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» 2014年03月04日 19時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:コロプラと手を組んだGlu Mobileに聞く、海外ゲームベンダーの日本攻略法とは

北米の大手ゲームアプリベンダー「Glu Mobile」が日本のコロプラと提携して国内市場への本格参入を表明した。Glu Mobileの狙いはどこにあるのか、日本担当スタッフに話を聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 「Clash of Clans」など、昨年より海外でヒットを飛ばしたスマートフォンゲームアプリベンダーが、日本でも人気を獲得する事例が増えてきた。では一体、日本進出を目指す海外ゲームベンダーの狙いはどこにあるのだろうか。また、ゲームの嗜好が大きく異なる日本のユーザーに対し、どのような施策を持って攻略しようとしているのだろうか。コロプラと提携し、日本進出を本格化させるGlu Mobileに話を聞いた。

世界的に本格3Dゲームを提供するGlu Mobile

photo 日本のゲームアプリでは海外展開を積極化した「パズル&ドラゴンズ」に興味があると話す、Glu Mobileのジェイソン・エンリケ氏

 Glu Mobileは、米サンフランシスコに本拠地を構える、モバイルのゲームアプリベンダーの1つ。2001年より海外でフィーチャーフォン向けにゲームを提供している、モバイルのゲームベンダーとしては老舗というべき存在になる。

 同社はスマートフォンやタブレットの登場で市場が大きくなることを見越し、2010年に事業戦略をスマートフォンへシフトして急成長を果たした。ちなみにGlu Mobileは米ナスダック市場に上場しており、同社Director of Business Development & Global Communicationsのジェイソン・エンリケ氏によると「(取材時点での)時価総額は300億円規模になるのでは」とのことだ。

 Glu Mobileは、モバイルゲームの中でも人気の高いカジュアルゲームではなく、コンシューマーゲーム機のようにデバイスの限界を引き出す、本格的な内容のゲームに注力した戦略をとっているのが特徴。実際、同社のゲームで人気が高いのは、FPS(1人称視点シューティング)の「Frontline Commando」「Deer Hunter」シリーズや、アクションRPGの「Eternity Warriors」シリーズなど。3Dグラフィックを駆使した本格ゲームに力を入れていることが海外で支持され、成長につながっているのだ。

 さらにもう1つ、同社は日本を含め世界7カ国に拠点を構えており、500人以上の体制でゲームアプリを開発する、グローバル体制を敷いている点も特徴だ。「FPSはロシア、アクションRPGは北京というように、それぞれ得意分野を持っている」(エンリケ氏)とのことで、その国の特徴に応じたアプリの開発体制を実施しているとのことだ。

photophoto Glu Mobileの人気ゲームの1つ「Deer Hunter 2014」。銃で野生動物を狙ってしとめる、リアルな表現が特徴的な3Dハンティングゲームの最新作だ
photophoto 同じく人気ゲームの「Eternity Warriors 3」。他のプレイヤーとの協力プレイが可能な、3Dグラフィックによる本格アクションRPGになる

日本進出を目指す理由は“世界一”のマーケット規模

photo 「日本のゲームでは、ブレイブフロンティアや拡散性ミリオンアーサー、チェインクロニクルなどが中国・韓国で人気」と話すグレッグ・チャン氏

 Glu Mobileのゲームは、App StoreやGoogle Playなどを通じて日本でも配信されているが、それほど大きな注目を集めていたわけではない。ではなぜ、拠点を構えてまで本格的に日本へ進出しようとしているのだろうか。

 Glu Mobileでアジア部門を統括管理しているVice President, Asia&3rd Party Publishingのグレッグ・チャン氏によると、その理由はやはり「日本がスマートフォンのゲームマーケットで一番大きい市場になった」ことが大きいという。市場性の高い日本でプレゼンスを高めるのが、グローバルで事業展開するGlu Mobileの戦略において必須ということのようだ。

 だが「日本の市場を知らない人が日本でゲームを提供しても、うまくいかない」とチャン氏は話す。そこで日本のモバイルゲーム市場に詳しい人材を雇用し、拠点を設けるなど日本市場に根差した戦略をとることで、Glu Mobileのプレゼンスを上げていくことを考えているという。

 確かに、日本市場は海外と比べると、ゲームに対する嗜好性が大きく異なり、海外のゲームが簡単に受け入れられづらい土壌がある。だがsupercellの「Clash of Clans」や、King.comの「キャンディークラッシュ」などのように、大幅なローカライズをしなくても成功している海外ゲームアプリは、すでにいくつか存在している。

 このことに対してチャン氏は、「それらのゲームは元々のクオリティが優れている。海外のゲームに対する日本のハードルが下がったというよりも、『スーパーマリオブラザーズ』などのように、100万本に1本くらい生まれる世界的なヒット作だったのではないか」と分析している。それだけにチャン氏は、日本市場を攻略する上で、やはり市場に根差したローカルな戦略をとることが重要だとしている。

日本向けのローカライズは大胆な手法で実施

photo コンシューマーゲームやソーシャルゲームのベンダーに所属していた経験を持つ森信介氏

 その日本市場開拓を担うべくGlu Mobileに参加したのが、コンシューマーゲームやスマートフォンのゲームなどの開発を手掛けてきた、Japan Country Managerの森信介氏だ。森氏は現在のGlu Mobileのゲームについて、「そのままの形で日本市場に展開するにはあまりにハードルが高い。従来の歴史を見ても、海外ゲームはとっつきにくく、受け入れられづらい傾向がある」と話す。そこで森氏は、Glu Mobileが持つゲーム性はそのままの形で生かしつつ、日本のユーザーに馴染みのある形で提供することを考えたそうだ。

 そのためには、同社が自身でローカライズを手掛けるのではなく、日本のマーケットに詳しいパートナーと手を組み、日本のユーザーに適したグラフィックの嗜好や、継続して遊んでもらいつつ課金してもらうためのイベント手法などのノウハウを取り入れた形でゲームを提供するのが望ましいと判断したようだ。

 そこで実現したのがコロプラとの提携になると、森氏は話す。コロプラは「プロ野球PRIDE」「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」など、国内で人気ゲームを多数提供しており、日本のマーケットをよく知っている企業の1つだ。また一方で、海外展開はまだ途上段階であったことから、海外に強みを持つGlu Mobileと、日本に強みを持つコロプラと組むことで、よい連携が生まれると判断。コロプラ側も、外部の企業と組んでコンテンツを増やすことを望んでいたことから、両社の提携へとつながっていったという。

 しかしGlu Mobileのゲームは、コロプラが提供するカジュアル要素の強いゲームと比べ、かなり異質なようにも感じる。ゲーム性が大きく異なる中で、どのように連携体制を取るのかというのは、非常に気になる部分でもある。

 これについて森氏は、「日本市場を知っている目からすると、グラフィックを変え、チュートリアルを入れるなどして分かりやすくすることにより、日本でも受け入れてもらえるゲームがいくつかあると感じていた。この点はコロプラ側とも意見が一致しており、実際に開発にも動いている」と答えている。ちなみにそのゲームのローカライズに関しては、ゲームのコア部分を除いて、グラフィックだけでなくストーリーなども全面的に変更するなど、かなり大胆な変更を実施するとのこと。今年の夏くらいまでには、成果として作品が出てくるそうだ。

 一方で今回の提携では、Glu Mobile側のローカライズだけでなく、コロプラが監修し、新しいブランドで提供するゲーム(コロプラ内製タイトルは除く)を、Glu Mobileが北米でパブリッシングするという内容も含まれている。これについて森氏は、現時点では取り組みが進んでいる最中のため詳しく話すことはできないとしながらも、「ローカライズなどはタイトルによって取り組み方が変わるが、Glu Mobileがさまざまな地域で広告宣伝をしていくことになるだろう」としている。

スマートフォンでもコアゲーマーが育ちつつある?

 Glu Mobileはコロプラとの提携という形で、日本市場に向けたローカライズの体制を整え、市場攻略を狙っているようだ。だがそもそも、日本のスマートフォンゲーム市場は競争が非常に激化しており、国内のベンダーでさえ市場攻略が難しくなっている。

 このことについて、「当然ダウンロードや売上は伸ばしていきたい。世界で最も大きな市場で勝てていないのは、グローバルカンパニーとしてどうにかしないといけない。しかも、強烈な成功が必要だ」と、森氏は答える。そこでGlu Mobileとしては、ローカライズの他にも、テレビCMを展開するなどの積極的なプロモーションも考えているようだ。

 しかし、Glu Mobileのゲームはカジュアルゲームが少なく、どちらかというとコアなゲームプレーヤーに向けたタイトルが多いことから、マスプロモーションでは響きにくい部分もある。それゆえ森氏は、「特に、コンシューマーゲーム機やPCなどで“洋ゲー”などを楽しんでいるハードコアゲーマーに対して、Glu Mobileのブランド力を高めていきたい。その上で、ローカライズタイトルにもチャレンジしていく必要がある」とも話している。

 だが日本においては、そうしたコアゲーマーはモバイルゲームにあまりよい印象を持っていない傾向が強い。このことに対してエンリケ氏は、「コンソールゲーム機が大好きな人にとって、スマートフォンのゲームが完全に代わる存在になるとは思っていない。だがモバイルでもスマートフォンなどの進化に合わせて、ハードコアなゲームを楽しむユーザーが出てきているように感じている。そうした人達に受け入れてもらうことが、重要になってくるのではないか」と話している。

photo 今回は、Associate PR Managerのクラウディア・オロペザ氏(写真=左)を含む4人に取材協力頂いた。ちなみにエンリケ氏が持っているのは、Glu Mobileのキャラクター「Gマン」だ

 スマートフォンでは海外のゲームに対するハードルが下がってきたと言われるものの、それは主として、元々リアルさの薄いカジュアルゲーム主体に起きていること。Glu Mobileのようにリアルなゲーム性を重視するベンダーには、嗜好の差が人気に大きく影響してしまう。それだけに、コロプラとの提携によるローカライズの取り組みがどのような成果をもたらすかが、スマートフォンゲーム市場の今後を占う上の重要なポイントといえそうだ。

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