日本MS新体制で、「Lumia」シリーズの国内展開はどうなる?「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線(1/2 ページ)

» 2015年07月27日 12時11分 公開
[山口健太ITmedia]

 日本マイクロソフトは7月2日、7月から新会計年度を迎えたことに伴い、毎年恒例の説明会を開催した。会長職に就いた樋口泰行氏に代わって新社長に就任した平野拓也氏は、国内でのモバイル事業にも言及。端末パートナーとしてWindows Phone 8.1端末「MADOSMA」を国内で発売したマウスコンピューターや、Windows 10 Mobile端末の投入をいち早く発表したFREETELの名前を挙げた。

photo 2015年7月1日より、日本マイクロソフトの新社長に就任した平野拓也氏

 さらに平野氏は、未発表のパートナーがWindowsプラットフォームのモバイル端末を開発していることを示唆。2015年後半とされるWindows 10 Mobileの登場に向けて、期待感を語った。

 一方で米Microsoftは、スマートフォン事業に関する大規模なリストラを発表。Nokiaから買収した携帯電話事業について、7800人の人員削減と76億ドルに上る減損計上を発表するなど、2014年7月に発表した人員削減に続き、再び事業規模の縮小を進める形になった。

 果たしてマイクロソフトの今後のスマートフォン事業はどうなるのか。今後、日本でLumiaシリーズのスマートフォンを販売する可能性はあるのか、最新状況を解説する。

Lumiaを日本で売らない理由は「準備不足」

 日本マイクロソフトでは、社内端末として技適を通した「Lumia 830」を導入している。その直前まで、2011年に発売したKDDIの「IS12T」を使用していたものの、OSのサポート期限が切れていたり、LTEに非対応だったりと、新端末への更新ができずに限界を超えていた。そのため、多くの従業員がiPhoneやAndroid端末との2台持ちで乗り切っていたようだ。

 Lumia 830はすでに日本マイクロソフト社内に広く浸透しており、説明会後の懇親会に参加した複数の役員が、実際にLumia 830を所有していた。NTTドコモのSIMカードを使用しており、プラチナバンドこそつながらないものの、IS12Tより快適に利用できているという。

photo 日本マイクロソフト社内で活躍するLumia 830。なお、Windows 10 Mobileのプレビュー版はまだ不安定ということもあり、業務には利用していないとのこと

 米MicrosoftがNokiaの携帯電話事業の買収を完了したのは2015年4月のこと。それ以前も、それ以後もLumiaシリーズは国内で発売されていないため、Lumia 830が技適を通った初めてのLumiaということになるようだ。

 このLumia 830を、日本国内で一般向けに販売することはないのだろうか。これまで日本マイクロソフトは、Lumia 830をあくまで社内用端末と位置付けており、一般向けに販売する計画はないと回答してきた。

 その具体的な理由については、Lumiaシリーズを国内で販売する準備がまだ整っていないからであるという。「国内へのLumiaの展開があるとすれば、我々が勝てる、と確信できたときになるだろう」(日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ リテールビジネス統括本部長の横井伸好氏)との意向を示した。

 これは、Windows Phone 8.1端末として初めて日本で発売された「MADOSMA」に対する評価を見れば、明らかだろう。基本的なOSの動作は軽快で安定しているとしながらも、国内向けのアプリやサービスは不足しており、2011年のWindows Phone 7.5の時点から環境は大きく変化していない。IS12T以降、4年近くに渡ってWindows Phone端末の投入が途絶えていたことを考えれば、無理もないだろう。

 だが、マウスコンピューターはこうした状況を踏まえながら「切り込み隊長」として飛び込んでいき、FREETELもそれに続こうとしている。しかし企業規模の違いを考えれば、リスクを取るべきなのは日本マイクロソフトではないか、とも考えられる。

日本マイクロソフトに求められる高い信頼性

 なぜ、日本マイクロソフトはWindows Phoneの販売でリスクを取らないのか。その背景には、同社の立ち位置が影響しているように思われる。例えばWindowsタブレットは、海外市場に比べ、日本国内でのシェアが例外的に高い。その中でも「Surface」シリーズは家電量販店でもひときわ目立つ存在だ。

 手頃なサイズ感の「Surface 3」が登場してからは、来店客がひっきりなしに購入を検討している場面を見かける。マイクロソフト純正のタブレットという点に魅力を感じるユーザーも多いようだ。また、日本マイクロソフトとしても自社製タブレットの売れ行きに手応えを感じており、自信を深めているとみられる。

 このSurfaceシリーズの横にLumiaを並べて販売すれば、なにが起きるだろうか。Windows Phoneのことをよく知らないユーザーが手に取り、次々に売れていくだろう。だが、Surfaceがキャッチコピーとして採用する「これさえあれば、なにもいらない」と言い切るほどには、Windows Phoneは成熟していない。アプリがないと不満を漏らせば、「では、ご自分で開発してください」と指摘されかねない状況だ。

 スマートフォン黎明期とは異なり、いまやスマホは社会のインフラとして欠かせない存在だ。多くのユーザーはiPhoneやAndroid端末のサービスレベルに慣れており、期待度は極めて高い。もしLumiaを手にしたユーザーが「こんなはずじゃなかった」と思えば、Windows Phoneだけでなく、Surfaceシリーズの売れ行きや日本マイクロソフトの信頼性そのものがダメージを受ける可能性がある。

 これまで日本マイクロソフトは「日本に根付き、信頼される企業」との目標を立て、単なる外資系企業の日本法人ではなく、国内企業や政府などから真に信頼される企業になるよう努力してきたという。関係者と話していても、「とりあえずLumiaを売ってみる」などという中途半端なことはできない、という緊張感が伝わってくるのだ。

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