“位置ゲー”のテーマパークを目指す――KDDIとコロプラがプラットフォームを提供

» 2010年11月10日 23時28分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo コロプラ 代表取締役の馬場功淳氏(写真=左)とKDDI 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏(写真=右)。コロプラの人気キャラクターのクマ(写真=中)も応援にかけつけた

 「“位置ゲー”のテーマパークを目指す」――。人気位置情報ゲーム「コロニーな生活PLUS」を提供するコロプラとKDDIが提携し、11月11日から位置情報を活用した携帯電話向けゲーム(位置ゲー)とサービスのプラットフォーム「コロプラ+」を提供すると発表した。

 登録ユーザー150万人(11月10日時点)を擁するコロプラが持つ位置情報ゲームの運営・開発ノウハウと、KDDIの集客力を生かしたプラットフォームを両社が共同で構築。プラットフォーム上にさまざまな位置ゲーを“テーマパークのように集めて”提供することで、位置ゲー市場の拡大とモバイル/リアルの連携サービスの活性化を目指す。

 なお、KDDIはこのプラットフォームを「au one コロプラ+」という名称で提供する。

Photo コロニーな生活は2003年に代表取締役の馬場功淳氏が個人でサービスを開始。それが今や、登録ユーザー150万人の人気サービスに成長した。KDDIはコロプラのサービス実績や開発力に加え、先進的なアイデアを形にしている点や、バーチャルとリアルの連携をきっちりやっている点などを評価して提携を決めたという

賛同企業には、位置ゲー開発用APIとSDKを無償で提供

Photo 15社がプラットフォームに参画。2011年初旬から順次、サービスを提供する

 LAP(Location-based Application Provider)と呼ばれるコロプラ+の賛同企業には、位置ゲー開発用のAPIやSDKを無償で提供。このAPIには位置情報の不正登録を防ぐ技術が含まれており、初めて位置ゲーを開発する企業でも、不正利用の恐れがないサービスを短期間で開発できるという。すでにゲーム会社や旅行/グルメ関連の情報サービス企業、ナビサービス提供企業などの15社が参画を決めており、2011年の初旬から各種サービスが登場する見込みだ。また、個人の開発者に対しても「機が熟したら」(コロプラ 代表取締役社長の馬場功淳氏)プラットフォームを開放するという。

 KDDIとコロプラはプラットフォームの提供に合わせて、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのフィーチャーフォン向けに、Webベースの位置ゲー3種と、位置ゲーポータルサイトの「コロプラ+」を提供する。ゲームはコロニーな生活PLUSに加え、新たに位置ゲーパズルの「コロパズ 〜コロミンさんとパズルなセイカツ」とロールプレイングゲーム風の位置ゲー「キャリー・ストーリー」を用意。ポータルサイトは、プラットフォーム上にある複数の位置ゲーに、位置情報をまとめて登録できるのが特徴で、登録先を任意に選択できる。ほかにも位置情報と連携したTwitterサービスの「コロツイ」や、移動距離や測位した場所などの情報を管理する「ライフログ機能」を提供し、11月下旬には、Android端末やiPhoneへの対応も予定している。

Photo コロプラ+上では、測位した位置情報を1回で複数サービスに登録できる。移動するたびにいくつもサービスを立ち上げるような不便さを解消するのも、プラットフォーム提供の狙いだ
Photo Android端末向けau one コロプラ+のサービスイメージ
Photo 位置ゲーパズルの「コロパズ」。移動した距離や方角に応じてパネルが開く

 なお、auケータイ向けのポータルサービスについては「au one コロプラ+」という名称で提供。基本的なサービスメニューは他キャリア向けのものと同等となる。KDDIでは、au oneポータルからの導線を用意したり、回収代行サービスを導入するなどの施策でユーザーが使いやすい環境を提供する考え。今後はauが提供する他のサービスとの相互連携も視野に入れ、開発を進める。

Photo 発表会にはゲームリパブリック 代表取締役社長の岡本吉起氏、リクルート カスタマーアクションプラットフォーム室長の出木場久征氏、ユビークリンク 代表取締役社長の増田有孝氏が登壇し、賛同企業の代表として意気込みを語った

ゲームからツール、リアル連携へと拡大

Photo コロプラ CSOの長谷部潤氏

 プラットフォームのロードマップについては、当初はゲームを中心としたアプリを充実させ、次にアプリ間の連携を視野に入れたツールを展開。その後、リアルの店舗やサービスなど、地域振興につながる分野に拡大する計画だ。プラットフォーム上のアプリ間連携も推進するとし、コロプラ CSOの長谷部潤氏は「シャーレの中でアプリ同士が化学反応を起こし、新たな価値を生むようなプラットフォームにしたい」と意気込んだ。

 長谷部氏はさらに、コロプラ+が創出する新たな価値について、マーケティング用語の「AIDMAの法則」を引用して説明。「Attention」「Interest」「Desire」「Memory」「Action」という消費行動のうち、Interestをゲームを軸とした「Incentive」に代えて欲求への入り口とし、位置ゲーの特性を生かした「Move」をMemoryの代わりにしてアクションにつなげる“新AIDMA理論”を打ち出した。これが購買の喚起につながることは、すでにコロプラが提供するリアル店舗や交通/旅行サービスと位置ゲーの連携サービスで実証済み。10月にはパートナー企業の売上高が1億円を超えるなど、地域の振興に役立つサービスに育っている。

 「これまでのインターネットの思想は、“人がモノを動かし、人が動かなくてすむようにする”ことを目指すものだったが、コロプラは“モノを固定化させ、人が動いていくこと”に価値を見いだしている。インターネットこそが人を動かすツールになる――という思想であり、これを具現化したのが我々のサービス」(長谷部氏)

Photo プラットフォームのロードマップ(左)。コロプラが提供するリアル連携サービスは、この10月にパートナー企業の売上高が1億円/月を突破した(右)

“先進サービスといち早く組むau”をアピール

Photo KDDIの雨宮氏

 KDDIが今回の提携で狙うのは、ユーザーとの新たな接点づくりと、モバイルとリアルの連携による新たな市場の創出だ。KDDIは早い時期からGPSケータイやナビサービスの普及に取り組んでおり、携帯電話のGPS対応率は93%に達している。“ほぼすべてがGPSケータイ”という強みを生かすのに“位置ゲー”は格好のサービスだ。

 他キャリアの携帯電話向けにも同時に同じサービスを提供するため、auの優位性が見えにくい部分もあるが、KDDI 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏は、プラットフォームの共同開発で得られるノウハウが、今後のサービス開発や既存サービスとの連携に役立つと話す。

 さらに、大人気ソーシャルアプリ「サンシャイン牧場」の提供で知られるRekoo、AR(拡張現実)サービスが注目を集めるきっかけを作った「セカイカメラ」の頓智ドットに続くトレンド企業と提携することで、auの先進性をアピールしたい考えだ。

Photo 位置情報に関連するエンタテインメントのタッチポイントを提供(左)。人気のサービスを提供する企業といち早く提携し、サービスを作り上げていくことで“先進的なau”をアピール

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