au系MVNOの動きが活発に DMM mobileは“対抗”値下げとプラン新設――2015年7月データ通信編格安SIM定点観測(1/4 ページ)

» 2015年08月04日 15時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 6月のデータ通信対応MVNO通信サービス(格安SIM)は、KDDI(au)回線を利用するものが久しぶりに登場し、「NifMo」のプロモーションプランに対し「DMM mobile」が対抗値下げを実施したことが大きなトピックだった。

 7月は、au系のMVNOサービスが新たに2つ登場。大手電機メーカー系MVNOが“本腰”を入れて行った料金プランリニューアルに対し、いつもどおりにネット通販系MVNOが“対抗値下げ”とサービス改善を行うなど、6月以上に話題が多かった。(記事中の料金は、特記のない限り税別)

au系MVNOサービスが新たに2つ登場

 7月、au回線を利用するMVNOサービスが新たに2つ登場した。九州通信ネットワーク(QTNet)の「BBIQスマホSIM a」と、あなたの幸せが私の幸せ世の為人の為人類幸福繋がり創造即ち我らの使命なり今まさに変革の時ここに熱き魂と愛と情鉄の勇気と利他の精神を持つ者が 結集せり日々感謝喜び笑顔繋がりを確かな一歩とし地球の永続を約束する公益の志溢れる我らの足跡に歴史の花が咲くいざゆかん浪漫輝く航海へ(あなたの幸せが私の幸せ)の「ハピネスモバイル」だ。ハピネスモバイルは7月23日に、BBIQスマホSIM aは8月3日にそれぞれサービスを開始している。

 QTNetでは、ドコモ回線を利用するMVNOサービス「BBIQスマホSIM d」を提供中で、au回線を利用するKDDIバリューイネイブラー(KVE)のMVNOサービス「UQ mobile」も販売している。今回加わるBBIQスマホSIM aは、UQ mobileとは異なるサービスで、料金体系も含めて独自のものとなっている。

 これにより、「BBIQスマホSIM」は、個人契約ができるMVNOサービスとしては初めて、マルチキャリア対応を果たしたことになる。ただし、先にマルチキャリア化を表明したケイ・オプティコムの「mineo」のように、回線提供者を超えたパケットシェアやパケットギフトには対応していない。

photo au回線を利用する「BBIQスマホSIM a」の提供で、先んじて個人向けサービスのマルチキャリア化を達成したQTNet

 一方のハピネスモバイルは、6月分の定点観測に登場した出雲ケーブルビジョンの「ICVモバイル」と同様、KVEのモバイルサービス基盤をベースとし、UQ mobileと同じ料金プラン、同じ端末を提供する。月額利用料金から毎月10円を財団を通してカンボジアの教育環境向上のために寄付するという独自要素はあるものの、大きな差別化には至っていない。

 サービスメニューをMVNEと同一にすることは、MVNOサービスを迅速に始められるというメリットがある。事実、ハピネスモバイルは発表からわずか5日後の7月28日からサービスを開始している。事前の準備はもちろんしていたのだろうが、1からサービス構築をしていたらここまで迅速に対応できはしない。ただし、どのMVNOも同じようなサービスメニューだと、「どうしてもここじゃなきゃイヤだ!」という動機に欠けることも事実だ。もうすこし、プランやサービス面での差別化を進めないとまずいと思うのだが……。

photo 「ハピネスモバイル」はMVNEであるKDDIバリューイネイブラーの「UQ mobile」と同じサービスメニュー

パナソニックの「Wonderlink」が料金プランをリニューアル

 パナソニックのMVNOサービス「Wonderlink」は7月16日、料金プランのリニューアルを行った。

 「LTE Iシリーズ」では、「2Gシングル」プランの高速通信可能容量を3Gバイトに引き上げて新しい「3Gシングル」プランとした上で、高速通信容量が5Gバイト、7Gバイトとなる「5Gシングル」「7Gシングル」をそれぞれ新設した。旧「3Gシングル」プランについては、既存ユーザーは「4Gシングル」プランとして継続利用できるものの、新規販売を終了した。

 「LTE Fシリーズ」では、「F-使い放題700」と「F-7G」の2プランが新登場した。月間の高速通信可能容量は前者が1Gバイト、後者が7Gバイトで、超過時は従来の512kbpsよりも高速な700kbpsで通信できる。ただし、24時間以内に1Gバイト以上通信すると、混雑時に通信速度制限がかかる場合がある。旧プランの「F-1G512」「F-2G512」については、新規販売を終了した。今後も既存契約者は現在の料金・利用条件で継続利用できる。

 今回のプランリニューアルで新たに誕生したIシリーズの7Gシングルは月額1870円で、7Gバイトプラン最安値を記録した。また、Fシリーズは容量が超過しても700kbpsで利用できるため、「LINE MUSIC」「AWA」「Apple Music」といった定額音楽ストリーミングサービスを楽しめるプランとなっている。率直に言うと、筆者はパナソニックのWonderlinkに対する“やる気”に疑問符が浮かんでいたのだが、どうやらその心配は杞憂(きゆう)に終わりそうだ。

photo ここに来てやる気が出てきた感のある「Wonderlink」

当然のように7月も“対抗値下げ”するDMM mobile 新プランも登場

 Wonderlinkが“業界最安値”のタイトルを獲得したからには、「全プラン業界最安値」をウリとするDMM.comの「DMM mobile」が黙っているはずがない。Wonderlinkのプラン改定から6日後の7月22日、DMM mobileは7GBプランの月額料金を1880円から1860円に値下げした。

 これにより、Wonderlink Iシリーズ 7Gシングルよりも10円安くなり、“薄氷”ながら業界最安値の座を奪還したことになる。7月としては、2日に行われた「NifMo」のプロモーションプランへの対抗(詳細は、2015年6月の定点観測記事を参照)に次ぐ2回目の値下げとなる。

 また、DMM mobileは、従来プランより大容量な「15GBプラン」(月額4570円)・「20GBプラン」(月額6090円)と、通信速度が上下200kbpsだが安価に使える「ライトプラン」(月額440円)を新たに用意した。やはり、いずれも業界最安値である。

 とりわけ、速度を抑えて安価にするプランでは、今まで最安値を保っていた「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE」の480円プラン(月額445円)を下回ることは大きなニュースだ。ただし、カタログスペック上の通信速度はワイヤレスゲートの方が50kbps“速い”。料金を取るか、スピードを取るか――いずれも“わずか”な差ではあるが、選択肢ができたことは素直に歓迎するべきだろう。

月額398円から 容量シェアもできる「ファンダムSIM」

 日本通信の「おかわりSIM」や、プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」のような、多段階料金制の格安SIMが最近注目を集めている。通信量の少ない月は500円以下の料金で維持でき、通信量が多い月でも大手キャリアよりも安価な料金で使えるというメリットがある。

 そんな多段階料金制の格安SIMに新たな選択肢が登場した。アイストリームが提供する「ファンダムSIM」だ。

 ファンダムSIMは、最低料金(1段階目)の398円では、月間200Mバイトまで通信できる。その後は1Gバイトまで、2Gバイトまで……、と1Gバイト単位で料金が変わっていき、8段階目の2040円(7Gバイトまで)が請求上限となる。事前に会員ページから容量上限を設定し、そこに到達したら通信をストップして請求額を抑えることも可能だ。

 ファンダムSIMと、先行する多段階制格安SIMとの違いは、1契約で最大19枚のSIMカード(回線)のSIMカードを発行できるところにある。料金請求は、各SIMカードの通信容量の平均値をもとに行われるので、事前にシェア操作をしなくても良い。SIMごとの通信量は、会員ページで簡単に把握することができる。もちろん、容量上限もSIM単位で設定できる。使いようによっては、従来の複数枚発行可能な格安SIMよりも維持費を抑えられそうだ。

photo 「ファンダムSIM」は1契約で最大19枚のSIMカードを発行可能。会員ページでSIM単位の通信上限の設定も可能

 ここにきて、au回線を利用するMVNOが少しずつではあるが増えてきた。

 au系MVNOは、対応端末が大きな課題である。日本で流通しているSIMロックフリー端末は技術適合認証(技適)などの都合でほとんど対応しておらず、au純正の端末を使おうにも、最近のVoLTE対応(CDMA2000非対応)のものは使えない。iOSデバイス(iPhoneやiPad)も、iOS 8以降では全く通信できない状態で、au回線のMVNOを利用しようとすると端末の選択肢が限られてしまうのだ。

 しかし、それをどうにかしようという動きもある。法人向けにau回線のMVNOサービスを提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)が、iOS 8で通信可能なAPNプロファイルの作成に成功したのだ。

 この通信プロファイルは、まだ不安定な面があるのも事実だが、iPhoneやiPadでau系MVNOが使えるようになれば、普及面で大きな弾みとなるはずだ。もっと言えば、SIMロックフリーのAndroidスマホ・タブレットの選択肢も増えれば、更なる普及の弾みになるはずだ。技適などを取得するには、大きな手間とコストがかかるのは事実だが、この“壁”を乗り越えないと、au系MVNO増加の動きはすぐ止まってしまうだろう。

 KDDIが自ら、ということは無いにしても、KVEやケイ・オプティコムなど、既にau系MVNOを展開している事業者はもっとメーカーに積極的に対応を働きかけても良いのではないか、と筆者は思っている。「au系MVNOにして良かった!」と多くのユーザーに感じてもらうには、それぐらいしないといけないと考えている。既存のau系MVNOの奮闘に期待したい。

 また、本文中ではトピックに挙げなかったが、ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)もMVNO事業に向けた動きを見せ始めた。7月1日に、MVNO事業子会社として「SBパートナーズ」を設立したのだ。

 KDDIにおけるKDDIバリューイネイブラーに相当する立ち位置となるSBパートナーズだが、自社ブランドでのMVNO事業は予定しておらず、あくまでMVNEに徹するところが大きな違いだ。

 ソフトバンク回線を使ったMVNOサービスと言えば、今までは「Disney mobile on SoftBank」(2017年末終了予定)や、旧イー・モバイルの「EMOBILE 4G-S」など、事実上グループ内に閉じたものばかりだった。SBパートナーズ設立で、“グループ外”MVNOがどれだけ登場するのか、注目したい。

まとめ(新情報は赤線)

  • QTNetがau回線を利用する「BBIQスマホSIM a」を8月3日にスタート。9月にドコモ回線を利用したサービスを開始予定のケイ・オプティコムを“逆転”し、初の個人向けマルチキャリアMVNOに
  • KDDIバリューイネイブラーのプラットフォームを使ったMVNO「ハピネスモバイル」がサービス開始。ただし、料金・サービスともに「UQ mobile」と全く同一
  • プラスワン・マーケティングが新しいMVNO通信サービス「FREETEL SIM」のサービスを開始
  • 「Wonderlink」がプランを刷新。7Gバイトプランで最安値(1870円)を記録したが、6日後に「DMM mobile」が対抗値下げ
  • 「DMM mobile」がLTE通信(225Mbps)を利用できる7プランで最安を記録(1Gバイト:630円/月、2Gバイト:770円、3Gバイト:850円/月、5Gバイト:1270円/月、7Gバイト:1860円/月、8Gバイト:2140円/月、10Gバイト:2250円)
  • 日本通信の「b-mobile SIM 高速定額」は、月1980円で下り最大225Mbps/上り最大50MbpsのLTE通信が使い放題
  • 低速だけど500円未満で利用できるのは「DMM mobile ライトプラン」(200kbpsで無制限、440円)、「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」(250kbpsで無制限、445円)と「ServersMan SIM LTE」(250kbpsで無制限、467円)

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