「複雑で分かりにくい」「結局いくら安くなるのか」――鳴り物入りで発表された「ドコモ光」だが、仕組みが複雑という声はよく聞く。データパックによって異なる割引額や、プロバイダーを選べて金額も異なるといった要素が重なり、一見しただけでは理解しにくい構造になっているからだ。
こうした声に対し、ドコモの経営企画部 事業推進室長 梶原弘道氏は「我々のプレゼンの仕方もよくなかった」と認めつつ、「そもそも出だしの金額が違うため、割引額だけで判断してほしくない」と語る。総額を見れば、他社のセット割引よりドコモ光の方が優れている点が多いというのが、その根拠だ。また、ドコモ光では「割引を訴求する販売手法はやめて、価値提案をしたい」という思いもあったという。
では、ドコモ光はどのような点が優れているのか。梶原氏に、その点を改めて解説してもらった。料金はいずれも税別。
―― まず、ドコモ光が安くなるという点を改めて解説していただけないでしょうか。
梶原氏 何が安くなっているのかが、(発表では)見えにくかったですね。まず、安くなるのがISPと一体になった料金です。今、フレッツの戸建だと5200円、ISPは1000円ぐらいで、6200円ぐらいがかかっています。これに対して、ISPさんと我々が協力することで、双方で営業コストの低減分を引き、5200円という料金を作りました。ここで、まず料金は下がります。
また、ドコモのケータイ(携帯電話)を持っている方は、大半がケータイとの相乗効果で安くなります。「光シェアパック30」は最大で3200円割引になりますし、「ずっとドコモ割」も一緒に効きます。これは、ドコモにしかないサービスで、シェアの基本です。見せ方としては別々になっていますが、ドコモ光、ドコモ光パック、ずっとドコモ割の3つで安くなるわけです。
ドコモ光は、データパックをアップセルして、外でも自由に使っていただきたいという思いも強いサービスです。1人の場合、今「データSパック」の人が「データMパック」にしても、お安くなり、よりいっぱい使えます。家庭でWi-Fiを使っていて、外でもこんなに使うのかと思われるかもしれませんが、昔に比べてコンテンツはどんどんリッチになっていることもあり、お出かけ先でYouTubeを見ることも普通になりました。Facebookで動画を上げることも増えています。
ただ割引を訴求する販売手法はやめていこう、価値提案をしたいと料金を作りました。本当なら、携帯代にプラス1000円でドコモ光を使っていただけるという見せ方もできました。お客様の負担感と手に入れられる価値を測って、そういう設計にしていたからです。ところが、ガイドラインにはそういう見せ方はダメと書かれていた。結果として、ガイドラインを順守した形になります。
ガイドライン案の中には、「電気通信役務の料金が適正なコストを著しく下回ることがないように」とあります。ドコモ光がプラス1000円で使えますというと、原価が1000円であるように見えてしまう。割引という形で見せることになったのは、そのためです。
―― 一律で割引にしなかったのは、なぜでしょうか。また、プロバイダの料金も2種類に分かれてしまったのが、複雑に見える要因になっていると思います。
梶原氏 いっぱい使っていただく方ほど、お得になるようにしたかったからで、他社のように1410円引きますという見せ方はしませんでした。
ISPの料金も数種類あり、そこが問題だという認識はしています。一方で、1人1人のお客様にとっては、非常に使いやすいのではないでしょうか。ISPでいうと、5200円と5400円という2つの料金に、単独型があります(戸建の場合)。単独型もお安くなっているので、すべてのISPで便益を得ていただける。セットで、便益がさらに大きくなる人もいます。
正直に申し上げると、(料金は)1本で行きたかったのですが、ISPの中にも「それはいい」「それはいやだ」という反応があり、ご要望を受ける形でこの料金になりました。ISPの料金の多寡によって決まっているということです。その代わり、それをやることでほぼすべてのISPをカバーでき、17社さんと一体型を提供できるようになりました。結果として、7割以上のお客様が、そのままISPの変更をせずに(一体型プランで)行けますし、金額さえ気にならなければ、ほかのISPの方もドコモに来ていただけます。
このことで、お客様が自らPCで再設定したり、メールアドレスの変更の手間がなくなります。一方で、ソフトバンクさんの場合は、ISPが1社しかないので、必ずそれが発生します(もともとYahoo!BB以外だった場合)。auさんは提携者はありますが、一番大きなOCNなどが提供されておらず、カバーはドコモが多くなっています。
―― 他社と比べた場合、割引額が分かりづらいのですが、安いというのはどのような意味でおっしゃっているのでしょうか。
梶原氏 例えば、シェアパック10だと元値から1200円安くなりますが、auの場合、それぞれが高い(電話代などが必要な光回線の料金や、データパックを家族別々で契約した場合)ので、積み上がって結構な金額になります。極端な例ですが、100円に1000円の価格をつけて500円割引にしたのと、100円に500円の価格をつけて200円の割引をしたのでは、後者の方が安い。宣伝で値引きばかり言うのをやめたかったのは、そこにあります。割引金額だと、お客様をミスリードすることになりますから。
また、ずっとドコモ割が適用される「プレミア」(11〜15年契約)や「グランプレミア」(16年以上)も、少ないように見えて、すでにユーザーの半数以上に適用されています。10年以上、ドコモをご利用いただいている方は半分以上いるのです。
一方で、(auの場合)割引条件として、固定電話が必須になっています(結果として、固定の料金が500円高くなる)。うちはカケホーダイを(携帯側で)必須にしているので、なんで固定電話をつけないといけないのか、ということでやめました。
―― ひかり電話をドコモが提供しないのは、あえてだったんですね。
梶原氏 あえてやめています。それを必須にするのはどうなのかというのは、経営幹部も含めて議論してきました。ですが、やはりカケホーダイを提供しているスタンスと矛盾する。であれば、我々としては、必須条件から外した方がいいとなります。
もちろん、NTTさんは卸を提供しているので、それを受ければサービスはできます。ただ、電話が何らかの都合で料金が払えず止まってしまったときも、止めたり開けたりをリアルタイムでできません。ドコモの電話であれば、停止になっていてもコンビニで支払えば、すぐに開きます。(ひかり電話でそれができないのは)システムが全部分かれているため、ドコモ側からリアルタイムに止めたり開けたりができません。全部できるようになってからの方が、お客様の利便性につながります。
現状だとNTTとの契約は残るので、今はそちらを使っていただき、十分ユーザーに提供できるようになったらドコモに入れる方向で検討しています。
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