小型基地局のスモールセルも、各社が力を入れていた展示の1つだ。通常のマクロ基地局に小型基地局などを組み込んでキャパシティの改善を図る「Het Net」(ヘテロジニアス・ネットワーク)の実用化に向けた開発が進んでいることを思わせる展示内容が多かった。
Huaweiは屋外用のマルチノード・スモールセル「AtomCell」を展示し、すでに膨大な数がある街灯やバス停に設置してキャパシティを改善できると提案していた。また、NSNでは「Flexi Zone」ブランドの屋内用と屋外用のスモールセルを展示したほか、スモールセルの“大量設置”で大きな問題となる電波干渉を制御機能を利用して回避するソリューションを実機で見せていた。
このほかにも、混雑する駅やスタジアムなど人口が集中するエリアで通信速度を改善する技術として、NSNは「Centralized RAN」という独自ソリューションを展示していた。これは、通信速度が落ちてしまうセルエッジ(通信ができるエリアの境界付近)で上り速度を維持する技術で、干渉を解消しつつ端末側が発する電波を利用して2つの無線基地局とつながることで、上り速度を最大で7倍ほど改善するという。また、干渉も30〜60%の削減が可能とみている。NSNでは、この機能をすでに投入している基地局「Flexi Multiradio 10 BS」上の拡張として提供する予定で、まもなく実用化する計画だ。
Ericssonは、スモールセルを“サービス”として提供する「Small Sell as a Service」を発表した。このアイデアでは、街の中心部や駅、スタジアム、ショッピングモールなど人が集中するところにEricssonがインフラを設置し、通信事業者は「サービス」としてEricssonのスモールセルを利用することになる。無線設備の設置や導入コストを削減でき、すぐにスモールセル網を展開できるのが大きなメリットだ。まずは、対象エリアにいる95%のユーザーに1Mbpsを保証する「BASIC」サービスからスタートし、今後、10Gbps保証の「ADVANCED」などサービスを拡充する予定だ。
スモールセルの構築に必要となる基地局の小型化も進んでいる。Ericssonが2013年9月末に発表した屋内向け「Radio Dot System」をブースで展示していた。直径約10センチ、重さ約300グラムという手のひらに乗るサイズのボディに必要なモジュールをすべて収容している。通信方式はLTEとWCDMAに対応し、25〜30メートル(600〜800平方メートル)の範囲をカバーできる。通常のイーサネットケーブルで「IRU」(Indoor Radio Unit)に接続し、1台のIRUにRadio Dot Systemを8基接続できる。電源もイーサネット経由なので、設置で面倒な配線の手間が最小限で済む。
Ericsson CTOの藤岡雅宣氏によると、屋内基地局はスモールセル整備における課題の1つで、Radio Dot Systemに対する関係者の関心は非常に高いという。すでに、VerizonやAT&Tなどと協力した試験運用計画について公表していたが、MWC 2014の会期中にもソフトバンクやVodafoneを含む6社が新たに試験運用を行うことを発表している。
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