大解説! Tegra 4シリーズの「性能密度」に迫るMobile World Congress 2013(3/4 ページ)

» 2013年02月26日 12時30分 公開
[本間文,ITmedia]

Tegra 3で導入した「4+1コア」の動き

 Tegra 4シリーズの最上位モデル「Tegra 4」では、CPUコアにARMの最新CPUコア「Cortex-A15」を採用することで、現行製品のTegra 3よりも高い性能を実現している。一方、エントリーモデルとなる「Tegra 4i」では、Tegra 3が組み込んでいるARM Cortex-A9コアの改良版を採用し、グラフィックスコアはTegra 4より少ない60コアを統合している。

Tegra 4と競合するモバイルプロセッサの性能を比較したベンチマークテストの結果と(写真=左)、Tegra 4で測定したベンチマークテストの詳細スコア(写真=右)

 Tegra 4iでは、プロセスルールを従来の40ナノメートルから28ナノメートルに変更することで、CPUコアの面積を抑えるとともに、省電力化も可能にした。しかし、同じCPUコアである以上、動作クロックが同じならCPUそのもののパフォーマンスは変わらない。そこで、NVIDIAはTegra 4とで採用している省電力デバイス向けの28ナノメートルプロセスルールとは異なり、高性能モバイルデバイス向けの最新プロセスを採用することで、より高速な動作を可能にして高性能化を図っている。

 この工夫は、レーシングカー向けの素材を使ってエンジンの小型・軽量化を図り、通常よりも高い性能を実現した改良にも似ている。Tegra 4を「強力な新型エンジンを搭載したスポーツカー」とするならば、Tegra 4iはボディを軽量化することで性能を追究したライトウェイトスポーツカー」に例えることができる。しかも、両モデルとも、ハイブリッド車のように通常のエンジンのほかに、もう1つの省電力コアを搭載しているのも特徴だ。

左と中央にあるのはTegra 4iで、その右にあるのがTegra 3だ(写真=左)。Tegra 4シリーズと競合製品のCPUコアサイズと性能を比較する。Tegra 4シリーズの“性能密度の高さ”をよく示している(写真=右)

 同社が「4+1」と呼ぶ、4つのCPUコア(クアッドコア)と、省電力オペレーション専用のシングルコア(+1)の組み合わせは、現行のTegra 3から採用した、競合製品にはない構成だ。NVIDIAは、Tegra 4においてこの構成と挙動に改良を加え、省電力性を高めている。

 この4+1コア構成は、通常の状態で高性能なクアッドコアに対してCPU負荷に応じて利用するコア数を動的に制御することで、積極的に消費電力を抑えている。しかし、スマートフォンやタブレットデバイスで利用するモバイルプロセッサは、CPUやグラフィックス機能のほかに、デジタルカメラの画像処理を行なうイメージプロセッサや、ビデオ専用エンジン、オーディオ機能など、さまざまな固有機能を統合しており、ビデオ再生などでは、ほとんどCPUに負荷がかからない。そこで、Tegra 3から採用している4+1コア機能では、CPUの負荷が極端に低くなった場合、クアッドコアのシングルコア動作から、省電力処理専用コアに切り替えることで、さらなる省電力化を図る。

Tegra 3から導入した処理性能を重視するクアッドコアと省電力動作を重視するシングルコアによる4+1コアの構成と動作の仕組み。3Dグラフィックスや大量の演算処理を必要とするときは、その付加の合わせて処理性能を重視するクアッドコアの有効コア数を動的に変化するが、専用エンジンを使ってCPUに負荷がかからない処理では省電力重視のシングルコアだけが有効になる

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