言わせると、アイデアは「端末ありき」。2003年当時、PHSで基地局を使った位置情報の取得が可能になり、パケット定額サービスが登場したことで、これらの特徴を生かしたサービスを考えた結果が位置ゲーだという。

 2つ目のお題は「人との出会い」。コロプラは、観光地のおみやげなどとゲームをコラボさせる“リアル連携”が注目をあびているが、そのきっかけはユーザーからのメールだった。「日光の老舗のせんべい屋である石田屋から『コロプラで何かやりたい』とメールが来た。御曹司がユーザーだった」(千葉氏)。こうして実施した石田屋との“おみやげコラボ”に手応えを感じたコロプラは、地方とITという組み合わせの面白さに気づき、今にいたるという。


photo Lunascapeの近藤CEO

 ソニーという大企業を辞めてLunascapeに専念した近藤氏にとっては、「クレイジーな人との出会い」が支えとなった。同氏は経済産業省が実施する人材育成プロジェクトに参加し、その中でたくさんの「変な人」に会ったという。「『レーダーを付けて壁と通信をする』とか、変なことをやっている人がたくさんいた」(近藤氏)。理解者がいない当時の近藤氏にとって、こうした仲間からの刺激が励みになったという。「シリコンバレーに行けば、みんながクレイジー。“クレイジーが普通”という環境は(ベンチャーにとって)重要なのではないか」(近藤氏)

 最後のテーマ「世界との出会い」に関して、井口氏はアンディ・ルービン氏と面会したエピソードを披露した。セカイカメラをTechCrunch50というスタートアップのイベントで発表した後、同氏はAppleの創設者であるスティーブ・ジョブズ氏と、Androidの生みの親であるルービン氏に“アポなし”で会いに行ったのだという。

 ジョブズ氏には会えず、ルービン氏との面会も一度は「ガードマンに引きずりだされた」が、その後知り合いを通じてルービン氏とコンタクトでき、面会が許された。ルービン氏がTechCrunch50での井口氏の発表を見ていたこともあって、同氏が興味を持ってくれたという。世界に名をとどろかせる経営者やエンジニアとも、「いい製品とパッションがあれば、全然会える」と井口氏は聴衆に語りかけた。

 近藤氏は、自身がシリコンバレーに現地法人を構えた背景に触れた。世界のIT企業に知られる“アキバ”にオフィスを構え、日本から世界にサービスを広めようとしていたが同氏だが、そのやり方に「限界を感じた」という。

 Firefoxが登場したてのころ、技術的にはLunascapeに優位性を感じていた近藤氏だが、結果として世界的にシェアを伸ばしたのはFirefoxだった。その違いは「シリコンバレーにいるかどうか」だったと近藤氏は振り返る。シリコンバレーでは「ワクワクするだけでなく、世界に簡単に出ていける」というのが同氏の考えだ。

 例えば現在、欧州のWindowsの「ブラウザ選択画面」には、選択肢の1つとしてLunascapeが用意されている。「日本ではどう交渉すればいいか見当もつかない」が、シリコンバレーだと「知り合いから担当者のメアドを教えてもらえる」といった手軽さでことが進むという。「日本にシリコンバレーを作るのは難しい。重要なのはシリコンバレーと日本をいかにつなぐかではないか」(近藤氏)


 Android特化型の投資ファンドA-Fundへの出資に続き、KDDI ∞ Laboを立ち上げ、ベンチャーとの連携をにわかに加速させているKDDI。高橋氏によれば、現在同社はシリコンバレーにもインキュベーションセンターを設置し、社員が日本とシリコンバレーを行き来している状態だという。こうした中で得た情報などもフィードバックしながら、同社はKDDI ∞ Laboに取り組んでいく考えだ。

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