インタビュー
» 2013年05月17日 10時08分 UPDATE

さまざまな“縁”で実現:KDDIとジブリに聞く、auスマートパスで「ジブリの森」が提供された背景 (1/2)

5月9日に、auスマートパス会員向けの新たなコンテンツとして、スタジオジブリの「ジブリの森」が提供される。インターネット上では初のジブリ公式コンテンツだが、なぜパートナーにKDDIを選んだのか。KDDIの雨宮俊武氏とスタジオジブリのプロデューサー見習い 川上量生氏に聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 アプリをはじめとしたさまざまなコンテンツを、月額390円で利用できる「auスマートパス」。500万会員を超え、今年の3月にはauのスマートフォン購入者の約9割が契約するなど好調な推移を見せている。そんな中、5月9日に新しい会員向けコンテンツとして、スタジオジブリが提供するWebマガジン「ジブリの森」が提供された。

 これまで、インターネット上でのコンテンツ展開を実施してこなかったスタジオジブリが、なぜauスマートパスをコンテンツ提供の場に選んだのだろうか。そのいきさつについて、KDDIの執行役員 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部長である雨宮俊武氏と、スタジオジブリのプロデューサー見習いであり、ドワンゴの代表取締役会長でもある川上量生氏に話を聞いた。

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ジブリがKDDIとauスマートパスを選んだ理由

 そもそもスタジオジブリとKDDIが接点を持つようになったのは、東京都現代美術館で2009年に開催された「メアリー・ブレア展」にまでさかのぼる。スタジオジブリが企画したこの展覧会に、KDDIが協賛したことがきっかけとなって両者は関係を持つようになり、2011年に公開されたスタジオジブリの映画「コクリコ坂から」ではKDDIとのタイアップ企画を実現。さらに今年公開が予定されている映画「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」ではKDDIが製作委員会に参加するなど、年を追うごとに両者の関係は深くなっている。

 こうした両者の関係の深まりが、ジブリの森のauスマートパスへの独占提供という形に結びついたようだ。しかし、これまでインターネット上にコンテンツの提供をしてこなかったスタジオジブリが、auスマートパスという場を選んでWebマガジンを展開するに至ったのには、どのような背景があるのだろうか。

photo スタジオジブリ プロデューサー見習いの川上氏

 実は今回の企画は、「スタジオジブリ側から持ち込んだもの」だと川上氏は話す。「コクリコ坂から」のタイアップの時から、KDDI側からデジタルコンテンツに対する要望はあったものの、ジブリ側がそれにあまり応えられていなかった。またスタジオジブリとしても、ネット上の違法画像対策として、安全に楽しんでもらえるサイトを作りたいという思いがあった。そこで川上氏が提案する形で、KDDI向けにデジタルコンテンツを提供するという企画が進んだのだそうだ。

 コンテンツを提供する上で特に注意したのは「多くの人に見てもらうこと」と「コンテンツの価値を落とさないこと」だったと雨宮氏は話す。有料課金のスタイルを採用すればビジネスとしては高い価値を生むが、閲覧できる人は制限される。だからといってオープンな形で提供すれば、画像が悪用される可能性が大幅に高まり、価値のあるコンテンツを提供できなくなってしまう。そこで両者が議論を重ねた結果、auスマートパス上での提供という形に至ったのだという。

 実際、ジブリの森で提供されるコンテンツには、過去に有料で販売していたような素材もいくつか使われているという。「そうしたコンテンツを無料で閲覧させるのは、従来のユーザーに申し訳ない」と川上氏は話しており、価値あるコンテンツを広く提供する上でも、多くの有料会員を抱えるauスマートパスの存在が大きな役割を果たしたといえそうだ。

ジブリが持つ素材をふんだんに使用

 auスマートパス上で提供されるジブリの森は、スタジオジブリの作品をコンセプトにした月刊のWebマガジンだ。毎月1つ、または複数の作品をテーマとして、その作品に関する深い情報を提供するのはもちろん、壁紙やゲームなど、デジタルコンテンツの“付録”も用意される。

 月刊といっても、月に1度だけ更新されるわけではない。毎週または日単位でコーナーが少しずつ変化し、ひと月かけてコンテンツが完成する形になるとのこと。頻繁にアクセスしても、飽きがこない工夫がなされている。さらに「毎月趣向を変えていこうと思っている」(川上氏)そうなので、作品ごとにコンテンツが大きく変化する可能性もありそうだ。バックナンバーの仕組みは用意されていないが、一度読んだコンテンツは“マイページ”に保管されるので、その月の特集を後から確認し直すことは可能だ。ちなみにマイページに登場する“ネズミ編集長”は、ジブリの森に登場する唯一のオリジナルキャラクターであり、プロデューサーの鈴木敏夫氏の直筆によるものだという。

photophotophoto 「ジブリの森」創刊号の特集は「となりのトトロ」。さまざまテーマの特集や付録を用意する(写真=左、中)。水曜日に更新される、ネズミ編集長の4コママンガ(写真=右)

 ジブリの森にはさらにスタッフの日記コーナーも用意されており、こちらは毎日更新がなされる。かつてスタジオジブリのWebサイト上で展開されていたスタッフ日記が人気だったものの、「なんとなく燃え尽きてしまった」(川上氏)ことから、改めてジブリの森で展開する形となったようだ。ここにはジブリのスタッフの日常だけでなく、宮崎駿監督の日常の姿も掲載されている。監督の写真掲載は「本人の許可は取っていないが、スタッフの意見が全員一致した」(川上氏)とのことで、監督の意外な一面も見ることができそうだ。

 ほかにもauショッピングモールとの連動で、4月10日より刊行された「文春ジブリ文庫」と連動した企画などが実施されるが、一方で提供されないコンテンツもいくつかある。1つは音楽で、権利関係の処理が必要になることから、今後検討していくとのこと。そしてもう1つは動画。動画を提供しない理由について川上氏は、「スタジオジブリは動画がすべて。やはりそこだけは線を引きたい」と話している。

 動画こそ提供されないものの、スタジオジブリ自身が持つ多くの素材を、インターネットコンテンツとして提供するのは、ジブリの森が初めてのことになる。ファンにとって魅力的なコンテンツになることは確かだろう。

photophotophoto 制作現場の声を届ける「ジブリ通信」は、毎日更新される(写真=左、中)。第2、4金曜日に更新する「ジブリ名場面劇場」は、文春ジブリ文庫シネマ・コミックから名場面を紹介する(写真=右)
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