iPhoneの新古品を調達してきたり、Xperiaの並行輸入品を取り扱ったりと、そのやんちゃぶりが話題を集めていたMVNOサービスがある。それが、「もしもシークス」だ。同サービスを運営するのは、ベンチャー企業のエックスモバイル。代表取締役社長の木野将徳氏もまた、マレーシアで胡蝶蘭のショップをやっていたり、その前はパティシエだったりと、異色の経歴の持ち主だ。木野氏は、ガジェット好きの一面もあり、その趣味と実益を兼ね、同社ではBlackBerryや据え置き型携帯電話の「スゴい電話」まで取り扱っている。
そんなもしもシークスが、4月に新たな料金プランを導入した。詳細な内容は発表会の記事に譲るが、木野氏がLCCを参考にしたというように、基本使用料にさまざまな容量のデータパックを組み合わせること可能なものになっている。また、プレフィックスを付けて発信する中継電話を用いたサービスでの、音声定額も発表している。大手キャリアと同様、5分までの部分定額と、時間制限がない完全定額から選べるのが特徴だ。
ここまでだと、他のMVNOにもある料金プランに見えるかもしれないが、もしもシークスは、自社ブランドのショップを幅広く展開している。自社で販売網を構築して、Webや家電量販店だけでは獲得できなかったユーザーを取り込んでいくというのが、同社の方針だ。こうして文章にすると簡単に見えるが、実際に販売網を持つのは非常にハードルが高いこと。しかも、エックスモバイルは、まだ創業間もない企業だ。実際、2015年6月に木野氏をインタビューした際は、「まだ超絶赤字」という発言もあり、苦労の様子が垣間見えてきた。
そのインタビューから、間もなく1年がたとうとしている。1年で、もしもシークスにどのような変化があったのか。新料金プラン、新端末の狙いとともに、新生もしもシークスの戦略を聞いた。記事中の価格はいずれも税別。
――(聞き手:石野純也) 無料通話がパッケージになった「かけたい放題」を発表してから、まだ半年とちょっとです。なぜこのタイミングで新プランなのでしょうか。また、特徴もあらためて教えてください。
木野氏 プランは何回も変えていて、最初から数えると今回のものが第4弾になります。今までは商戦期に合わせて変えたり、MVNEの変更に合わせて変えたりといったことをしてきました。ただ、そろそろ腰を据えてできるプランを出したい。ずっと、そう思っていました。
その中の1つが、かけ放題です。以前のプランで準定額をやらせていただいたのは、テストマーケティングの一環で、どのくらいのトラフィックが来るのかを検証する目的がありました。およそ半年間、実際のユーザーさんの利用動向を見て、ストレステストもしてきました。想定の3倍使ったらどうなるか、5倍使ったらどうなるかをテストし、これができると固まってきました。
どうせやるなら、中途半端な5分だけのかけ放題ではなく、完全なものと両方にしたい。そこで、2つの音声定額をスタートさせました。
それができた後、基本プランをどうするかを考えました。以前は1980円、2980円、3980円というパッケージでしたが、より基本使用料を安く抑え、お客さまにオプションとして選んでもらえるような、LCCのモデルにしました。他社を見ていると、基本使用料は大体3GBで千数百円で似ています。分かりやすくするために、1000円は切りたいと思っていました。
ただ、1000円を切ると逆ザヤになってしまう。そのフィジビリティスタディ(実行可能かどうかの調査)をしたあと、提供に踏み切りました。
―― そこに1GB、3GB、5GBといったデータパッケージを組み合わせられるわけですが、実際、どういった選ばれ方をしているのでしょうか。
木野氏 今日までのデータだと、980円単品という人はかなり少ないですね。980円と5分定額の「かけたい放題ライト」を組み合わせている人はそれなりに多く、容量は5GBや7GBが多くなっています。かけたい放題ライトとフルの割合は7対3ぐらいですね。ただ、(ライトかフルの)付帯率は90%になっています。
―― 高いですね。容量も、MVNOの中では大きいプランが選ばれていると思います。
木野氏 かけたい放題ライト、かけたい放題フルは店頭でかなりセールスをしてはいますが、正直、こちらの予想を超えていました。また、5GBや7GBが多いのも、店頭セールスの効果です。
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