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» 2013年10月07日 14時51分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:アプリと外部機器が盛り上げる、スマートフォンの健康支援サービス

常に持ち歩き、しかもパーソナルなデバイスであるスマートフォン。その特性を生かして、“健康”に関する取り組みが各社で積極的に進められている。その動向を追った。

[佐野正弘,ITmedia]

 携帯電話は常に持ち歩くデバイスであり、しかもユーザーだけの個人情報がたくさん保存されている。それだけに、めったに他人に見せることのないパーソナルなデバイスでもある。フィーチャーフォン全盛のころから、モバイル性とパーソナル性の2つの要素が、モバイル分野でヒットするコンテンツの傾向に大きな影響を与えてきた。

 例えば“着うたフル”などの音楽配信は、モバイルなデバイスでいつでも音楽が聴けるだけでなく、自分だけの着信音を設定できるなど、個人によって嗜好性が大きく異なるパーソナル性が強く働いていたからこそ、人気になったコンテンツといえるだろう。

“モバイル”と“パーソナル”をさらに生かす健康支援サービス

 モバイルとパーソナル、これら2つの要素が影響して人気を獲得しているコンテンツ・サービスの1つに“健康支援”がある。常に身につけているため身体の情報が得やすいモバイル性と、体調などのデータを他人に容易に見られないパーソナル性が、支持を得る土台となっているためだ。

photo 女性向けの健康管理サービスは、モバイルで高い人気を獲得している分野の1つ。中でも「ルナルナ」(MTI)はフィーチャーフォン時代より人気を獲得している

 高いパーソナル性がヒットに結び付いたものとして、女性向けの健康管理分野が挙げられるだろう。具体的には、基礎体温や生理日などを記録することで、次の生理日を予測し、避妊や妊娠などに役立てられる女性専用の健康管理サービスなどだ。紙よりもデータの管理がしやすいのに加え、人に見られる可能性が低い“携帯電話向け”という安心感により、フィーチャーフォン時代から人気を獲得している。

 一方でモバイル性がヒットに結び付いたのが、携帯電話を用いた運動・健康支援サービスだ。日本ではフィーチャーフォン時代より、多くの機種がGPS機能を搭載していたほか、歩数計を備えた機種も一部用意されるなど、携帯電話の機能進化で身体に密接した情報が得られるようになった。そこでこれらの機能を生かし、携帯電話を健康維持に活用する取り組みが進められるようになったのだ。

 その先駆けとなったのは、2008年にKDDI(au)が、ランニングやダイエットなどを支援するサービス「au Smart Sports」である。auはこのサービス開始以降、ランニングイベントを実施したり、皇居の近くにランナー向けシャワー施設「Run Pit」を設けたりするなど、携帯電話を使った健康支援に力を入れてきた。その影響は他キャリアにも広がり、NTTドコモが2010年に、やはり携帯電話を活用した健康管理サービス「i Bodymo」を提供するに至っている。

アプリ開発の自由度が変化をもたらす

 健康支援系サービスはスマートフォン時代になっても継続した人気を得ているが、その取り組みはフィーチャーフォンの時より広がっているようだ。事実、App StoreやGoogle Playで、健康・フィットネス系のカテゴリを覗いて見ると、ランニング支援や女性向けの健康管理だけでなく、多種多様なアプリが人気となっている様子を見ることができる。

photo スマートフォンで映像や音声をふんだんに使った健康支援アプリが増加。KDDIの「前進痩せエクササイズ」は3Dモデルと声を用いてエクササイズの仕方を分かりやすく解説

 スマートフォンで健康系アプリの幅が広まったのには、スマートフォンになって画面が大きくなり、動画や音声など表現力が高まったことが大きい。例えばダイエット支援アプリでは、画面の大きさを生かして日々入力した体重をグラフ化し、その変化や今後の予測などを分かりやすく表示してくれる機能を備えるものが多い。またエクササイズ支援アプリなどは、動画や音声をフル活用することで、より分かりやすく説明してくれるものが多く見られる。

 だがそれ以上に大きく影響しているのは、スマートフォンでアプリ開発の自由度が大幅に高まったことだ。フィーチャーフォンでは、GPSの利用や本体内のセンサーを活用したアプリを作るのに大幅な制約が課せられていたため、充実した健康管理サービスを提供できるのは、ハードを提供する携帯電話キャリア自身に限られていた。だがスマートフォンではそうした制約がなく、GPSや本体のさまざまなセンサーを自在に活用するアプリを、誰でも提供できるようになった。

 ちなみに、健康やスポーツに対する関心は世界的に高いことから、健康管理系のアプリは日本だけでなく、海外でも多く開発・提供されている。そのバリエーションも豊富で、例えばランニング支援アプリなどを見ても、「Runtastic」「Endomondo Sports Tracker」などの正統派アプリに加え、ストーリーを聴いてゾンビから逃げるようランニングするなど、ゲーム要素を備えた「Zombies, Run!」のようなアプリも存在する。

photophoto ランニング支援アプリながら、ゾンビから逃げてアイテムが手に入り、基地を拡張するなど、ゲーム的要素を多く備える「Zombies, Run!」

“睡眠支援”などスマホならではの新ジャンルも

 開発の自由度だけでなく、海外系の健康アプリがアプリマーケットを通じて日本に入ってきたことも、健康支援サービスの内容の幅を広げることに貢献したといえそうだ。そうした影響を受けて生まれたアプリやサービスの中から、スマートフォンで新たに台頭したものも、いくつか見られるようになってきた。

photophoto スマートフォンの加速度センサーを用いた睡眠支援アプリは、健康系アプリでは定番ジャンルの1つになりつつある。写真はエイチームの「快眠サイクル時計」
photo 「カルジオグラフ」は、スマートフォンのカメラに指を付けて脈拍を測るアプリ。こうした発想のアプリが出てくるのには、アプリの自由度の高さが影響している

 その代表的な存在といえるのが、“睡眠支援”系のアプリである。これはスマートフォンを枕元に置き、スマートフォンの加速度センサーによって寝返りの回数をカウントし、眠りの深さを分析。眠りが浅い時にアラームを鳴らすことで、スッキリと目覚めるよう起こしたりしてくれる。最近ではさらに、夜寝る時に、心地よい眠りを誘う音を流してくれるアプリなども登場し、内容の幅を広げている。

 スマートフォンのカメラに指を押しつけることで脈拍数を測定できる「カルジオグラフ」も、スマートフォンならではの要素を生かしたアプリといえるだろう。このように、スマートフォンの諸機能をアプリで生かすことにより、健康支援系サービスはそのサポート範囲を大きく広げつつあるのだ。

今後のトレンドは“外部機器との連携”か

 だが最近の流れを見ていると、スマートフォン単体で健康管理をするのではなく、他のハードと組み合わせて健康管理するというのが、トレンドとなっているようだ。

 持ち歩いて利用する時間が長いとはいえ、スマホを24時間常に身につけている訳ではない。自宅にいる時は充電器に置かれている時間が長いだろうし、運動する時などは、スマホの大きさが邪魔に感じることも少なくない。そうしたことから測定には専用のハードを用い、それらで得た情報をスマートフォンに転送してデータ管理・分析に活用するという流れが進んでいるようだ。これにはBluetooth 4.0を採用したスマートフォンが増え、ワイヤレスかつ省電力で、データのやり取りができるようになったことも、少なからず影響しているだろう。

 スマートフォンと連携して健康管理するデバイスの代表例となるのが、「Fitbit Flex」「JAWBONE UP」などの活動量計だ。これらは腕に装着できるなど、常時体に身につけていても負担がかからないサイズであり、身につけている間、歩数や移動距離、睡眠状態などを常に測定できる。さらにスマートフォンにデータを転送することで、運動量などから日々の行動を管理できることから、スマートフォン単体で活動量を測定するよりも、一層詳しい測定や分析が可能になる。

photophoto ソフトバンクモバイルの「SoftBank HealthCare」は、スマートフォンと活動量計「Fitbit Flex」、そして新たに体組成計の「Softbank 301SI」とも連携して健康管理ができる

 同様の動きは、ほかのデバイスにも広まっている。例えばドコモ・ヘルスケアが展開するスマートフォン向け健康管理サービス「わたしムーヴ」では、オムロンヘルスケア製の睡眠計測器や婦人体温計などと、NFC経由でデータを通信する仕組みを備えている。さらにソフトバンクモバイルは、同社のスマートフォン向け健康管理サービス「SoftBank HealthCare」と連携できる、3G通信機能を備えた「スマート体組成計 SoftBank 301SI」の提供を、来年の2月中旬以降に予定している。

 スマートフォンによってできることが広がり、さらに他の健康管理機器と連携することで、より密な情報が得られるようになるなど、モバイルを用いた健康管理サービスは、その可能性が大きく広がってきているのは確かだ。それだけに今後は、動向の活性化をビジネス的な盛り上がりにどこまで結び付けられるかに、注目が集まるだろう。

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