2つの「UQ」が合併 SIM即日再発行のMVNOが登場――2015年10月データ通信編格安SIM定点観測(1/4 ページ)

» 2015年11月10日 10時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 8月と9月のデータ通信対応MVNOサービス(格安SIM)では、サービス改善の競争が活発になってきたことや、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)が新しいサービスを立ち上げ、一時最安値を達成したことが大きなトピックだった。

 10月は、KDDI系MVNO事業者とモバイルブロードバンド事業者が合併したこと、インターネットプロバイダのMVNOサービスがSIMカードのサイズ変更・再発行を店頭で受け付けるようになったことが大きなトピックとなった。さっそくまとめてチェックしよう。(記事中の料金は、特記のない限り税別。10月31日までの情報をもとに掲載)

2つの「UQ」が1つに(沖縄県を除く)

 KDDIバリューイネイブラー(KVE)は、KDDI(au)回線を利用するMVNOサービス「UQ mobile」を沖縄県以外で提供しつつ(※1)、au回線を利用するMVNOを支援するMVNE(※2)事業を展開してきた。

※1 沖縄県内のUQ mobileは、沖縄バリューイネイブラー(沖縄セルラー電話の子会社)が提供している。サービス内容は、他の46都道府県で提供されるUQ mobileと同じ
※2 Mobile Virtual Network Enabler:MVNOの業務を代行する事業者のこと。自らもMVNOとしてサービスを提供している場合もある

 10月1日、UQコミュニケーションズはKVEを吸収合併した。UQコミュニケーションズは、モバイルブロードバンドサービス「UQ WiMAX」と合わせて、沖縄県以外でのUQ mobile事業や、au回線を利用するMVNOに対するMVNE事業も手がけることになる。

 “新生”UQ mobileは、UQ WiMAXとの「相乗効果」で普及を図る計画だ。その第一歩として、UQ WiMAX取扱店でのUQ mobileの販売を開始したり、広告にUQ WiMAXと同じくガチャピンとムックを起用したりするようになった。

 また、UQ mobile単体の使い勝手の向上も欠かしていない。11月からは、従来対応していなかった高速通信容量の翌月繰り越しと追加購入(データチャージ)と、高速通信のオン/オフ切り替え機能(ターボ機能)を追加し、サービス面の強化を図る。

 今後、2つの「UQ」は、どのように相乗効果を発揮していくか、見逃せない。

UQ mobileとUQ WiMAX UQコミュニケーションズがKVEを吸収合併したことで、「ブルーガチャムク」がUQ mobileのPRにも登場

「IIJmio」が店頭でのSIMカードサイズ変更に対応

 MVNO各社は、家電量販店などと提携し、店頭窓口の拡充に努めてきた。その主目的は、音声通話対応プランにおいてMNP(携帯電話番号ポータビリティ)の即日転入に対応することにある。9月から順次対応が始まっている「遠隔アクティベーション」と合わせて、MVNOサービスの契約時における“壁”は無くなった、と言っても良いだろう。

 しかし、契約後の“壁”はいまだに残っている。それは「SIMカードのサイズ変更・再発行」だ。例えば、端末の買い換えに伴いSIMカードのサイズを変える場合、店頭に当該MVNOの窓口があったとしても対応できず、Web・電話窓口に問い合わせてSIMカードのサイズ変更(再発行)を申し出ないといけないのだ。この場合、再発行が成立した段階で手元のSIMカードは無効となるため、通信できない期間がどうしても生じてしまうのだ。

 そんな中、インターネットイニシアティブ(IIJ)が10月14日から、ビックカメラグループと協業して展開する「BIC SIMカウンター」において「BIC SIM」を含む「IIJmio高速モバイル/Dサービス」のSIMカードをその場でサイズ変更・再発行できるサービスを開始した。最大3枚のSIMカードでデータ通信容量を共有する「ファミリーシェアプラン」のSIMカードの即日追加にも対応する。

 即日手続き時は、手数料が3000円(通常の手数料2000円+即日発行手数料1000円)となるものの、通信の空白期間をほぼゼロにできるという意味では非常にありがたいサービスである。IIJの取り組みに追随するMVNOの登場に期待したい。

IIJの「BIC SIMカウンター」拡充内容 IIJは、ビックカメラグループに設置する「BIC SIMカウンター」でSIMカードの即日サイズ変更・再発行を受け付け始めた(一部店舗を除く)。機種変更時やSIMカードの故障・盗難・紛失・故障時に通信できない時間を大幅に短縮できる

デメリットを知らずに「格安SIM」を契約する人が増えている

 経済財政諮問会議における安倍晋三首相の発言から、総務省のICTサービス安心・安全研究会に「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が設置された。このタスクフォースでは、「利用者にとって、より低廉で利用しやすい携帯電話の通信料金を実現するための方策を検討する」ことになっているが、その一環として「MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進」も重要な検討課題となっている。

 10月26日に開催された第2回会合では、消費生活相談員の団体からMVNOサービスに寄せられた消費者(契約者)からの相談内容が報告された。

 MVNOは、大手キャリア(MNO)から無線通信設備などを借り受けてサービスを提供する。多額の設備投資が不要である分、MNOよりも安い月額料金で利用できる。しかし、MNOよりもサポート窓口が少ない、端末のサポートは原則として別である、通信速度もMNOと比べて遅い傾向にある……といった欠点もある。

 会合で報告された相談内容を読むと、「MNOと同じ品質のサービス・サポートを、より安い料金で受けられる」と考えている人が筆者(あるいはITmedia Mobileの読者の皆さん)の想像以上にいることがうかがえる。

 先月も触れた通り、ここ数カ月、格安SIMはサービス面での改善競争が活発だ。しかし、タスクフォースでの議論でも明らかとなったように、「格安」ばかりに目が行ってしまい、MNOとのサービスの違いを理解せずに(あるいは説明されずに)契約してしまう人も少なからずいる。MVNOが、宣伝や契約時の説明により配慮が求められていることは自明だろう。

 一方、契約する側である私たちも、サービス内容や契約条件に不明点があったら、それを解消してから契約を結ぶという姿勢を持つことが大切だ(参考記事)。「消費者」であることに甘えずに、より良いサービスを契約できるようになりたものである。

第2回タスクフォースの様子 「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第2回会合の様子。傍聴席は満員で、携帯電話料金やMVNOに対する関心の高さがうかがえた

まとめ(新情報は赤線)

  • 「BIGLOBE LTE・3G」の「ライトSプラン」と「12ギガプラン」が値下げ。
  • 沖縄県以外での「UQ mobile」のサービス提供元がUQコミュニケーションズに変更
  • 「DMM mobile」がLTE通信(225Mbps)を利用できる9プランで最安を記録(1Gバイト:590円/月、2Gバイト:770円、3Gバイト:850円/月、5Gバイト:1210円/月、7Gバイト:1860円/月、8Gバイト:2140円/月、10Gバイト:2190円/月、15Gバイト:4570円/月、20Gバイト:6090円/月)
  • 日本通信の「b-mobile SIM 高速定額」は、月1980円で下り最大225Mbps/上り最大50MbpsのLTE通信が使い放題
  • 速度制限付きで月額500円未満で利用できるのは「DMM mobile ライトプラン」(200kbpsで無制限、440円)、「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」(250kbpsで無制限、445円)と「ServersMan SIM LTE」(250kbpsで無制限、467円)

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