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» 2015年11月28日 10時00分 UPDATE

課題解決に向けた論点とは――総務省、携帯料金タスクフォースの第4回会合を開催 (1/2)

安倍内閣総理大臣の発言から始まった、携帯電話料金の値下げに向けた検討。提言をまとめるために設置されたタスクフォースの第4回会合では、議論する課題の絞り込みと、課題解決のための論点整理を行った。

[井上翔,ITmedia]

 総務省は11月26日、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第4回会合を開催した。

 このタスクフォースは、「利用者にとって、より低廉で利用しやすい携帯電話の通信料金を実現するための方策を検討する」ため、同省のICTサービス安心・安全研究会に設置したもの。第1回の会合では、携帯電話の料金とサービスの提供条件に関する現状と課題を洗い出した。第2回の会合では、消費者相談員の団体、大手キャリア(MNO)、仮想移動体通信事業者(MVNO)からの意見聴取と質疑が行われた。

 第3回の会合は非公開で行われ、携帯電話の販売代理店、MNO、MVNOからの意見聴取と、それを踏まえた自由討議を行った。

 今回(第4回)の会合では、第1回会合で議論に上った「諸外国の端末の実質負担額」と韓国の「移動通信端末装置流通構造改善に関する法律」に関する調査報告、過去3回の議論を踏まえた論点整理を実施した。

会合開始前の様子 第4回会合開始直前の様子

端末の実質価格が「マイナス」になるのは日本だけ

 日本の携帯電話販売において、特にMNP(携帯電話番号ポータビリティ)時に過剰なインセンティブ(販売奨励金)が発生することが問題視されている。また、インセンティブとMNOの月額料金割引(「月々サポート」「毎月割」「月月割」)を前提として端末代金をつり上げているのではないか、という指摘もある。

 では、実際に海外と比べるとどうなのか。今回の会合では、日本(NTTドコモ)、米国(Verizon)、英国(EE)、フランス(Orange)、ドイツ(T-Mobile)の5カ国における「iPhone 6s(64Gバイトモデル)」「Xperia Z5」「Galaxy S6 edge」において2年間の実質価格の比較調査結果が報告された。料金・端末価格での各国の特徴は以下の通り。

  • 日本:実質負担額は契約方法によって異なる
  • 米国:端末代金の割引は一切なし
  • 英国:料金プランと端末価格が連動(「高いと安い」「安いと高い」が成立)
  • フランス:通信プランを2年契約にすると割引
  • ドイツ:イギリスとフランスの両方の特徴を併せ持つ

 これらを踏まえて比較すると、3機種ともに日本でMNP契約した場合の実質価格が一番安くなる。しかも、Xperia Z5とGalaxy S6 edgeは端末価格より割引額が大きく、実質価格が「マイナス」となる。つまり、回線のみで購入するよりも、端末付きで購入した方が明らかに得をするようになっているのだ。このような販売方法をとっているのは日本だけであるという。

「iPhone 6s(64Gバイトモデル)」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より) 「iPhone 6s(64Gバイトモデル)」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より)
「Xperia Z5」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より) 「Xperia Z5」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より)
「Galaxy S6 edge」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より) 「Galaxy S6 edge」の実質価格比較(タスクフォース事務局資料より)

法律で販売奨励金規制を行った韓国

 韓国では、販売奨励金による値引き競争が日本以上に激しく、2010年に放送通信委員会が端末1台あたりの販売奨励金に上限規制を設けた。しかし、上限を超えた販売奨励金を支給する違反も度々見受けられた。世帯の平均通信費の急激な増大もあり、料金面での透明性確保と不公平間の是正が課題となっていた。

 この課題を解決するため、何度か国会において議員立法が提起され、2014年5月には「移動端末通信装置流通構造改善法」が成立、同10月に施行された。この法律では、以下のような規制が設けられている。

  • 契約形態・プラン・利用者の条件などによる不当に差別的な補助金支給の禁止
  • 補助金支給に上限を設ける(3年間の時限規定、発売から15カ月経過した端末は除外)
    通信事業者の補助金:放送通信委員会が公告で上限を定める(現在は33万ウォン)
    代理店・販売店の補助金:通信事業者が定めた補助金の15%を上限に追加補助金を支給できる
  • 補助金と連動する個別契約を禁止(利用規約とは別に補助金を支払う条件を設けてはいけない)
  • 通信事業者は、補助金を受けない(受けられない)契約者に対して、補助金と同等の料金割引(現在は20%)などを提供する義務を負う
  • 通信事業者・端末メーカーは、代理店・販売店に対して差別的に補助金を支給したり、特定プランに誘導するように指導したりしてはいけない

 これらの取り組みの結果、同一キャリア・同一機種・同一プランにおいては、販売店間での有意な価格差はなくなり、過剰な販売競争はなくなった。

 端末販売においては、MNP・新規の優遇がなくなったことから機種変更の比率が増大した。端末の売れ方については、高価格帯(ハイエンド端末)には大きな変化がなかったものの、中価格帯(ミドルレンジ端末)の比率が減少し、代わりに低価格帯(エントリー端末)の比率が高まっている。それに伴い、低価格帯端末に対する販売奨励金の水準が上昇傾向にある。

補助金上限額の実例 契約形態による補助金の不当な差別が禁止され、補助金自体に上限設定が行われた結果、機種変更での購入者が増加(タスクフォース事務局資料より)
価格帯別の端末販売割合 法施行後、中価格帯端末の販売比率が減り、低価格帯端末の販売比率が高まった。高価格帯端末はそれほど変化がなかった(タスクフォース事務局資料より)

 料金プランでは、高額プランの加入者比率が大幅に減少し、代わりに低額・中価格プランの加入者が増えている。それに伴い、加入料金プランの平均値も下がっている。なお、補助金を受けない(受けられない)場合の代替割引が適用されている契約数は、携帯電話契約全体の5%弱とのことだ。

料金プラン選択の変化 高価格プランの割合が大幅に下がり、特に中価格プランの割合が高まっている(タスクフォース事務局資料より)

 この法律の施行に伴うマイナス面は少なくない。まず、先述のとおり販売店間での有意な価格差がないため、販売競争が鈍化した。結果として、契約者の「固定化」が進み、端末販売台数の減少も加速している。通信事業者は少しでも端末販売を上向かせるためにマーケティング(宣伝)費用を増やし、収益を圧迫しつつある。さらに、販売不振や補助金規制の影響で、顧客との接点である販売店も減少している。

 もちろん、プラス面もある。まず、MNP・新規・機種変更で不当な販売価格の差がなくなったために、消費者にとっては公平性や透明性が増した。また、通信事業者間でサービス面での競争が発生し、新規・MNP時の事務手数料が廃止(無料化)され、2年契約プランの自動更新がなくなった。さらに、販売店の減少を穴埋めするように通信事業者の直営店や代理店は増加しているため、事業者・代理店と契約者との距離はある意味では縮まっていると捉えられる。

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