インタビュー
» 2014年09月12日 09時13分 UPDATE

MVNOに聞く:端末も、サービスも、ショップもやります――“異色のMVNO”フリービットの戦略を石田CEOに聞く (1/2)

「日本のケータイ料金を1/3にする」――そんなスローガンを掲げてサービス、端末、回線を提供しているMVNOのフリービット。「ATELIER」と呼ぶ店舗を開設したことも話題を集めている。今回は同社の戦略を、代表取締役社長 CEOの石田宏樹氏に聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 最近では端末をセットにしたMVNOも徐々に増えているが、メーカーのグローバルモデルをそのままに近い形で調達しているケースがほとんどだ。こうした中で、異色の存在といえるのが、freebit mobile。同社は「PandA」と呼ばれるオリジナルモデルを手掛け、ドコモから回線を借りたMVNOとしてサービスを展開。端末と回線の両方を合わせて月2000円という低料金を打ち出し、注目を集めている。「日本のケータイ料金を1/3にする」という刺激的なキャッチコピーが掲げられたテレビCMを見たことがある方もいるだろう。

 freebit mobileは、サービス開始当初から「キャリア型」と呼ばれるビジネスモデルを志向し、サービス、端末、回線を一手に担っている。SIMカードだけでなく、端末までしっかり提供するのはそのためだ。こうした発想に基づいているため、販路やサポートにも力を入れている。freebit mobileは、まず福岡にターゲットを絞り、「ATELIER (アトリエ) 」と呼ばれる店舗を開設。その後、名古屋や東京にも販路を広げ、リアルな場での集客やサポートを行っている。

photo freebit mobileの旗艦店として、「ATELIER freebit 渋谷スペイン坂」が8月9日にオープンした
photophoto 店内ではfreebit mobileの端末「PandA」を自由に操作できる(写真=左)。オリジナルデザインのPandA用のケースも入手できる(写真=右)
photophoto ATELIER freebit 渋谷スペイン坂店内には、シニアの方や家族連れのお客さんも見られた
photophoto オペレーターと話しながら申し込み手続きができる機材も店内に設置されている(写真=左)。申込用紙はスキャンして送付する(写真=右)

 大規模なATELIERのほかにも、よりコンパクトなスペースで販売を行える移動式店舗「STAND」を開発。さらにはテレビショッピングを行うなど、小回りの利いた販売方法を次々と打ち出している。また、こうした戦略の一環として、8月20日には、パートナーがカスタマイズされたPandAを販売できる「パートナープログラム」を発表。第1弾として、賃貸物件を仲介するエイブルでPandAが販売される。

 キャリア型を志向するfreebit mobileだが、回線やサービスだけでなく、端末、店舗までを一手に手掛けるという点では確かに垂直統合的なビジネスモデルだ。むしろ、メーカー製のスマートフォンをそのまま売るようになり始めた既存キャリアよりも、各レイヤーをしっかりコントロールできているといえるかもしれない。もともとがIT企業だけにIP電話やリモートサポートなど、技術を駆使したサービスにも積極的だ。

 このように、MVNOの中では異色の存在といえるfreebit mobileは、どのような戦略に基づきサービスを行っているのか。また、なぜあえてMVNOという形でキャリア型のビジネスモデルを目指すのか。フリービットの代表取締役社長 CEOの石田宏樹氏の考えを聞いた。

“スマートフォンのサービス”をやりたかったわけではない

photo フリービット 代表取締役社長 CEO 石田宏樹氏

―― オリジナルの端末まで手掛けるMVNOは珍しいと思います。そこまでやる理由を、教えてください。

石田氏 もともと、山の上り方が違うんです。私たちはスマートフォンのサービスをやりたかったというより、ハードウェアを継続課金サービスにしたいと思っていました。ハードウェアが売り切りの状態だと、エコシステム的にもよくないですし、ビジネス構造的にもよくありません。15〜20年ぐらい前に「パーミッションマーケティング」という言葉が流行りましたが、あるハードが流行って満足いただければ、その上のサービスも買っていただける。そういうものを目指しました。

 ソニーの社長が出井さんだったころ、テレビを見るという体験を継続課金で払っていき、それがよければDVDプレーヤー、レコーダー、将来的にはコンテンツを買っていただくという提案をしたことがあります。そのときはソニーではできませんでしたが、自分としては信念を持っていました。

 そういう理由もあって、エグゼモードという会社を買収しましたが、うまく行きませんでした。なぜなら、デジタル機器にお金を(継続的に)払うというメタファーがなかったからです。ただし携帯電話だけは唯一、継続課金で購入するというメタファーがあります。スマートフォンは完全にコンピューターですが、人が手で持ってくれるものです。それは皆さんが“電話”と認識しているからです。コンピューターを身に着けるのにはメタファーが必要で、それを普及させる方法としてスマートフォンがちょうどいいときに出てきました。つまり、ハードウェアをどう流通させるかありきだったのです。

―― そこに、MVNOで回線を組み合わせたということですね。

石田氏 私たちの事業は固定通信から始めて、クラウドが出てきて、最後がハードウェアです。ハードウェアともともと得意だった回線を組み合わせて携帯電話事業者をやるというスキームですね。

 固定網ではそれだけのネットワークがあり、超大手以外のISPは、350社ぐらいが我々のバックボーンを使っています。光の世界からすると、モバイルのトラフィックはほとんど誤差に近い。あとは、ドコモさんから回線を借りれば、同じようなビジネスができます。

回線+端末で月額2000円を実現できた理由

―― 回線が月1000円、端末が月1000円で合計2000円というのはインパクトがありました。

石田氏 ただ、それは「スマホを変えるスマホ」のいち要素でしかありません。最初は価格がメディアの皆さんも伝えやすいですからね(笑)。結果として、そこがフィーチャーされましたが、ブランディングはかなり慎重にやっていきたいと思っています。

―― 独自の端末も込みで、その価格が実現できた理由はどこにあるのでしょうか。

石田氏 一言で言うと、垂直統合で中間マージンがないからです。そこに特許技術を加え、コストがかかるところをそぎ落としています。単純に、垂直統合ができるとシングルアーキテクチャーですべてを通せますから、コストは落とせます。

 端末については、今までも家電を作ってきたことと、(中国のデジタル機器メーカー)「aigo(アイゴ)」との連携が大きいですね。今のスマートフォンのコアは、AndroidのGoogleと、その周りでチップセットを作っている会社、さらにそれをリファレンスモデルにするエンジニアリングの会社です。aigoはそういうところと付き合いが深い。電話1本でフォックスコンのテリー・ゴウさんにつながったりしますからね(笑)。

―― その関係がPandAの開発にも生きたということですね。

石田氏 それまでにも、aigoと一緒に2機種、China Unicom(中国聯通)に端末を納入したことがあります。そのとき我々が担当したのはハードから上の部分で、aigoがハードを作っていました。規模にすると、数十万台のものをやった経験はあったということです。その機種を作るときも、コンセプトには関わっています。クラウドとどう連携するかといった部分への関与ですね。そういったことを、どっぷり1年ぐらいやってきた経験はあります。

 PandAでも、調達や部品のところは一緒にやることができました。ロットによって(現在のPandAは3rd Lot)関わり方は違いますが、初期のものはかなり関わりが強かったですね。

photo 「freebit mobile」のサービスコンセプト

「PandA 2」のような打ち出しも検討した?

photo

―― PandAは、すでに3機種目ですが名前を変えていません。改めてコンセプトを教えていただけますか。

石田氏 我々の提供しているのは、あくまでモバイルインターネットサービスで、端末だけではありません。モバイルインターネットサービスのインタフェースという位置づけがあり、極力個性を出さないような端末デザインにしています。ソフトで、フルスペックのスマートフォンからキッズケータイになったり、らくらくホンになったりと変化する。

 もともと、スマートフォンはソフトコントロールによっていろいろなことができるものです。それが、今はなぜかハードの差で争っています。開発構造が硬直化して、柔軟なことができていない。一方で、ファームウェアの部分にUIをコントロールできるミドルウェアを入れておけば、ダイバーシティを持たせることができます。そのために、ハードウェアはできるだけ個性をなくした形で、真っ白な箱に色をつけるようにしたかった。それが重要なポイントでした。

 PandAのコードネームは「キャンバス」でしたが、そこに絵が描けることを意味しています。実際、自分でデザインしたケースも送られてきますしね。

 でも大変だったんですよ。2013年の株主総会でPandAを見せたときも、「またハードをやるのか、絶対にやめてくれ」と言われましたし(笑)。11月に出したとき、やっと分かってもらえました。

―― 1st Lotと2nd Lotは本体が共通で、中身のスペックだけが上がっています。一方で、3rd Lotは外観まで変わっています。別の機種として、例えば「PandA 2」のような打ち出し方をする計画はなかったのでしょうか。

石田氏 自分にも、そういう悪魔のささやきがありました(笑)。ただ、取締役会で出井さんに「それはちょっと違う。端末が価値なのではなく、全体が価値」とのご指摘をいただき、危ないと思って踏み止まりました。

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