Xperia Zシリーズは終わりを迎えるのか?――「Xperia Z4」で感じた“疑問と期待”

» 2015年05月11日 20時11分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソニーモバイルコミュニケーションズの最新スマートフォン「Xperia Z4」が今夏、日本で発売される。OSはAndroid 5.0(Lollipop)となり、プロセッサも8コアに進化、カメラやオーディオもさらに強化したが、いろいろと疑問に思うことも多い。Xperia Z4の発表を受けて「おや?」と感じたことをまとめていきたい。

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photo 「Xperia Z4」

疑問その1:なぜ、このタイミングで日本で発表されたのか

 Xperia Zシリーズは、ソニーモバイル製スマートフォンのフラッグシップ(最上位)モデルだ。2013年1月に「Xperia Z」を、2013年9月に「Xperia Z1」を発表してからは、「Xperia Z2」→「Xperia Z3」と、およそ半年ごとに最新モデルを発表してきた。だがソニーの経営方針見直しに伴い、Xperiaのフラッグシップモデル投入は1年に1回へと変更を余儀なくされた。

 前モデルのXperia Z3が発表されたのは2014年9月の「IFA 2014」だから、新方針に沿うと、Xperia Z4が発表されるのは1年後のIFA 2015だったはずだ。しかしXperia Z4が発表されたのは、IFA 2014から約7カ月後の4月20日だった。

 Xperiaの最上位モデルともなれば、「CES」「Mobile World Congress(MWC)」「IFA」など、世界各国からメディアが集まる展示会で大々的に発表されるのが定石だ。しかしXperia Z4は日本のソニー本社で、言うなればひっそりと発表された。ソニーモバイルのグローバルサイトでもXperia Z4についての情報はプレスリリースを含め、いっさい出ていない。4月でなく、その1カ月前の3月に開催されたMobile World Congress 2015でも発表できただろう。そのMWCで発表されたソニーモバイルの新機種は「Xperia Z4 Tablet」と「Xperia M4 Aqua」のみ。4月20日の発表会で触れたXperia Z4の完成度は高く、MWCでの展示も間に合ったはずだ。

 では、なぜXperia Z4はあえてタイミングをずらして日本で発表されたのか。おそらく、Xperia Z4は日本を中心に販売し、海外での販売はXperia Z〜Z3と比べると、より限定された地域になるのだろう。Xperia Z4の海外での発売は現時点では未定だが、発表会ではグローバル端末とおぼしき(素の状態の)Xperia Z4が展示されていたので、海外でも発売する準備は整っているのだろう。

 ソニーモバイルの代表取締役社長 兼 CEOの十時裕樹氏は、このタイミングでXperia Z4を発表した理由について「中期的な方向性として、(フラッグシップ機の発表は)1年に1回に持っていきたいと考えているが、個別の通信事業者のご意向と、個別の市場の動向があるので、それに合わせて多少の調整はある」とコメントしている。日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手キャリアが「夏」と「冬」という年に2回、新機種を発表している事情があり、そこに合わせたと考えるのが妥当だ。通信キャリアの発表前にメーカー自らが発表したのは、4月にサムスン電子が発売した「Galaxy S6」と「Galaxy S6 edge」への乗り換えに「待った」をかける思惑もあったのだろう。

photo 4月20日にXperia Z4を発表したソニーモバイルの十時社長

疑問その2:製品名が「Z4」である必要があったのか

 Xperia Z4を最初に見たときの印象は「Xperia Z3のアップグレード版だなぁ」だった。デザインはXperia Z3がベースになっており、パッと見だと区別がつかないほど。カラーも色味を変えた程度で、4色ともXperia Z3と同じ色を採用している(今回もパープル無しが残念でならない)。

photophoto 左がXperia Z4、右がXperia Z3。正面から見るとほとんど区別がつかない

 過去のモデルを振り返ると、Xperia Z1はメタルフレームを採用して高級感を上げ、Xperia Z2ではメタルフレームと樹脂を一体成形した「インサートモールディング」によって持ちやすさを向上させた。そしてXperia Z3ではメタルフレーム+背面ガラスのシームレスなボディに仕上げ、美しさと持ちやすさを両立させた。……という具合に、これまではモデルチェンジを経るごとにデザイン面でのブレークスルーを果たしてきた。しかしXperia Z4ではメタルフレームの輝度を高めてコーナー(角)の耐久性を強化したのみという小さなブラッシュアップにとどまった。

 機能面についてもXperia Z1では「Gレンズ」、Xperia Z2では「ノイズキャンセリング機能」、Xperia Z3では「単体でのハイレゾ再生」「超高感度なカメラ」といったブレークスルーがあったが、Xperia Z4では「おお!」と思える新要素は見あたらない。強いていえばBluetoothの高音質コーデック「LDAC」の採用やインカメラの機能アップなのだろうが、上記3つほどのインパクトは乏しい。Android 5.0は国内のXperia Z3やZ2にもいずれ提供されるだろうし、普段使いで4コアと8コアの性能差をどれだけ体感できるかは微妙だろう。

 Xperia Z4を取り上げている海外のメディアやブログを見ると、「これはXperia Z3のマイナーチェンジモデルでは?」「“Xperia Z3 Neo”じゃないか」「がっかりした」というネガティブなコメントが目立つ。Xperia Z3/Z4の関係は、iPhoneでいうところのiPhone 5/5sに近いのではないだろうか。

 Xperia Zシリーズの独立した製品名を冠するのなら、生まれ変わった何かをもう少し見せてほしかった。Z4は、Xperia Z3の派生モデルと見られても仕方がないだろう。それこそ「Xperia Z3 Neo」、あるいは日本発のモデルとして「Xperia J4」などの製品名にしてもよかったのではないだろうか。

 余談だが、過去には「Xperia acro HD」「Xperia GX」「Xperia Z1 f」など、日本発売の後に海外で発売された機種もある。上記3機種の海外での製品名は「Xperia acro S」「Xperia TX」「Xperia Z1 Compact」で、あくまで派生モデルという扱いだった(と思う)。今回、ソニーモバイルの純血といえるフラッグシップモデルが“日本でのみ”発表されたのは異例のことだといえる。

「Z4」=「Xperia Zシリーズの完成形」が意味するものとは?

 ソニーモバイルはZ4のことを「Xperia Zシリーズの完成形を目指した商品」だとうたっている。Zシリーズでは、初代のXperia Zから一貫して「オムニバランスデザイン」を採用してきた。それまでのXperiaといえば、弧を描く「Xperia arc」や、透明なパーツ(Floating Prism)を採用した「Xperia NX(海外版は「Xperia S」)など、さまざまなデザイン言語を提案してきた。

 Xperia Zの登場からすでに2年以上がたち、オムニバランスデザインも、正直なところマンネリ化してきた感は否めない。Xperia Z4を完成形とすることで区切りをつけ、次期モデルでは全く新しいデザインを提案してくれることが期待される。いや、ひょっとしたらXperia Zシリーズ自体がZ4で終わりを迎え、次のXperiaには新しいシリーズ名が付与されるのかもしれない。“完成形”を強調するために、あえて「Z4」と名付けた……と考えると、納得がいく。

 とはいえ、もっと額縁(ディスプレイのまわり)を狭めることはできるだろうし、カメラでは光学ズーム、オーディオではフルデジタルアンプ「S-Master」も欲しい。握ったときにサイドキーが手に当たるのは毎回違和感を覚える。……などなど、Xperiaはスマートフォンとしてはまだ進化、改善の余地が残されている。

 ソニーは、2015年度のスマートフォン出荷台数を14年度の3910万台から3000万台に減らす見通しであることを4月30日に発表している。この差分は中国市場からの撤退や、低価格帯モデルを減らすことによるもので、今後は販売台数と収益性を重視し、高付加価値のモデルに注力していく。そしてグローバルでは年に1回ペースでのモデルチェンジ……となると、抜本的な進化を果たした本命の新Xperiaは、2015年秋ごろにグローバルで大々的に発表されるはずだ。

 Xperia Z4の発表を受けて「がっかりした」という人は、秋まで待つのが得策といえそうだ。

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